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新たな動き【53】 なぜ麻布なのか。

☆毎日新聞(2016年5月15日)によると、

世界の高校生が国連の会議を模して国際問題を討議する「グローバル・クラスルーム国際模擬国連大会」がニューヨークで12〜14日に開かれ、主催団体は14日、麻布高(東京)が優秀賞を受賞したと発表した。同校は2011年にも優秀賞を獲得している。

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☆世界の高校生を相手に優秀賞をゲットするとはさすが麻布創設者江原素六のミーム。

☆ニューヨークにたどりつくまでに、どれだけ多くの高校生が挑んだのだろう。そのチャレンジ精神に敬意を表するとともに、なぜその中で麻布の生徒が優秀賞をゲットできたのだろうか、考えてみてはいかがだろうか。

☆探究力、ディベート力、発想力、クリティカルシンキング・・・といった言語技術や、データを引き出す記憶術と分析力・・・といったサイエンスマスの技術が長けていたからだろうか。

☆もちろん、それもあるだろう。しかし、ニューヨークに集結したチームはその技術的な能力はみな高かったに違いない。

☆それでは、評価というのは客観的で公正であろうとしても、人の感性や出会いという要素に左右されるから、運が良かったということだろうか。

☆たしかに、それもあるだろう。

☆しかし、決定的なことは、江原素六という精神なのだと思う。幕臣として薩長連合に追い詰められて切腹寸前までいった若き江原素六。

☆それをとめた攻玉社の創設者近藤真琴。時代と出会いの中で、江原素六は、日本の欧米近大化による大きな制度改革の渦の中に放り込まれる。

☆ザックリ言えば、封建制度から近代制度にパラダイムシフトするときに、サバイブしたのだが、なぜサバイブできたのか。

☆もちろん、運不運もあるだろうが、制度改革を自ら考え実行したその人だからである。

☆模擬国連は、ルールにのっとって行うが、国際法の精神の枠組みの中で、最適な制度を考案できる勇気と言論の精神が必要だ。新制度はもちろん社会的な諸関係の中で均衡点を射抜かない限り、絵に描いた餅である。

☆江原素六が、麻布という学校法人制度を残せたのは、旧制度から新制度に移行する今でいうグローカルな諸関係を満身創痍になりながら駆け巡り、その均衡点を身に染みて感じ、言論にして旧勢力や最適でない新制度派と闘い抜いたからである。もちろん、それだけではないが、それがなければ、麻布はサバイブできなかったことも確かだ。

☆知識は既存の物を得るだけではなく、制度は誰かが造ったものをひたすら守るだけではなく、社会的な諸関係の中で最適な均衡点を見いだして、創るものである。この洞察力を、幕末、明治維新を生き抜いた江原素六の精神と今もシンクロできるのが、麻布の生徒なのである。塾歴社会を乗り越えて、いつまでもそうであってほしい。

☆そして、アクティブラーニングの根源は、制度をデザインできる洞察力・発想力の湧き出る学びの泉であるということなのである。知識は既存の物を鵜呑みにすることで、制度は決まりだから守るものであると信じている人には、見えない幻の授業であろう。

☆≪私学の系譜≫の第一世代は、江原素六、福沢諭吉、新島襄、矢島楫子であり、第二世代が内村鑑三、新渡戸稲造、石川角次郎らである。

☆彼らは、知識も制度も創る側だった。ここでいう知識や制度とは、社会の諸関係によって認知される共通の行動原理のことを言う。

☆日本の私学が世界文化遺産級なのは、この封建制度をひっくり返した近代制度を共に創ってきた根っこ、すなわち≪私学の系譜≫をシェアしているからだ。20世紀型教育で十分だと嘯いている私学もまだある。

☆≪私学の系譜≫に思いを馳せ、目覚めてくれることを心から祈る。

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