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富士見丘 シリコンバレー流教育手法 デザイン思考×STEM(3)

☆今回のクロージングセレモニーでは、IDEOの共同経営者のトム・ケリー氏が登壇。「創造的に生きるための3つの秘訣」という題目で講演。デザイン思考をスタンフォード大学に根付かせたディヴィッド・ケリー氏の兄。「クリエイティブ・マインドセット」の著者。

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☆氏の考え方や著作は、リベラルアーツの現代化のプロトタイプ。人間の存在をカタチづくるすべてのものをデザインするのである。人間の存在をカタチづくるものとは、空間、時間、身体、神経、心、知、自然、社会、都市、経済、政治、医療・・・すべてであるが、それらを人間の存在を豊かにするためにデザインするのである。

☆狭いスペースに机を創るにはどうするか、医者とクライアントの絆を豊かにするには、どうするのか、創造的思考を活性化するにはどうするのか、自然と社会と精神の最適な関係を生み出すにはどうするのかなどなど、すべてリベラルアーツの領域。

☆それを従来は読書と思索という教養の中に閉じ込め、一握りの人間が楽しめる閉鎖的空間をつくってきた。しかし、それを解放し、すべての人にリベラルアーツの現代化の機会を生み出し、1人ひとりがクリエイティブコンフィデンスを有するようになるというのがクリエイティブマインドセットの本のねらい。

☆そのためには、身の周りの物を旅をした時と同じ目で観察し、耳を傾けなさい。そうするちょっとした時間を意識的に生活の中に組み込み、創造性をトレーニングする創意工夫をしようというのが、今回の講演のテーマだった。

☆このトム・ケリー氏の発想は、見事にハイデガーの哲学と重なる。住む空間ではなく、住まう空間をよく見て、耳を傾け、実存としての人間を通して、その背景にある存在そのものを気遣いなさいというのは、現存在を通して存在を気遣うハイデガーそっくりなのだ。

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☆ハイデガーと違うのは、彼の難解な哲学を、学問の領域から解放し、すべての人が人間の存在の根源に開かれる機会を生み出すデザイン思考を創り出したことだ。

☆トム・ケリー氏が哲学を意識しているかどうかはわからない。しかし、世界の痛みを感じる感性が豊かであり、その痛みを解消するための問題解決方法としてデザイン思考を活用するから、身近なクライアントの苦しみ、悲しみ、辛さの背後にある世界の痛みを感じないはずがない。

☆その痛みを感じるや、それを解決したいという意欲が世界のニーズにつながるのである。トム・ケリー氏のクリエイティブ・マインドセットが、身近な人間の生活の問題解決を創出するように、それはどこかで人間の存在そのものもの問題を解決することにつながる。

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☆人間は、というか世間はしかし、ハイデガー的には頽落し、存在の根源を忘却するものでもある。それがゆえに、デザイン思考やアクティブラーニングは、大学合格実績を出すシステムに適合していないと言い出す世間が現れる。

☆それが、人間の存在の根源的なものを忘却することだということに気づかないのである。では、どうしたらよいのか。

☆旅をするときのように、観察をし、耳を傾け、異文化の人々と対話することだ。自分とは何か違う差異に、日常生活の枠組みをズラす亀裂がはいるからだ。その亀裂の向こうに人間の存在の根源的なものが顔を出すのである。

☆そのとき、世界は変わるし、自分も変わる。

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(隣の席では、工学院の田中先生方が真剣に耳を傾けていた。新しい発想が頭の中、いや身体中駆け巡っていたに違いない)

☆この変わるという想像力からバックキャストして、デザイン思考のプログラムが考案される。しかし、同じパターンのデザイン思考は、日常化する。日常化すると、根源的なものを忘却の淵に追いやるから、新しいプログラムを生み出すのがデザイン思考の宿命である。

☆毎年変わらない教科書を理解するプログラムは、忘却する精神性を固定化する。それをFixed Mindsetと呼び、デザイン思考で開放するとGrowth Mindsetが生まれる。このGrowth Mindsetは、スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック氏の発想だが、同大学関係者は、それをもちろん共有している。私の尊敬するプレイフルラーニングを提唱している上田信行教授も大切にしているマインドセットだ。

☆トム・ケリー氏の著作でも引用されているし、今回同行されたスタンフォード大学の研究者も活用していた。

☆日本の高校生は自己肯定感を持っている比率が低いことで有名だが、それは彼らの問題であるだけではなく、実は20世紀型授業がもともとFixed Mindsetを目的とするものだから、自己肯定感というGrowth Mindsetが低くなるのは当然ではないか。

☆富士見丘をはじめ、デザイン思考や21世紀型アクティブラーニングを実施している学校の生徒がクリエイティブマインドセットされていて、豊かな知性、感性を創出しているシーンに出くわすのは、そういう理由がちゃんとあったのである。

☆2014年8月、2年前に、トム・ケリー氏のこの「クリエイティブ・マインドセット」の本を読んで、感想をホンマノオトにメモしているが、今読んでも結構まともに理解しているなあと感じる。社会と学校のギャップについて、シェリー・ゴールドマン教授も語っていたが、同じ趣旨のことをブログで書きとめているのも、私のビジョンも方向性は間違っていないと確認できた。

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