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2017中学入試動向(61) 海陽 突出する全寮制学校

☆読売新聞(2016年12月10日)の教育ルネサンスの記事「中学受験5 出張入試で認知度アップ」は、一面の事実をきっちり報道している。が、そこはジャーナリズムの特質上、未来を描けないようである。

☆海陽の他の出張入試をやっている学校と比較にならないほどの突出したメッセージを送っていることが見れども記述できないという制限があるようである。

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(6:30、海陽学園を包みこむ朝焼け。そしてハウスは目覚める。)

☆同記事では、出張入試の意味は、中学受験人口の全国的な縮小傾向という現状にあって、パイの分捕り合戦というトーンで書かれている。

☆そのために、地方から首都圏に市場拡大をし、難関大学合格実績の良さを売り、「お得感」をアピールしようという損得勘定戦略を前面に出している。

☆北嶺や鹿児島県立楠集がそういうトーンで書かれているのは20世紀型教育ベースであるから当たらずとも何とかでしかたがないが、不二聖心まで、認知度があがれば次につながるからというトーン。

☆肝心なのは、「次にどうつながるか」についてである。不二聖心であれば、本質的な存在が失われ、空虚な生活に押し流されそうなこれからの時代、カトリック精神が頽落する時代を正しい道に戻していく教育を行うために、首都圏に布教に出るのが本意のはずである。

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(校長勉強会のシーン)

☆しかし、そこは未来のことゆえ、現実のところまでしか紹介されない。たしかに、ミネルバの梟は空が灰色になってから飛び立つというわけだ。

☆それゆえ、子どもたちといっしょに未来を創る教育を前面に出している海陽学園は、出張入試の学校のリストに客観的な情報として載っているが、その教育について積極的には触れられていない。

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(東大出身の校長と京大出身の教頭とのトークセッション。京大特色入試の医学部の問題をめぐる興味深い科学的洞察トークに先生方も知の扉を開く)

☆海陽がいかに突出しているかというと、未来をポジティブにもネガティブにも捉えていないということだ。一喜一憂も右顧左眄することもない。冷静に世界分析をしている。あるいは歴史を分析し、誠の道を正々堂々と歩いている。

☆世界の歴史は、常に普遍と個別のせめぎ合いの連続である。今もグローバルとローカルの世界規模のせめぎ合いであるが、そのような現象として、過去においても今においても未来においても、戦争も起こるし、テロも起こるし、分断も起こる。しかし、20世紀を顧みるだけでも、焼け野原になったドイツをはじめとする欧州は見事に復活したし、日本も同様だ。そしてソ連だって、ロシアとして復活している。

☆今、極右や分断の時代と言われているが、ミャンマーやオーストリアはその潮流に流されなかったし、ヴァチカンもマザー・テレサの早期列聖で、大切なもの、失われそうなものを守ろうという動きに出ている。

☆たしかに、歴史はネガティブでもポジティブでもなく、そのせめぎ合いの中で理不尽にも起こる予測のつかない不条理の連続でもある。

☆しかし、その中にあっても、大切なものを喪失せずに、トレンドにただ流されるのでなく、自分軸に自らの存在の旗をたなびかせてサバイブしていけるか、そこにこそ海陽の不退転の教育がある。

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(校長勉強会後も振り返りに集う先生方)

☆海陽の柴田事務長兼広報部長は、出張合同説明会で、

「ただ東大や医学部に行くことが目的で、そのための受験勉強のために洗濯や寮の掃除も面倒見てあげるというようなことはいたしません。

大事なことは、この不確実性の時代にあって、不条理な出来事がたとえ多くとも、<にもかかわらず>それを解決できる知を身につける必要があるし、そのためには自立/自律して、自分の足で乗り越えられる不屈の精神と行動力を身体化する必要があるのです。

海陽のハウス(寮)での生活は、そのシミュレーションでもあります。もし、東大や医学部に行くための効率のよい受験勉強をしたいなら、よその全寮制の学校にどうぞ行かれて下さい」とぶっぱなす。

☆その気概と自信はどこから来るのだろう。いずれにしても、今年の入試説明会で、海陽志望の志向性に新たな価値観をもつ保護者の流れが加わったという。その結果がどうなるかは、入試が終わらなければ確かになんともいえないが、手ごたえは感じているということだ。

☆そして、柴田先生のその突き抜けたアクションを支えているのは、学内の動きだという。2020年大学入試改革に対応する授業を探求する校長勉強会が毎月行われ、そこに参加した先生方のうち7人くらいが勉強会終了後、さらに閉館後の図書館に集まって、振り返りをして深めていく動きが波及し始めているからのようだ。

☆たんなる情報交換ではなく、ナラティブな対話やダイアローグとしての対話が生まれているという。生徒には、いかなる不条理な局面でも、大切なものを失ったり、圧力に屈したり、流されたりしない探究力や知恵をもち、かけがえのなに存在者そのものになってほしい。

☆そのためには、どんな授業が可能なのか、どんなハウス(寮)の生活が可能なのか。現場に寄り添って、対話することが大切なのだと。どうやら、生徒1人ひとりの未来は、24時間体制の海陽学園のいまここにあるのではあるまいか。

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