« 新たな動き【51】 工学院の異次元の授業⑤ | トップページ | 新たな動き【53】 なぜ麻布なのか。 »

新たな動き【52】 工学院の異次元の授業<了>

☆さて、工学院の21世紀型教育のバックヤードであり、知らないと授業の展開の肝が理解できない根っこの話を少ししていったん筆をおきましょう。

Photo_4
(授業やテスト、評価の一貫性、他教科との有機的つながりを可能にする工学院の思考コー)

☆工学院には、「思考コード」という授業やテスト、評価の際の共有基準が開発されています。これが科学的に学問的にどのように評価されるのかはわかりませんが、工学院の先生方が、積み上げてきた授業の体験の中から汲み上げてシンプルにまとめたものです。そういう意味では実にプラグマティックです。

Dsc00351
☆このコードの開発中心メンバーの1人櫻坂先生は、教育改革学年中2の社会の授業で、源頼朝の歴史ムービーを創る授業を行っていました。歴史的事実をリサーチし、その中から何を重要な問題あるいはテーマにするのか議論し、その問題についての考察をさらに深め、それをストーリーとしてムービーにするかなりの高次思考術をトレーニングするカリキュラムです。

☆実は論理的認識を物語創出に転換する授業は歴史だけではなく、英語や国語でも行われているのですが、おそらくこれが中1、中2で一つの思考術となっているのには、「思考コード」が意識されているからでしょう。

Dsc00366
☆源頼朝をめぐる様々な歴史的事件や事実を、時間順序でつないでいくことだけでも、実は今の東大の日本史レベルの問題の解答づくりに十分に役立つのですが、それは2019年までの話で、2020年以降は、次の次元が要求されます。たとえば、「もし君が頼朝だったら?」とか、「鎌倉幕府の政治と現代の政治を比較して、君たちの社会をつくる政治体制について考えを述べよ」などという小論文が出題されるようになると予想されています。

☆そこで、櫻坂先生は、思考コードを、知識技能段階からロジカル/クリティカルシンキングで終わりにするのではなく、クリエイティブでコラボレイティブなデザイン思考まで豊かにする授業を展開しようとしています。

Dsc00393
☆そんなわけで、ロジカルな思考をレトリカ思考に転換するプログラムを実施しているのだと思います。そして、前回ご紹介した福田先生の中1のプレゼンテーションの授業同様、ロゴス×エトス×パトスを備えたプレゼンをトレーニングしようということでしょう。

☆しかし、大事なことは、ロジックだとか、ロゴスだとか、エトスだとか、パトスだとか生徒に語りかけるのではなく、まず創って、発表してみるというところから始めます。

Dsc00387

☆そして、発表後、リアルタイムでリフレクションしていきます。生徒の物語のプレゼンは、いきなり完成するわけではありません。最初は、自分たちのテーマを表現しきれず、事実の羅列になることもしばしばです。

☆そんなとき、櫻坂先生は、事実の羅列では思考が深まっていないよなどというコメントはしません。中2の段階で必要なことは、オリジナルな思いです。そこを確認していきます。すると、頼朝と政子の結婚した経緯ではなくて、当時の女性の役割が、自分たちが思っていたものとは違うのではないかなどというオリジナルの視点がでてきたりします。

☆まさしく、ソクラテスさながらの産婆術という問答をしていくのです。この問答ができるには、まずは自分たちで考えて、表現して、想いとのギャップを生徒自身が感じなければなりません。

☆その思いが何か櫻坂先生は問答していくわけです。事実の関連を考えるA2レベルから発想を生み出すC1に飛び跳ねる瞬間です。

Dsc00661

(図書館司書教諭で国語科の専任、いろいろな大学でも講師をしている有山先生のデザイン思考の授業。授業の拠点は図書館)

☆そんなデザイン思考へ飛ぶ問答は櫻坂先生だからできるのではないかと問われるかもしれません。たしかにその通りです。しかし、重要なことは、その櫻坂先生の手法や考え方をシンプルに見える化したのが思考コードで、このコードを先生方がシェアして、実際に授業を展開してプロトタイプを創っていく作業をずっとやってきたということなのです。そして、「デザイン思考」そのものを有山先生と協力しながらプログラム化した新教科まで創り上げてしまったほどです。

Dsc07081

(教務主任の太田先生が、思考コードとS-P表の関係についてワークショップを行っているシーン。対象は全国私学の先生)

☆だとしても、それは一部の先生方だろうと問われるかもしれません。しかし、教職員一丸となってやってきた証に、今年の2月に全国の先生方を集めて、その成果を公開したのです。

Dsc06904
(英語科主任の田中先生と数学科主任の鐘ヶ江先生が、工学院の教育改革についてナビゲートしているシーン。対象は全国私学の先生)

☆教育改革の道のりは大変時間がかかるし、紆余曲折の連続でしょう。しかし、学習する組織を形成しながら序破急のテンポで駆け巡っている工学院。生徒にとって、日本の教育にとって≪希望の私学≫といえましょう。

|

« 新たな動き【51】 工学院の異次元の授業⑤ | トップページ | 新たな動き【53】 なぜ麻布なのか。 »

21世紀型教育」カテゴリの記事