« 21世紀型教育の時代【41】 逗子開成 極める教育③ | トップページ | 2020年大学入試改革のもう一つの意味~受験勉強というコモディティ化からの解放 »

21世紀型教育の時代【42】 逗子開成 極める教育 (了)

☆逗子開成の教育について思いめぐらしてきましたが、その広さその深さに驚愕し、とても一度や二度の訪問では捉えきれないと感動しているというのが本当のところです。前回描いた図を見ながら、これはあくまでプロトタイプで、もっと関係性が濃いと思い直し、今度は深層構造風に描いてみました。

Photo

☆このように、描いてしまうと、動的に見えないかもしれませんが、実際には各層がダイナミックに有機的に循環して逗子開成の教育の新陳代謝が行われています。それゆえ、アイデンティティを維持しながら、常に新しい教育の命が生まれているという感じなのです。

☆そして、この循環のネトワークは、複雑で描けなかったのですが、それは逗子開成の豊かな「言語力」育成教育にあります。三須教頭に、総合学習で行われている「交渉学」について説明を聞いたときに、そう確信しました。

Photo_2
(慶應義塾大学の田村次朗教授と「交渉学」のアクティブラーニングのシーンの一部はYouTubeで公開されています)

☆「交渉学」というと、売買契約、外交交渉などにおいて、有利な条件で合意形成に持ち込む技術だと思っていましたが、実はそうではありませんでした。

☆相手にとっても自分にとっても、互いにハッピーな情況を創り出したうえで、合意形成をしていくというコミュニケーションの学びだったのです。

☆戦略的コミュニケーションは、もちろん重要です。ロールプレイは、互いに立場が違ったり、メンタルモデルが違ったりする条件で行われます。いきなり相手が戦略的に交渉してきた場合、葛藤にならないように、こちらも戦略的に構えざるをえません。

☆まずは相手の真意をよく聞くところから始まります。これはある意味戦略です。しかし、本当の目的は、相手を打ち負かすきっかけを待っているのではなく、共感できるところを探して、創造的コミュニケーションにシフトできないかどうかを探っているわけです。

☆互いに戦略的コミュニケーションだけで交渉すると、決裂するか、妥協するかで、満足のいく情況を造ることができません。第三の新しいアイデアや共感を生み出す創造的コミュニケーションにシフトできるようにするのが「交渉」だったのです。

☆「交渉学への招待」という講座を体験した高1の生徒は、こう感想を述べています。

「・・・自分にとっても相手にとっても、いい方向にいくものを考え、話すということが大切なのだと思った。自分の意見をがむしゃらに伝えるのではなく、相手はどのようなことを望んでいるのかということまでしっかり頭の中で整理して交渉するということが重要なのだということを知った」

☆この生徒の感想は、交渉学を通してはじめてコミュニケーションを知ったということではありません。逗子開成の学園生活の中で行われているコミュニケーションが「交渉学」を通して明快になったのだということを示唆しているのです。

☆もしふだんから、功利主義的な戦略的コミュニケーションが土台になっていたとしたら、こういう気づきは難しかったでしょう。そんなわけで、逗子開成の多様な教育層を有機的につなげているものは、このような創造的コミュニケーションなのだと了解したのでした。

☆ところで、この相手と自分の両方の共通点を立場を超えて探し合い、新たなものを生み出していこうというマインドはどこから生まれてくるのでしょうか。

☆もちろん、そのような資質能力を持っている生徒が、建学の精神に憧れて入学してくるのですが、ではその建学の精神の根っこはどこにあるのしょうか?それは、日々目にすることができ、日々内省を瞬間的にではありましょうが、深めていく空間があるのです。

Photo_3

毎年、1月23日前後の朝、体育館において全校生徒・教職員による「七里ケ浜ボート遭難事故追悼集会」が開かれます。1910年1月23日のボート遭難事故で亡くなった12名と、1980年12月に起きた山岳部の八方尾根遭難事故で亡くなった6名の御霊を慰めるとともに、2度とこのような悲しい出来事が起こらないように誓いを新たにするものです。

☆そして、キャンパス内に2つの「いのちの碑」が設置されていますから、全校で行うときだけではなく、毎日、生徒1人ひとりが、「命の重要性」、先輩の無念の思いを引き継ぐ意志を胸に刻むのです。

☆この時空を超えたマインドとしての先輩の思いとのコミュニケーションは、悲しみを乗り越え、未来につなぐ創造的なコミュニケーションにほかなりません。

☆逗子開成の教育は、人間、社会、自然に共通する根源的な生命の尊厳に根っこがあるのです。これを、日々の学園生活の中で可視化しているのです。だからこそ、海に山にフィールドワークにでかけ、深く探究していく構えができ、強い使命感を抱くことができるのです。

☆これこそが時代を切り拓く気概であり、未来を創る頼りになるリーダーが多数輩出されることになります。このように、大学合格の好実績のバックヤードの深さ豊かさが逗子開成にはあるのです。

|

« 21世紀型教育の時代【41】 逗子開成 極める教育③ | トップページ | 2020年大学入試改革のもう一つの意味~受験勉強というコモディティ化からの解放 »

中学入試」カテゴリの記事