« 新たな動き【94】工学院 来春さらなる教育改革!① | トップページ | 英国のEU離脱とフランスバカロレア哲学試験 »

英国のEU離脱の意味~深いアクティブラーニングへ

☆英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱支持派が勝利し、世界に衝撃が走った。24日の東京株式相場は急落し、日経平均株価の下げ幅はおよそ16年ぶりの大きさを記録した。今後のEUや世界経済、グローバル企業への悪影響が懸念され、リスク回避の動きが加速している。

Gordon
(“Understanding the Talent-Creation Crisis” 2016 Edward E. Gordon エド・ゴードンはあるコンサルティング会社のCEOであるが、新しい資本主義のビジョンをうまくまとめ、世界の動きのプロデュースに一役買っている。)

☆英国の離脱は、今すぐではなくある程度猶予がある。英国とEUの交渉が必要だからだ。したがって、離脱が正しいかどうかではなく、離脱の背景にはどんな歴史の動きがあるかについて考えてみるのが重要。

☆とはいえ、政治や経済の専門家でも難しいのに、ド素人がなにを言うかと言われそうであるが、一地球市民として考えることは許されるだろう。

☆結論先取りで言うと、離脱の背景には、20世紀型資本主義が、21世紀に入ってもゾンビ資本主義として全地球市民の生活を貧困格差に追いやり、やりたい放題であることに対する反省があると思う。

☆グローバルゴールズは17あるが、まずは世界の貧困をなくすことを中心に何をすべきかを考えれば、環境問題、教育問題、戦争やテロの問題の解決の糸口がみつかる。

☆そんな大きなことを言われてもと思うかもしれないが、それは身近な問題、たとえば、待機児童の問題、所得格差の問題、雇用問題、失業問題、組織の中の抑圧、進学と就活の問題など、すべてにつながっている。

☆それゆえ、英国のEU離脱問題は、英国市民の目先の決断であったかもしれないが、世界経済にインパクトを与える決断でもあったかもしれない。ゾンビ資本主義の中で生き続けるか、子どものために新しい資本主義を創るのかという決断は、言うまでもなく、結局は目先の決断ではないだろうからだ。

☆この選択はすでにある2択の選択判断ではない。ゾンビ資本主義はいまここにあるが、新しい資本主義は、いまここから未来へのビジョンで、まだリアルではない。

☆ある意味、経済戦争をやめて、戦争によって荒廃し廃墟になった英国経済を新たに構築しなおそうという局面かもしれないのである。

☆この流れはしかし、1989年のベルリンの壁崩壊の時から、マインドセットされていた。

☆しかし、明治維新がそうだったように、官僚近代かMFO(man for others)近代か議論され、官僚近代が優先されてしまったように、ベルリンの壁崩壊後のヨーロッパの新しい資本主義も、結局は冷戦終焉によって、社会主義に勝利した資本主義という表面的言説が前面に出て、驀進してしまった。

☆社会主義と対峙する資本主義ではなく、新しい資本主義として中世的ぎりぎり利益シェアリングのビジョンが語られていたにもかかわらず、超富裕層の利益誘導が優先してしまった。

☆おそらく、これは今のテロ問題につながっているし、それは世界的規模の経済格差問題を拡大してきた。

☆2012年には、それまでに続く、テロや金融破たんなどがもたらしてきた世界経済の低迷を離脱するために、ゾンビ資本主義にとって替わる新しい資本主義が求められた。その象徴的会議がダボス会議である。

☆しかし、2013年、アベノミクスという上げ底経済政策によって、日米の経済が一時的に右肩上がりになった。この利益をオバマ政権は、STEM教育に投資した。

☆単純に、700万人の高度テクノロジーの労働の雇用市場があるにもかかわらず、そこに参入できる人材がいない。STEM教育で人材を育成しようと。

☆するとしかし、そのSTEM教育は、いままでのように、知識技能を記憶するだけの技術ではなく、ロジカル/クリティカル/クリエイティブな高次思考が必要であることに気づく。

☆低次思考から高次思考へとなるわけだが、そうなると新しいジョブと古いスキルのギャップを埋める教育方法が求められるようになるが、それがアクティブラーニングだということになった。

☆いやいや、1970年前後、アメリカでは大学の大衆化が起こって、今までの知識階級と大衆の知識ギャップが生まれ、それを埋めるためにアクティブラーニングが生まれたのだと言われるのだが、それはそうだが、21世紀のギャップは、知識階級と大衆の知識ギャップではなく、STEM関連ジョブと従来のスキルのギャップなのである。

