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私塾市場の変化[01]変化の次元

☆今年1月末から4月末にかけて、つまり、受験列島シーズンの間に、教育制度と受験制度の変化が時熟してきたことを予感させる本が矢継ぎ早に出版されました。

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☆AI(人工知能)をはじめとするイノベーションによって、2030年までに世の中や時代は激変する、2020年の大学入試改革もその流れにあると喧しいのですが、この変化は目まぐるしく変化するファッションデザインや車のモデルチェンジとは次元が違います。

☆その次元の違いとは何か?学問的に研究対象になっているかどうかわからないし、ジャーナリスティックな視角に収まっているのかどうかもわかりません。ただ、教育制度と受験制度の周縁でなんとかサバイブしている1人の私人としては、次のように感じています。

☆まず、教育や受験の領域が変わるというのは、その領域の参加者の行動規範だけが変わるというわけではないということです。ファッションやデザインのトレンドのような変化は、その領域、端的に市場に参加している消費者の行動規範が変わるということが中心で、ファッションや車を製作、生産している会社の制度もそのつど大きく変わるわけではありません。

☆したがって、ファッション業界や自動車産業を支えているあるいは規制している法律制度が大きく変わる、根本から変わるということは今のところはないでしょう。

☆4月になって、テレビ番組が毎年大きく入れ替わりますが、これは市場の参加者である視聴者のニーズという選択行動の変化を計算しているわけです。マーケティングというやつでしょうか。しかし、テレビの視聴率をあてたいというテレビ番組の市場における判断規範も、その番組を提供する会社組織の制度も特に大きな変化がないわけです。

☆SMAPの解散するしない劇は、まさにその市場や会社の制度を変えかねない危機感を制度側は持ったわけです。制度側から見たら、制度を強引に変えようとするわけですから、制度が変わらなければ、変えようとした人は何らかのペナルティをうけます。何とも厳しいのですが、昔から勝てば官軍負ければ賊軍。これも制度というものの性質なわけですね。

☆ともあれ、このように、私人が私事の自己決定をしながら、生きていくにしても、選択の行動規範としての制度、民間が組織を運営していくうえでの制度、これは市場の原理を前提にしているので、市場制度と呼びましょうか、さらに国としての法制度や、三権がそれぞれつくる各種法令としての制度のように法律制度などが関係し合ったり葛藤し合ったりしているのです。

☆すなわち、ざっくりですが、このような3つの次元の制度がひしめき合っているという感じでしょうか。今その3つの次元の制度を、「私事制度」「市場制度」「法律制度」とよんでおきましょう。なんだか「腹痛が痛い」というような表現ですっきりしないのですが、このように分けると、上記写真に挙げた5冊の本が、編集者の意図に関わらず、示唆していることが見えてくると感じています。つまり、それは、2020年にかけて、教育制度と受験制度における、3つの次元の制度全部が変わる兆しがあるということです。

☆2020年大学入試改革は、明治維新以降始まって以来の教育のパラダイム転換だというメタファーがよく語られますが、パラダイムが変わるというのは、おそらく、具体的には、この3つの次元の制度すべてが同時に変化するということを意味するのではないでしょうか。

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