新≪私学の系譜≫の立場 ある学校の研修会で
☆昨日、ある学校の研修会で、パネラーとして招かれ、言いたい放題言わせていただいたが、要は、すでに行われている成功事例は表面的に見てもわからないから、参考程度にしておいて、教職員1人ひとりが内側から燃える学校組織=学習する組織を形成して、学校独自のローカル基準を創った方が良いのではと言いたかった。
☆そして、しかし、それがローカルのまま終わるのではなく、世界標準といえば大げさなのかもしれないが、国際教育やグローバル教育を標榜するなら、それぐらい突き抜けて通用するものに学内対話と実践とちゃんとした理論を統合していけば、おのずと生徒獲得はできるのだ。内面の渦の力を生み出そうということ。そして、やるなら中途半端ではなくて突き抜ける。
☆しかしながら、このローカルなルールが、受験業界の大衆路線にいくか普遍路線にいくかは、リーダーの見識とか教養に基づいたディシジョンメイクがポイント。
☆人を集めるだけなら、強欲資本主義流儀の損得勘定=俗流功利主義的なビジネスライクでやればよい。勝海舟のような生き方もあるし、福沢諭吉のようにやせ我慢するのだという選択肢もある。
☆もし≪私学の系譜≫を保守しながらイノベーションを起こすのなら、福沢諭吉のように強欲資本主義ではないもう一つの近代資本主義を選ぶのではないかと私は思う。
☆パネリストの中に塾業界の重鎮がいらして、氏は滑舌の良い明快に物事を語る論客だった。氏の言うこともなるほどと思うのだが、氏は情熱的だし、人的資本=人財を大切にして論を展開していた。
☆だから、会場の外に出たときに、「ホンマノオト読みましたが、あの学校の違和感というのは、その学校のあるいはその学校の校長が、本間さんの方を向いてくれないよというクレイムのように感じた」と指摘された。
☆なるほど、そういう考え方もあるかあと妙に感心し、読んでいただいていて、ありがといと思った。しかしながら、私のはその学校に自分の方を向いていないからという理由で書いているわけではない。
☆というのも、私立学校のシステム資本を新≪私学の系譜≫という条件付きの人的資本で再構築しようというのが私の眼目だから、新≪私学の系譜≫から残念ながらそれてしまったその学校は、強欲資本主義に荷担する人材をつくることに結果的になるから、学校選択する時に、私事の自己決定とはいえ、考慮する際の1つの情報として、保護者に向けてメッセージを流しただけである。
☆≪私学の系譜≫は、渋沢栄一、福沢諭吉、高橋是清、江原素六、新島襄、内村鑑三、新渡戸稲造、矢島楫子などに代表される明治政府のとった強欲資本主義ベースの近代路線とは全く違うもう一つの近代化路線を形成しようという教育の系譜だ。
☆それが、象徴的に花開いたのが、戦後教育基本法。その作成にかかわった私学人や新渡戸稲造と内村鑑三の弟子たちだが、≪私学の系譜≫の人的資本として強欲資本主義とは違う近代化の理念を描いた。
☆しかし、それは教育システム資本として成立することはなかった。なんとか各私立学校でその理念を保守するのがやっとだった。
☆なぜなら強欲資本主義ではない資本主義とは何か具体的なシステムを描ききることができなかったからである。1989年までは、冷戦構造があって、強欲資本主義のアンチは社会主義や共産主義だった。≪私学の系譜≫は、あくまで資本主義的近代システムの立場に位置するから、そちらとの闘いが精いっぱいで、もう一つの資本主義をシステマチックに描くことができなかった。
☆しかし、1989年ベルリンの壁が崩壊すると、強欲資本主義ともう一つの資本主義というせめぎ合いが、世界同時的に起こった。
☆しかし、強欲資本主義のツケで、金融恐慌ともいえる事態が何度も起こり、テロへの道も開き、もう一つの資本主義を考案する間もなく、生徒獲得のための目先の対応に迫られた。
☆そのうち、≪私学の系譜≫からどんどん乖離して、気づけば強欲資本主義を生み出す学歴社会や塾歴社会に荷担する学校もでてきた。せざるを得ない学校と積極的にする学校が登場したといえよう。
☆しかし、歴史とは常にパラドクスだ。そういう学校が明快に生まれれば、そうなるまいとする≪私学の系譜≫の保守本道が再び勢いをましてくるものだ。
☆英語、ICT、アクティブラーニング、PISAの新しいリーディングリテラシーなどを採りいれて新≪私学の系譜≫のシステム資本が明快になってきた昨今である。
☆私は、そのシステム資本を創造資本主義と呼びたいと思っている。強欲資本主義から創造資本主義へ。どちらの道を選択するかは私事の自己決定である。
☆そんなことを思っている私だが、もう1人の教育業界の重鎮であるパネリストが、「本間さん、均衡点というのが大事ですよ」と、そっと注意喚起してくださった。結局、持つべきものは友ということなのである。
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