☆アクティブラーニングは、知のギャップを埋める教育方法であるという点で共通しているが、40年前と今とではギャップの意味が違うのである。

☆低次思考のギャップから高次思考のギャップにシフトし、それを埋めるためにアクティブラーニングが必要なのである。

☆ゾンビ資本主義から新しい資本主義にシフトするときにアクティブラーニングが必要であるということなのである。

☆日本も、米国の教育政策にすぐに影響を受けるから、2013年は、日本でも2020年大学入試改革、学習指導要領の話題が盛り上がる。そして、アクティブラーニングの登場。しかし、まだ高次思考へのシフトだとか新しい資本主義へのシフトだとかいう認識がないため、なぜ低次思考のままアクティブラーニングをやるのかわからない。アメリカに遅れるこ30年、日本も大学の大衆化が始まったから必要だという程度の認識しかない。

☆しかし、それは教育現場での話。教育と世界経済がどうつながっているのかわからないから、ピンとこないのが日本。

☆ダボス会議は、2012年以来、新しい資本主義を議論してきた。当然今回の英国に代表されるようなEU離脱への混迷調整過程は織り込み済み。EU離脱は、ゾンビ資本主義離脱の1つのきっかけなのである。

☆すでに、2000年前後から、リチャード・フロリダを中心とするメンバーが、国際都市からグローバル都市へ、第四次産業としてクリエイティブクラスビジネスが生まれていることを議論していた。その過程で、クリエイティブシティが建設されていく。

☆クリエイティブシティのモデルの1つは、ガーデンシティ。イギリスのエベネザ・ハワードが建設したユートピア都市である田園都市がモデル。もともと大阪の千里山や東京の田園調布の都市デザインは、レッチワースがモデルで、ユートピア都市の種が再び花開したということか。

☆このユートピアは、ギリシャ語のどこにもない場というutoposと最善の場というeutoposからトマスモアがつくった造語であると言われているように、プラトンの国家やアリストテレスのトピカが内包されている発想。

☆話がそれたが、EUはその過程でゾンビ資本主義対クリエエイティブ資本主義の葛藤を内包していたが、どうやら前者がどうしてもうごめいてしまった。

☆そこで、英国市民は、19世紀末のアート・アンド・クラフツ運動の中心人物ウィリアム・モリスの「ユートピアだより」よろしく人生と芸術を一致させられる新しい資本主義を創出するように動いたのではないか。もちろん文化資本という無意識の文脈で。

☆リチャードフロリダは、クリエイティブクラスの構成要素は、タレント(才能)、テクノロジー(技術)、トレランス(寛容)の3Tだと提唱した。ウィリアム・モリスの生活と芸術の一致という発想を継承している。

☆そして、今年のダボス会議では、“Talentism is the new Capitalism.”という命題が飛び出してきた。

☆やはりクリエイティブ資本主義への最適化プロセスとしての紆余曲折、思考錯誤などの揺らぎが、いよいよ本格的に始まったというのが、英国のEU離脱事件なのだろう。

☆モチベーション3.0の時代、マーケティング3.0の時代とも言われているが、これらはかけがえのない自己の価値がベースであり、それがman for othersであらねばならないわけである。まさに生活と芸術の一致というユートピア資本主義の再来である。それが空想ユートピアで終わらないようにする期待がICTという技術にかかっているのである。

☆さて、才能とICTという技術とMFOという寛容性の3Tはどうやって、育成されるのか。言うまでもなく、教育においてアクティブラーニングがポイントになる。

☆そして、英国市民のような議論ができるには、アクティブラーニングベースでなければ生まれようもない。

☆ゾンビ資本主義の背面に隠れてしまった新中世資本主義である配分の正義と交換の正義のMFOによる統合という、社会主義と資本主義の統合への道は、やはりモリスの国英国で誕生するのかもしれない。

☆思想的にモリスに影響を受けたハワードであるが、もともとその田園都市のデザイン発想は、鎖国が解けて日本を訪れた欧米人がパラダイスだと感嘆した江戸の大名庭園の影響であると言われている。自然と社会と人間の統合。ただし、封建的統合ではなく、クリエイティブな近代社会ベースでという流れ。

☆ここに≪私学の系譜≫があることも偶然ではないだろう。敗戦によって、高次思考を破棄した日本であるが、≪私学の系譜≫が保守してきた告示思考を、アクティブラーニングによって、公立学校にも修復しようとしているのかもしれない。

☆すると、英国と親和性のある日本は、ゾンビ資本主義をシフトする可能性が高いということになりそうだ。

☆英国のEU離脱はゾンビ資本主義からクリエイティブ資本主義への調整・最適化過程の契機であろう。20世紀型教育から21世紀型教育へシフトする意義はそんなところに本当の理由があるのかもしれない。

☆この2012年以来の文脈で、経産省もクールジャパン/クリエイティブ産業推進活動を行っているが、ゾンビ資本主義の中でのものづくりから脱皮していない。モリス的なコンセプチュアルデザインという高次思考が加われば、大成功するに違いないが、このへんのことはまたいずれ考察したい。

|

« 新たな動き【94】工学院 来春さらなる教育改革!① | トップページ | 英国のEU離脱とフランスバカロレア哲学試験 »

21世紀型教育」カテゴリの記事