アクティブラーニングの創り方のメモ(4)応用・適用と創造性と創造的思考
☆従来のように講義形式中心だと、カリキュラム遺伝子は生徒1人ひとり利己的な知を求めて終わるけれど、アクティブラーニングにするとそのカリキュラム遺伝子は、生徒1人ひとりの才能を最適化するという利己的に働きながらも、チームとして利他的に働く。つまり、MFO(man for others)マインドセットがなされる。
☆スタンフォード大学のキャロル・ ドウェック教授は、これをGrowth Mindsetと呼んでいるし、この言葉は結構使われているので、外では、この表現を活用しているけれど、要はMFOマインドセットなのだと思っている。
☆そんなわけで、「図1」のようにカリキュラム遺伝子である「思考コード」の一翼である「思考の次元」を設定してきた。
☆ところが、今年になって、私立中高一貫校だけではなく、私立小学校の先生方とアクティブラーニング創りに取り組んでいて気づいたことは、小学校の段階では、「図1」ではなくすでに「図2」のような感じになっているということ。
「図2」
☆もちろん、はじめから「図2」のような意識が明快にされ、可視化されているのではない。先生方の1人ひとりのアクティブラーニングのシラバスをその小学校全員の先生方と2日間、分析研修をやって、はじめてこうなっているという情報共有ができて、みんなで驚いたのだ。
☆私自身2009年から「本と絵」というワークショップを月1回お手伝いしてきた。小学校1年生から3年生までで、20人くらいが参加。2時間30分取り組む。最近は素材の「本」だけ提供してワークショップに参加できないでいるのだが、報告をきいていると、やはり低学年のときに、すでに「自分軸」の芽がでていることに驚くのだ。
☆本が好きだったり、絵を描くのが好きな子供たちが集まっているから、そういう意志をもった特別な子供たちなのだろうと思ってきたが、どうやら小学校では、LOTで止まることなくHOTまで授業の中でジャンプしているのである。
☆だから、「図1」のようなカリキュラム遺伝子の考え方に引き戻してしまうと、実は「図3」のように、逆にHOTの部分が壁で覆われてしまうおそれがあるということに気づいたのである。今回いっしょに取り組んだ小学校の先生方に、もしも「図1」を基準にするように強要したとしよう、すると、それがプロクロステスのベッドになってしまう可能性がある。
☆「図3」は、20世紀型教育における講義形式というアクティブラーニング(講義形式も実はアクティブラーニングの1種類)のマインドセット。中高では、このマインドセットを「図1」のようにGrowth Mindsetに解放/開放しようというのが21世紀型教育。
☆しかし、私立小学校は、私が一緒に取り組んだ学校の先生方がたまたまそういう先生方の集団だったのかもしれないが、「図2」のように、カリキュラム遺伝子のイメージを最初から描いておいた方が適切なのかもしれないと感じている。
☆そうはいっても、小学校では「自分軸」の芽が育つだけで、やはり開花するのは中高。すると、同じ創造的思考でも、小学校と中高では(もちろん中学と高校も違う)、差異があるということだろう。
☆それは何か?それは、あくまで仮説だが、小学校の創造性は、創造的思考から直接生まれてくるのではなく、「応用」からジャンプして間接的に、結果的に思考レベルが創造的思考にまでジャンプしているのであり、中高では創造的思考を生み出す環境を直接つくっているのではないかという差異である。
☆これはたまたまであるが、小学校で行われている「いっぽんの鉛筆のむこうに」」プログラムに遭遇したから気づいた。私も中学生向けに「鉛筆で新物質へ」プログラムを制作していたので、その共通点と違いに気づいたのである。
☆その私立小学校の「いっぽんの鉛筆のむこうに」は、谷川俊太郎の著書。まずその本を子どもたちが読んで、「一本の鉛筆」にかかわる仕事をする人やその家族が世界に広がっていることに気づく驚きの文章。
☆この着想をアナロジーとして、「鉛筆」を「牛乳」や「肉」など別の物に応用していく。すると、谷川俊太郎の気づき同様、異質のものがどんどん結びついていく。そんなアクティブラーニングを牧場で行っていくプログラム。
☆私のは、トポロジー発想をメタファーとして、「ダイヤモンドや黒鉛」と「フラードームやサッカーボール」という異質のものを結び付け新物質にたどりつくあのノーベル賞受賞者らの発想を追体験するもの。
☆異質のものどうしが結びつくという点で、どちらも共通しているが、小学校の段階では、類比発想を活用してそこから創造性を生み出していく。
☆「応用」はあくまで翻訳で、ブルームは“Application”という言葉を活用している。なるほど「適用」という方が今回はピタッとくる。類比発想で谷川俊太郎の着想を適用していくのである。
☆遺伝子は人によってそれぞれ違う。同じようにカリキュラム遺伝子も先生方1人ひとりによって違う。それがコラボレーションによって最強最適のその学校のカリキュラム遺伝子が創発されるのだろう。
☆ブルーム「型」の思考コード=カリキュラム遺伝子はあくまで仮のもので、学校によって違うのは当たり前だ。大学の入試改革は、どうやら生徒1人ひとりの遺伝子とそれに影響を与えてきたその学校のカリキュラム遺伝子の優秀性を評価する・受け入れるように変わっていくと考えるとスッキリしするのではないか。
☆すでにIBのカリキュラム遺伝子は、そのようなカタチで世界大学ランキング100位以内の大学に受け入れられている。
☆慶応大学などのAO入試で、どんなカリキュラムで学んできたか記述するのも、すでにその兆候だろう。
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