2030年教育動向(02)AI社会における教育
☆ケヴィン・ケリーの「<インターネット>の次に来るもの」(2016年NHK出版)は、壮大な未来の予感を語っている。21世紀を3000年紀の「はじまり」であると捉えているのだ。
☆インターネットやAIの次の世界を1000年単位でイメージしている。10世紀、20世紀、30世紀というスパンで考えるのは自然であり、21世紀が30世紀の始まりとするのも、感覚的にも一見自然ではある。
☆10世紀代から20世紀代は、たしかにコペルニクス的転回という画期的パラダイム転換があった。そして農耕経済から資本主義経済への大きな転回が起こった。
☆ではいったいどんな画期的な次なるパラダイム転換が起こるというのだろう。そして、そこに到るまでは、過去のパラダイム転換の時に起きた流血の葛藤を幾重も超えなければならないのだろうか。
☆しかし、井上智洋氏の「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」(2016年文藝春秋)によると、3000年紀のかなたの兆しは、明快な輪郭を2030年描くという。
☆たしかに、今の雇用は大崩壊なのだが、人間の生活が大きく変わることによって大崩壊。もはや働かなくてよいのである。エッ~!♪。
☆紀元前から10世紀代は、奴隷制度や帝国制度が、人間の生活を支えてきた。20世紀代は、産業革命への道、資本主義の道、民主主義の道であったが、お金がお金を生む格差資本主義を土台としていたために、戦争やテロは続いた。
☆21世紀は、そんな格差を生む仕事なんて捨ててAIに経済システム丸ごと処理してもらう時代になるのだという。そこまでは、とてもたいへんな道のりだ。
☆米国のとあるIT会社のCEOがスタッフを集めてこう言った。うちの会社のスタッフの最低年収は700万円にすると。モチベーションはあがり、業績も伸びたが、取締役たちは訴訟を起こす。そんな設定をしたから、自分の年収はさがったどうしてくれると。
☆もし、AIによって、仕事丸ごと行われるようになったら、もはやお金どころか、食糧も、生活用品も、全部AIが生産してしまう。格差なんてまったく意味がなくなる。不足の経済ではなく、過剰な経済。バタイユルネサンス!そして、その背景には、アリストテレス、トマス・アクイナス、モリス、ゲゼル、ケインズ、アレント、宮沢賢治、五島慶太、渋沢栄一・・・という≪私学の系譜≫がつながっているのがめちゃくちゃおもしろいのだが。
☆ともあれ、生活はAIシステムが保証してくれる。失業した全人類はどうするのか?リベラルアーツしかなくなるというわけだ。インターネットやICTはどんどんなんでもコピーしまくる。3Dプリンターで3次元の世界もコピーしまくる。
☆もはや、今まで価値ある希少性もコピーによって価値は無化する。残るものは何か?唯一性のオリジナルのアイデアを生み出す存在者。唯一神という意味ではなく、一人ひとりがそれぞれ唯一者という意味。人類はこういう存在者として生きることになる。つまり、≪私学の系譜≫の夢であるユートピアの実現。
☆社交的知性、つまりホスピタリティーとクリエイティビティのみが人間存在として唯一性を担保できる才能なのだ。
☆もちろん、当面はそうならない。テクノロジーの経済格差が残り、格差あるところは、いろいろな葛藤が起こる。
☆しかし、確実なのは、コラボレーションできるホスピタリーとクリエイティビティというアイデア精神が3000年紀において、通貨に入れ替わって信頼性と成るということだろう。
☆さて、そんな馬鹿な!と思っただろうか?それともこのユートピアを実現しようと覚悟しただろうか?STEAM教育もデザイン思考も、結局のところ、人類にとって不便なものを便利なものに置き換えようとする方法論だ。
☆人類最大の不便なものは、労働である。奴隷→労働→オール創作へ。これが3000年紀に向けての人類の生活のパラダイム転換だろう。もっとも、当面拡大、普及するには時間がかかるだろうが。
☆これと教育はどのような関係にあるのか?教育は結局そのときの経済社会を強化するスキルトレーニングの場である。経済社会がAI社会になったとき、リベラルアーツしか残らなくなるのが教育のパラダイム転換だろう。
☆AIが記憶を手伝ってくれるまで、憶える授業は続くだろう。AIが翻訳・通訳してくれまで英語の授業は続くだろう。AIが文章・音楽・画像・動画の編集を丸ごとするようになるまで、ICT教育は続くだろう。しかし、発展途上のAIによって、かなりその部分は補完されるようになる。
☆アクティブラーニングをせざるを得ない時空が余り出す。対話と編集とアートとパフォーマンスというリベラルアーツは、一方向型授業では行うことはできない。
☆そして、評価ももはやホスピタリティーとクリエイティビティの質をマネジメントする方法論となる。
☆たしかに3000年紀に向けて、2020年大学入試改革は行われざるを得ない始まりの1つの契機なのである。
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