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2017中学入試動向(62) おおたとしまさ氏 「大学付属校という時代」で新≪私学の系譜≫の契機に迫る

☆おおたとしまさ氏の新しい著書「大学付属校という選択 早慶MARCH関関同立」は、時代の転換契機を見事に浮き彫りにした本。

☆2020年大学入試改革、早慶MARCH関関同立、教育と人材育成、早慶MARCH関関同立以外の大学付属(今回はあえて述べていないことにより述べるという戦術)のそれぞれの両義性を巧みに論じている。

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☆濃密なインタビューを編集して作成しているから、わかりやすいし、とっつきやすいように思えるが、実際にはその編集の背景にあるおおた氏の新≪私学の系譜≫論(本人はそうはいっていないが、氏のプロフィールからいって身体化されている)という思想が見え隠れする。

☆編集者の方は、その思想を読む読者も想定しつつ、一方でおおた氏が、本書はカタログではないとあえていうことによって、カタログのように自分の興味と関心のある学校ページを読んでも十分に納得のいけるように作戦が組んである。

☆2020年の大学入試の両義性は、成功すれば子どもにとっていまよりはましかもしれないというポジティブな側面と早慶MARCH関関同立とその附属中校が今のようなツリー構造ではなく、セミラティス構造になるアイデアをだし、大学全体の在り方を、構造から変えてしまおうという大胆な意味も散りばめている。

☆早慶MARCH関関同立については、海外の大学とは違い、そのままエスカレーターで進学していく、ちょっと人権的なあり方としては、ある意味分断であるから、クエスチョンを投げながらも、学歴社会や塾歴社会から身を守るシェルターとしての意義も見いだしている。

☆そして、あえて早慶MARCH関関同立以外の大学付属の学校について論じないことにより、大学付属校の中での分断があることを浮き彫りにし、早慶MARCH関関同立の附属校のように機能できない大学の問題を明らかにしている。

☆つまり、このグループが2020年大学入試改革の壁になるだろうし、教育とは程遠い、企業にとっての人材を育成する装置になってしまっていることに対しクリティカルな想いを読者に刺激してしまう。

☆いずれにしても、教育と人材育成という両義性こそが、どの両義性にも通底していて、端的に言ってしまえば、どこぞの教育学者や労働と教育を決定論的にトランジッションなどといって結びつける人気学者に踊らされているアクティブラーニングのセミナージプシーをやっている教師に教育の概念の脱構築を迫っている。わかる人はわかるというアクロバティックな思想で、結構厳しい眼差しが教育界に注がれている。

☆しかし、それは、明治以来、教育と労働を直接結びつけない≪私学の系譜≫と教育と労働を直結させる国家戦略を体現した≪官学の系譜≫とのせめぎ合いが今も続いていることを確認しながらも、そのせめぎ合い自体が成り立たない新しい時代がやってきていて、その時代を洞察することができる学校が新≪私学の系譜≫をつくらざるを得ない局面を、結果的に言い当てている書となっている。

☆すでにハンナ・アレントがハイデガーを批判しているように、存在(教育)と現存在(人材育成)をセパレートして、その統合を図ろうというのは理念に過ぎず、結局は水は低きに流れるのだ。

☆それが2006年に≪私学の系譜≫の結晶体であった戦後教育基本法の改正を私学が阻止できなかった理由だと私は思っている。

☆本質は普遍だ、人材育成というスキルや道具はそれを阻害するものなのだという結局はハイデガー(マルクスはその逆をいっただけで、ダブルバインドを抜けきれなかったという点で同じなのだ)も陥ってしまった19世紀末に生まれ0世紀現代思想によって語られた物語は、そろそろ終焉を迎えてもいいだろう。

☆二元論という二つのモノのせめぎあいではなく、また、その修正主義的な発想として、セミラティス的なモノ的ネットワークでもなく、労働も仕事も活動も人間とその身体的延長であるスキルや環境も関係総体として化学反応体である存在そのものを生み出すコミュニティをいかに創造していくかという時代がやってきているのだろう。

☆しかし、これも放っておくと「関係総体」とか「コミュニティ」といういう方向性や理念の物語りに終わり、結局は本質と道具の二元論の罠にはまってしまうどうしたらよいのか?それは、AIにヒントがある。AIは確率論とコーディングがすべてである。それをデザインしている人間との関係性そのものに大きなヒントがあるだろう。

☆いずれにしても、学校がすべてをカバーできるわけではない、まして中高のトランジッションとして大学や社会があるわけでもない。しかし、そんな決定論的な古い労働論や教育論を温存して、新しい時代の到来をせいぜい2020年大学入試改革ぐらいだという錯誤を強化する機能を果たしているのが大学付属校なのだと思い切り警鐘を鳴らしつつ、新≪私学の系譜≫を構築する未来がやってきたことを見抜いているのが本書だと思う。

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