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多様なアクティブラーニング

最近の文科省の公開する資料では、アクティブ・ラーニングを「主体的・対話的で深い学び」という3つの視点に置き換えるようになってきています。2013年以降、「アクティブ・ラーニング」はずいぶんいろいろな角度や切り口で語られ、収拾がつかなくなってきたからというのもありますが、かなり出揃ってきたと判断したので、アクティブ・ラーニングのコアコンセプトみたいな方向にシフトしているのかもしれません。

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☆しかしながら、公立学校が中心ということもあって、どうしても哲学授業ができませんから、「主体的・対話的」が体験主義になってしまいます。learning by makingもオバマ政権のように3Dプリンターまで用意されたメイカーズスペースがつくられているわけではないですから、どうしても限界があります。

☆しかし、知識主義一辺倒の学びではなくなってきているので、日本の教育には希望がでてきたわけです。これらのアクティブ・ラーニングをなんちゃってだとか言うのもありですが、これは教師の能力の問題ではなく、教育制度の問題なのです。

☆そういう意味では、益川弘如先生(静岡大学大学院教育学研究科准教授)の取り組みでは、上記の座標軸の体験主義×知識主義の領域で、安定したアクティブ・ラーニングのモデルができていると思います。

☆一方、浅いアクティブ・ラーンングから深いアクティブ・ラーニングを提唱している溝上慎一先生(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)は、たしかに公立学校を中心とする取り組みが基本ですが、私立学校のアドバイザーもやりはじめていますから、理論上はシステム思考まで触れ始めています。

☆しかし、このシステム思考は、どうしてもIB(国際バカロレア)のプログラムで活用されているほどのもので、ハードルが高く、なかなか公立学校の事例ケースに埋め込むことができないというのが現状でしょう。

☆これはこれでよいのかもしれませんが、一方でOECD/PISAやCEFRは欧米の教育の伝統であるエピステモロジー的なアプローチが基礎にあり、公立私立問わず、システム思考の意識は当然あります。

☆そういう意味では、「グローバル」といったときに、欧米では公立私立問わず「浅いアクティブラーニング」から「深いアクティブラーニング」への取り組みがなされています。あくまでも相対的ですが、日本に比べ、あんなに教育格差があるのに?と疑問をもたれるでしょう。

☆たしかにそうです。平均的には日本の初等中等教育がよいのかもしれません。しかし、公立私立問わず、「深いアクティブラーニング」への取り組みの機会が与えられているというのは、どのように判断したらよいのでしょう。

☆すくなくとも、その機会を心ある先生に依存するだけではなく、教育制度としても開いた方がよいのではと思うのです。

☆そういう意味で、日本は特殊なのかもしれませんが、私立学校はシステム思考のアクティブラーニングに取り組んでいる学校もあるし、今では富士見丘や工学院のようにデザイン思考の領域に挑戦しているところもあるぐらいです。

☆そして、学校全体でエピステモロジーとしての問いのシステムの基礎としてソクラティックメソッドを探求し始めたのが工学院です。

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☆アレクス・ダッツン先生(ケンブリッジで大学で哲学を学び、慶応大学の講師なども経て、かえつ有明の帰国生の授業を担当しています。帰国生の憧れの教師でもあります)は、おそらく認知主義的な対話システムを体系的にマニュアル化できるほどの教師です。

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(福田先生は、国語の教師ですが、英語でワークショップに参加)

☆この叡智を工学院の改革担当の先生方が、GLICC(Global Learning for Innovative, Creative Community)という学びのプラットフォーム(生徒から教師まで学び合う空間)で、アレクス先生に学びました。もともとデザイン思考の新教科を2年前中学から始めていますから、そこにエピステモロジー的要素をソクラティックメソッドで学んでいくことの重要性に気づいている先生方ばかりです。すでに「思考コード」というエピステモロジー的発想の思考の基準を創り上げてきた先生方でもあります。

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(ソクラティックサークルで問いと回答の対話の深みを体験しています)

☆5人の先生のうち、2人は英語の教師ですが、3人は違います。それでもオールイングリッシュで、講義とワークショップの学びを6時間行いました。相当疲れた様子でしたが、たいへんおもしろかったし、すぐに応用ができると目は輝いていていました。いよいよ日本の学びにも突破口が開いた手ごたえを感じた瞬間でした。

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(Philosophical Enquiry Stage 1の認定を受けた先生方)

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