新たな動き【132】 香里ヌヴェール学院 苦悩を乗り越えて
☆カトリック女子校がリフォメーションを行うというのは並大抵のことではない。というのは、近年、カトリック女子校は、時代の大転換に追いついていけず、どこも魅力を喪失しているからだ。
☆しかし、その世間が欲する魅力とは、「大学合格実績」だとか「浅いアクティブラーニング」だとか実利主義的ポピュリズム的流行の話であるから、はいそうですかと、カトリック女子校がそのような表層的魅力に飛びつくはずがない。それゆえ、時代の流れに取り残されてきた。
☆ところが、時代の大転換とは、実利的でもポピュリズム的話では全くない。だから、カトリック女子校は、私たちの時代がやってきたのだと、今まで行ってきた教育をやれば時代の大転換に乗れるし、いやむしろ牽引できるかもしれないと希望を抱く。
☆たしかに、グローバルな時代、英国のEU離脱のように、一見混迷を生みながらも、本物だけが残る越境的なトマス・アクィナス=アリストテレス的正義論の枠組みの市場の原理が発展しつつある。その原理は「真理は自由にす」である。だがしかし、残念ながら、それが今までのカトリック女子校の中で、できていたかというと、それは全く違う。
☆学校の中だけで通用する真理と自由と純潔なのである。そこから一歩出るとガラス細工のようにもろく崩れてしまう。いやそんなことはないと反論されるだろうが、多くの場合、日本の人口の8%しかいない超富裕層・富裕層・準富裕層に嫁ぐか、将来そのクラスに入れる医者とか弁護士・会計士になってきたから、守られてきただけなのである。
☆ところが、昨今、この富裕層らの価値観が変わってきている。学校の壁の中で真理と自由と純潔を唱えているような人材より、富を増やすこと即社会貢献というグローバル世界で真理と自由と純潔1を実行可能にする女性が求められるようになってきている。
☆また、カトリック女子校は、職業学校ではなかったから、就職活動という実利的なところにもともと立っていなかった。仕事をするなら、医者や法律家など資格を有する高度技術を有する仕事についた。ところが、この領域に人工知能が進出してくるという時代になってしまっている。
☆すなわち、ファーストクラスに嫁ぐことが、時代に求められなくなってきたのであり、既存の高度技術を有する人材も昔ほど希求されることがなくなった。
☆では、職業学校になるのだろうか?それはできないし、なったとしても、そもそもそのような職業の65%以上は新しい仕事に取って替わられてしまう時代である。
☆そうなると、大学合格実績かというと、2020年大学入試改革で今までの受験勉強では間に合わなくなる。
☆結局、既存の知識だけでは、解不能な予測ができない事態にぶつかったとき、それを乗り越えにくい。乗り越えるには起業家精神を抱けるほどの知識創造型のカリキュラムチェンジをしなければならない。
☆バージョンアップなどではとても、子供たちが自ら未来を創る知を備えられない。マリア様に保守されてきたカトリック女子校が、共学校になって、女子生徒と男子生徒が協働して、マリア様の手を引っ張って外に連れ出し、世界の痛みを、いっしょに癒し、世界を変えようよと学校の殻を破るようにならねばなるまい。
☆そのために、正解到達型アクティブラーニングで満足せず、知識創造型アクティブラーニングへとカリキュラムチェンジを果たすのだという、バージョンアップではなくパラダイムチェンジの不退転の覚悟を決めたのである。
☆今回の説明会では、進路担当の先生からその覚悟がユーモアも交えながらも高らかに謳われ、宣言された。未来を創る高度な思考力と技術を育成するカリキュラムチェンジを行うのだと。
☆そして、そのプロトタイプとして「思考力テスト」対策講座が披露された。正解のない問題に取り組む思考力を育成する深いアクティブラーニングをグループワーク形式で行った。テーマは「伝える」。マインドマップや比較対象表を活用しながら、「伝える」という言葉や現象・事象を多様な角度から考え、話し合った。
☆頭が柔軟になったところで、最後は200字論述。いきなり書きなさいという20世紀型教育だと、出来る生徒はますます出来るようになるが、そうでない生徒はいつまでたってもできるようにならない。しかし、色々な角度からテーマを考えたり、対話をしたりしながら、頭を柔軟にする21世紀型教育だと、人の意見ではなく、自分のアイデアが内側からワクワクふくれ上がってくる。他人の意見に引きずられず、自分の中に自分が見いだせたとき、それは本当の希望だし自信になる。
☆アクティブラーニングだから、さぞワイガヤだろうと想像していたが、あっさりそれは裏切られた。ゆっくりとしたテンポで始まり、生徒1人ひとりの中の自分が殻を破るときの音に、先生方は耳を澄ました。
☆果たして、そのときがやってきた。カテゴリー分けの軸が、いろいろあって、自分の軸はそれでよいのだと確信する瞬間がそれだ。「存在するものと見えるもの」「ごんべんがついているものとそうでないもの」「伝えて分かるものと見て分かるもの」・・・・・・。なんてすてきな多様な視点。
☆そのあとの200字の記述では、鉛筆の芯が解答欄を連打する音で教室をいっぱいにした。言葉が通じない時、どうやって相手に自分の考えを伝えるのか?それは言葉の原点に戻ればよいという言語学者顔負けのアイデアを引き出す生徒もいたほどだ。
☆生徒の正解のない問題に取り組む真剣な姿勢を見て、この子たちといっしょに未来を創ろう、そう覚悟を決めた先生方の表情と眼が輝いていた。
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