学校選択のための評価のメガネを磨く<06>アクティブ・ラーニングでものの見方
☆今話題になり実践されている多くの中高レベルのアクティブ・ラーニングは、問題解決の「体験」が重視。正解は1つではないということが強調されて、いろいろな問題解決の方法のプレゼンで終わるというのが現状でしょう。
☆たとえば、上記のような豪雨の中の混沌とした人々の状況を社会にたとえ、そこからあるべき社会全体とは何かを考えるような問題は、チームで議論すれば、多様な考え方がでてきて、その中で最も有効だと思えるような解答を選ぶか、互いの解答を融合して最適化するかするでしょう。
☆「問題→議論→編集→プレゼン」という過程を経るアクティブラーニングについて、説明会で紹介されることは多いと思います。
☆しかし、これでは、編集のリーダー役の生徒の体験と問題解決の案を提出した生徒と考えながらもうまくまとまらなかった生徒とみんなの意見をじっくり聞いていた生徒の体験の違いを解消できないのです。
☆チームとしてプレゼンするときは、あたかも皆同じように参加し、同じように体験したかのようにみなされるだけなのです。
☆これでは、ある作業をするとき役割分担して成果を出す作業チームと変わりはありません。一方通行授業より、モチベーションはあがるでしょう。脳も違いはありますが、活性化しているでしょう。しかし、知的チームワークとは次元が違いすぎます。
☆麻布の生徒の場合、上記の問題を考える場合、一回目のチームの作業はたしかに、「問題→議論→編集→プレゼン」ということになります。しかし、次は、その問題を分析し議論したときの方法を抽出しようという議論ができます。
☆問題を分析したり解釈したりするとき、どんな理論負荷性があったのか分析する能力があるのです。次期学習指導要領で、はじめて登場する「メタ認知」というものでしょうが、このメタ認知能力が育まれています。
☆そして今度は、各チームがプレゼンした方法をチームごとにさらに統合して、社会の問題を分析して解決する方法論を議論し、発表します。個々の主観的な体験から個々の理論がメタ認知され、今度はそれをさらに統合し、授業に参加している範囲内ですが、間主観的な理論がメタ認知されていきます。
☆彼らは、マックス・ヴェーバー的な社会学方法論やナッシュ均衡、ダグラス・ノースの制度論のような理論をざっくりですが見いだします。もちろん、そんな先人たちの方法論を調べたわけでもないし、研究しているわけでもないのです。もちろん、精緻な理論ではないのですが、このような学びのスパイラルを繰り返いしていけば、学問的な領域に達する予感はします。
☆ともあれ、そこまでいったん到達したら、自分たちの見いだした理論を使って、今度はまた新たなデータを分析していきます。それによって、自分たちの理論の妥当性や使い勝手の良さなど認識していくのです。そのような試行錯誤=学びのスパイラルによって、自分たちの理論を洗練させていくのです。
☆素材の理解重視の体験型アクティブ・ラーニング。自分たちの「考え方を考える」思考型アクティブ・ラーニング。この両方が統合されるアクティブ・ラーニングを行っている学校はどこでしょう。
☆それは入試問題を見れば、一目瞭然です。そもそも麻布の生徒がこのような思考型アクティブ・ラーニングを行えるのは、中学入試問題に仕掛けがあります。麻布に合格する生徒は、解き方を超えてものの見方・考え方の次元に飛ぶことのできる生徒である場合が多いのです。そういう思考型の入試問題になっています。
☆適性検査型入試は、一見思考力を重視している問題ですが、あくまで素材理解重視の体験型問題です。体験型と思考型の両方を結びつけた統合型入試を実施しているのは、聖学院や工学院、かえつ有明の思考力入試です。もちろん麻布の入試もそうです。
☆解き方という体験値を知識化して、それを活用する体験型問題か、まずは素材を体験し、自分のものの見方や・考え方に気づく思考をし、そのうえで新たな問題を考えていく統合型問題か。その違いはアドミッションポリシーの違いです。
☆前者の体験型問題を通過して入学した生徒が、体験型アックティブ・ラーニングで育っていくことは当然です。
☆後者の統合型問題を通過して入学した生徒が、統合型アクティブ・ラーニングで育っていくのは当然です。
☆知識型問題を重視する20世紀型教育では、2030年以降のダイナミックな時代の変化についていけません。かといって体験型問題を重視する21世紀型教育でも、なかなか難しいかもしれません。
☆やはり、少なくても思考型問題、できれば統合型問題を重視する21世紀型教育でなければ、来るべき未来社会を描き切ることはできないかもしれません。
☆そもそも知識型問題重視の20世紀型教育は、権威というタイトルリーダーの時代です。体験型問題重視の21世紀型教育も体験で優位に立つ権威者がリスペクトされますから、まだまだタイトルリーダーの時代です。ところが統合型問題重視の21世紀型教育は、過去の成功や体験に依拠するのではなく、未来を描くプロジェクト型の勇気あるナチュラルリーダーの時代です。
☆このような議論は、欧米では当たり前です。日本では、少なくても教育界ではまだまだです。日本は日本、文化が違うのだから欧米のコモンセンスなんて関係ないという方もいるかもしれませんね。過去や体験重視の権威にこだわればそう判断するでしょう。
☆過去や体験の権威を重視するか、未来を描くプロジェクトを重視するかは、もちろん私事の自己決定に過ぎませんが。
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