2017中学入試動向(22) 首都模試の偉業 2017年中学受験生数増へのイベント開催!
☆11月3日(木祝日)、和洋九段女子で第1回「新入試体験 私立中学コラボフェスタ」が開催された。主催は首都圏模試センター。中には了見の狭い業界人もいて、反発するが、それは世の常。
☆首都圏模試センターは、中学受験業界の新たな市場創出によって、業界全体の経済が豊かになり、それが実は日本経済復活の人材を輩出する拠点になるというところまで見通している。
☆同センターの取締役の北氏及び山下氏を応援することが、業界にとってプラスになるのに、動き出さない大手業界は本気で経済を考えているのか?とときどき不思議に思う。まさか自分のところだけ利益があがればよいと思っているのではあるまいな。そんなことをしたら、やがて自分の首を絞めるようなものであるのだから、そんなことはあるまいと。
☆北氏と山下氏は、他とは違い、徹底的に多様な入試の志望者数を収集し、そのデータを分析している。エッ!と思うかもしれない。実は、2科4科の数はとっているけれど、思考力入試や英語入試、自己アピール入試など新しいタイプの志望登録を完全にしていないのが、他の模試なのである。データ全体を見る保護者はいないので、気づかないと思うが。
☆かつては、2科4科の受験生の数を追跡していればよかったが、最近はそうはいかない。しかし、なぜそれをやらないのか?面倒だからか?違う。確立されたシステムを改善するにはコストがかかるから、そのままにしているのだ。
☆中学受験市場がフリーズしたからコストがかけられないのか、システムが自動化してしまい、そこを改善する情報を持っているリーダーが育っていないのかどちらかだろう。いや、おそらく両方で、それが負のスパイラルの影響を少なからず与えている可能性がある。
☆つまり、首都圏の中学受験生数の数を正確につかめないために、多く推計したり、少なく推計したりしてしまう。そのように推計された場合、学校側は、生徒募集戦略を最適な状態に持ち込めない。多い場合は、変革しないで小手先の修正で乗り切ろうとするし、少なすぎる場合、どうしてよいかわからず動きがとまる。
☆北氏と山下氏は、前年に比べ500名受験生が増えたjことに注目する。首都圏中学入試における総定員は42000人だから、シェア1%である。たかが500人とみるか、重要な数字だと判断するかは、市場センスが問われるだろう。
☆1%という数字は、成長を表現する際の重要なスコアだろう。もともとパイが限られた市場なのだから、大企業の出す数字に比べても何も見えてこない。
☆要するに、両氏のこのこだわりと市場センスはさすがなのである。多様な入試が行われるようになったのは、各学校の創意工夫と市場のニーズのマッチングが起きているからである。いったいそのニーズは何なのか?マーケットリサーチセンターとして機能しているのは、首都圏模試センターだけかもしれない。
☆今回北氏の講演を聞きながら、また、各学校の新入試体験ワークショップを見学し、参加した生徒と保護者に話を聞きながら、そして、業界の重鎮I氏とS氏の話を聞きながら、2017年首都圏中学受験生数が推計できた。
☆しかも、今回のイベントのおかげで、入試タイプ別に出すことができたために、見た目の受験生数の割に中学受験市場が活性化していないのはなぜかがはっきりと見えてきた。
☆2017年の首都圏中学受験生数の推計は、44200人、定員総数は約42000人だから、余裕のはずである。しかし、3分の2の中学は、2科4科入試を中心として募集展開をしている。
☆多くの塾も、対策は2科4科入試。ところが、この2科4科だけという生徒は、36000人。42000人の内、2000人は公立中高一貫校の受検生。ここはおよそ10000人受検するから、問題ないが、2科4科を中心にしている私立中高一貫校は4000人足りないということになる。定員200名の学校20校分の数だ。
☆これは恐ろしい。そこで、公立中高一貫校を受検して、先に進めない生徒8000人を高校受験でリベンジさせるのではなく、私立中高一貫校にも目を向けてもらおうということで、適性検査型入試が始まった。しかし、経済事情があるから8000人全員を誘うのは難しい。
☆奨学金制度など組み合わせて、なんとか4000名は、私立にということだろう。もちろん、彼らの中には2科4科を学んでいる生徒もいる。だから、塾では正確にマーケットのニーズをつかみにくい。
☆大学入試で、AO入試などのマイナス要素をあげつらい、一発ペーパー試験に誘い、合格実績をかせごうとする学校があるように、塾でも新入試ではなく、なんとか2科4科に目を向けさせようとするところもまだまだ多い。その方が目先の利益につながるからである。
☆しかし、小学生で英語に興味をもって、英検3級や4級を取得する生徒が増えてきていることも一方で事実。実際、今回のイベントで英語のワークショップに参加した生徒のうち、複数の子が4級をすでに取得していた。
☆また、科学に興味をもち、実際に国際ロボットコンテストに出場したり、遺伝子についての研究の成果を発表している生徒も参加していた。そういう生徒は、11月の休日はほとんどコンテストやプレゼン大会に出場しているから、2科4科の受験勉強をしている時間がない。
☆そんな才能ある生徒にとってこそ、思考力入試は実に魅力的だし、なにせ、未知との遭遇が大好きだから、考え抜く入試は最高なのだと鼻を膨らませて感想を教えてくれた。
☆適性検査型入試も含め、何らかの新入試を行う学校は、110校になると北氏は予測しているが、そこには5500名の可能性があるからチャレンジしないわけにはいかないのである。もちろん、潜在的なものだから、学校側もその数字を明快に意識しているわけではないし、受験生もはじめから、新入試を選択しているわけではない。新市場が誕生するときというのはこういうものだろう。
☆とにかく、2科4科では、総定員数を割っているのである。受験生がいなくなったから割っていると考えることもできるが、時代の変化に合わなくなってきている部分もあると考えることもできる。
☆新入試と適性検査型入試の5500名と帰国生2700名を合わせると8200名。富士見丘のように、この8220名に歓迎されている学校も登場しはじめた。
(富士見丘のワークショップは、実におもしろく、参加した生徒も考え、想像する作業に没入。)
☆また、工学院のように、英語入試と思考力入試、2科4科バランスよく受験生がチャレンジする学校もでてきた。
☆思考力入試を行っている学校の特徴は、思考力なるものを、自分を変える、世界を変えるサバイバルスキルとして活用できる環境がある。大学受験のための思考力ではなく、未来を切り開く自分、未来を創る自分、未来を変える自分、そのためには協働しながら未来に貢献する自分をプロデュースすることが肝心。こんなメッセージを入試で受けとめることができること。これからの中学受験生が欲しているのはそういう自分事としての知的刺激ではないだろうか。
☆また、そういうサバイバルスキルとしての英語力を身に付けることができる八雲学園や東京女子学園のプログラムも興味深かった。
☆八雲学園は、ラウンドスクウェアというIBの別バージョンの団体(世界の名門校が参加している)に加盟するが、そうなると、英語の八雲は、さらにパワフルになる。そのことの重要性については、今のところ知る人ぞ知るである。
☆これらは、一例である。まだまだ新入試の情報は浸透していない。だから、中学受験市場の活性化はまだまだできるのである。
☆今回北氏と山下氏のビジョンとコラボした私立中学は実に正しい未来を描いている。このようなイベントを最初にチャレンジしたファースト・ペンギンは称えられるべきなのだ。だから、私はこのような学校を今後も大いに応援していこうと思う。大きなお世話だといわれるかもしれないが。
新入試体験ワークショップを行った学校。
パネルディスカッションに参加した学校。
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