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21世紀型教育の時代【09】 麻布モデル 知の越境問題②

☆「週刊現代」(2016年3月5日:講談社)に「2020年 今の中1から始まる大学入試全面改革 ダメになる有名私立中高 よくなる有名私立中高」という週刊誌らしい過激なタイトルの記事があります。しかし、さらに驚くべきサブタイトルは、次のようになっているのです。

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☆これは、編集者側の背景に塾歴社会現象に巻き込まれた「御三家のおわり」という兆しを感じているセンサーがあると思われます。

☆その上で、完全に塾歴社会現象に巻き込まれてしまった「開成」と巻き込まれそうではあるが、クリティカルシンキングが機能している「麻布」の違いを写真のキャプションに忍び込ませています。実に巧みです。

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☆つまり、明治時代以降始まって以来の「大学入試改革」の肝は「2020年の大学入試問題のパラダイムチェンジ」だということに編集者は気づき、麻布の中学入試と相通ずる軸がバシッとみえたということなのでしょう。

☆これって、すごい驚きなのです。中学受験業界のリサーチャーで、ここまで歴史的(通時的)かつグローバル(共時的)なパースペクティブを持ち、その合力を創り出す未来の人材に必要な「多角的多次元的に考える力」が何かまで見通せる人材は数少ないのですが、なぜか「週刊現代」という下ネタからスキャンダルなど私たちの欲望とりまくニュースを扱っている編集者に凄い人がいたのですから。

☆いや、むしろマルキ・ド・サドの「純粋欲望」とイマニュエル・カントの「純粋理性」が同時代に同居したように、「週刊現代」も高みに登って俗に還る編集眼があるのかもしれません。

☆話が脱線しました。もとに戻りましょう。キャプションにあるように「自由な思考力を育む麻布の教育は、評価が高まりそうだ」ということなのですが、その評価を高める自由な思考力の反映しているのが、まずは麻布の入試問題だったという話でした。

☆前回紹介したように、今年の麻布の社会の入試問題は「越境問題」でしたが、いきなり「越境」のメリット、デメリットを考え、問題を解決するにはどうしたらよいのか考えなさいとはなりません。

☆そこに到る思考過程をたどらせてからドーンと問います。そこまでどんな思考過程かいうと、準備過程として、素材文を読む作業があります。その素材文がまたすごい。「境」がいかにしてできてきたのか、歴史的文化人類学的見識で説明されているのです。当然、この文章自体麻布の社会科の先生が書いたものでしょう。

☆ですから、麻布の社会科では、教師と生徒間で、このような問答対話が授業の中で展開しているのだろうということが予想できてしまいます。

☆さて、その素材文ですが、6つのセクションに分かれています。

1)自然と境

2)暮らしから生まれた境

3)支配者がつくる境

4)境を超える動き

5)境をめぐる現代の動き

6)人の一生のなかの境

☆となっているわけです。1)から3)は「境」が狩猟社会から農耕社会、近代社会にシフトしていくにつれて、自然と社会の複雑な構成のつなぎ目として「境」がどうやってできていったかという内容です。

☆そして、4)と5)で、産業のイノベーション、知のパラダイムシフトが「越境」し、新たな「境」がどのようにできていくのか、ピラミッド型階層システムをつくる「境」が、ネットワーク型システムにシフトしてどのような「境」に変質していくのかについて論じられています。

☆さらには6)で、人間の成長発達につれて、自我や無意識や超自我のような意識を分化する「境」、そして、高齢になって「生」と「死」の間に生まれる「境」が宗教という精神を生み出していく仕組みについてまで発展していくパラグラフで終わります。

☆当然、人間の心理的「境」は、ぶち破って新しい価値意識を生むための殻にもなります。越境による新しい人間像を生徒自身がどう考えるのか?

☆いよいよそれを問い返していく問題が出題されることになるのです。

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