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2030年教育動向(09) すべての生徒が高次思考を学べるか?

★前回の記事で、高次思考≪higher order thinking≫を学べる環境のいくつかの選択肢を述べたところ、それは都市部の話であって、地方はそうはいかないというご指摘をいただいた。現状たしかにそうだと思う。私たちの国は、いたるところにギャップが存在する。この違いもその1つで、重要な問題だ。それをどう解決するのか。2030年にむけて教育も変わっていかざるを得ない。

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(写真は、文化学園大学杉並のダブルディプロマコースのダン校長。同校はカナダのブリティッシュコロンビア州の公立教育と連携した。日本の良質教育は、BC州の公立高校の教育とシンクロしている。このことのパラドキシカルな日本の教育の意味とは何だろう。同校の教育はそこを初めて逆照射する存在。極めて重要なことを示唆する教育実践である。)

★高次思考≪higher order thinking≫とは、実は表現がよくないと常々思っている。というのも、これと対になる表現は、低次思考≪lower order thinking≫で、すでにこの対照的な表現にランキングや難度をイメージしてしまう意味が隠れている。

★しかし、これは20世紀日本社会に属していた私たちの格差の前提を物語っているのである。実は、偏差値ランキングに慣れてしまっている私たちに、クリエイティブシンキングという表現でアプローチしても、それこそ広がらない。

★高次思考≪higher order thinking≫とはクリエイティブシンキングに他ならないが、一足飛びに結びつかないかもしれない。それゆえ、この表現は戦略的に活用できると思う。

★実際、欧米や最近活況を帯びている東南アジアの21世紀スキル育成教育において、≪higher order thinking≫を学ぶことは、当然の目標になっている。もっとも、シンガポールは、この表現がクリエイティブシンキングに結びつきにくいことに気づき、違う路線を模索しているとも聞き及ぶ。

★それに、これとて、すべての生徒が≪higher order thinking≫を学んでいるかというと、そうではない。ただ、すべての生徒に≪higher order thinking≫を学ぶ機会はつくっているということに過ぎないといわれればそれまでだ。

★しかし、日本はその機会すら十分でなかった。したがって、次期学習指導要領で、その機会を設定するということだけでも相当な進化だといえる。

★ただし、ここにきて、アクティブラーニング(AL)は、探究型ALだけではなく、習得型ALもありなのだということが強調され始めた。結局、低次思考の領域である習得型ALが広がり、高次思考の領域の探究型ALは、一部の学校で広がるだけかもしれない。

★しかし、一部とはどれくらいだろう。2020年大学入試問題が変わり始める。変わらないのではないかという懸念もあるが、国公立大学やA型スーパーグローバル大学、THE世界大学ランキング980位にまで入っている大学は≪higher order thinking≫の領域の問題を提示してくる。

★すると、現在ざっくりいうと、高校生の32%は国立&私立高校に通っているが、そこは大学合格実績を出すために(そのことが20世紀型教育的かもしれないけれど)、≪higher order thinking≫を学ぶ環境を整えていかざるを得ず、まずは32%は、その機会を活用できる。

★また、公立高校の約30%は、専門系の高校で、ここもプログラミングやICTを使って実習をするから必然的に≪higher order thinking≫を学ばざるを得なくなる。つまり、全体の21%。すると、ここまでで、すでに高校生の過半数は≪higher order thinking≫を学ぶ環境になる。そして、専門系の高校から大学への道は普通高校とは違う方法=学習履歴重視で開けることになる。

★普通高校の1%は大学合格進学実績を重視しているから、全体の0.7%は、普通高校においても≪higher order thinking≫を学ぶ環境となる。すると、ざっくりと54%弱は、2020年大学入試改革によって、実際に高校で≪higher order thinking≫を学ぶことになる。

★文部科学省という官僚は実に賢い集団である。この割合は、日本の大学進学率にオーバーラップする。結局教育格差はなんら変わらないばかりか、さらに開くようにできてしまうが、今まで同様大学からインダストリー4.0のようなAI社会を生産する産業にトランジッションすることが可能になる。

★つまり、文科省の計算では、学習指導要領で、全体に≪higher order thinking≫の学びの機会をつくり、それを活用するかどうかは学校に任せる。先述した条件の大学はAIやBIを中心とする高度産業とのギャップをなくそうとするから、入試問題はアドミッションポリシーからいって、≪higher order thinking≫の領域問題が作成される。

★そうなってくると、いずれ他の大学も倣わざるを得ない。そうすると54%弱は、≪higher order thinking≫のスキルをもった人材となり、大量の高度スキルを有した人材が輩出される。フィンランドやシンガポールの教育がすごいといったところで、人口学的には、少子化と言えども日本は圧倒できてしまう。

★問題は、機会は目の前にあるけれど、活用できない環境にある46%強の高校生だ。どう解決すればよいのだろう。そこまでは、文科省自身は考えていない。自己責任以上終了ということになるだろう。

★しかし、広域通信制高校という領域がある。今のところっこでは≪higher order thinking≫の環境にはない。しかし、N学園のように積極的にICTを活用し、遠隔授業が行われるのであれば、地方の高校生も所属できるのである。

★おそらく、広域通信制高校の教育の質は、今後変わる。学習指導要領の範囲の習得を目的としつつ、それはめちゃくちゃ容易に習得できるシステムになっているから、時間のゆとりを生み出し、そこに≪higher order thinking≫というより、まさにクリエイティブな学びを用意して、海外の大学と連携(これもウェブ上で行うだろう)して、21世紀AI社会に備えるだろう。

★さて、それでも十分でない。どうしたらよいのか?それは、NPOの活躍となる。自分で≪higher order thinking≫を学ぶ環境をつくるサポートをする≪higher order thinking≫サポート団体が現れるだろう。

★学校の図書室と自治体の図書館とICTを活用して、行っていける。今までもできたはずではないかと言われるかもしれないが、自分ひとりで継続して学んでいくのはなかなか難しかった。

★しかし、図書はデジタル化が進み、貸し出しも進むから、お金はそれほどかからない。そしてNPO団体はエンジニアリング集団としても今後機能するから、AIによる学びができるようになる。

★AIと自分の好きな本をいっしょに読む。つまり、そのときに≪higher order thinking≫の問いのやり取り=リアル・リフレクションシステムうができるというのがポイントになる。今までは、その問いを教師が投げなければならなかったが、その問いが必ずしも≪higher order thinking≫の領域のものではない場合が多かった。

★その領域から出題したとしても、生徒1人ひとりと≪higher order thinking≫領域の対話をするのはそう易しいことではない。これを実際にやっているのがIB(国際バカロレア)ティーチャーであることを考えれば、いかに難しいかがわかるだろう。

★このNPO団体は、どこから資金調達をするのか?もちろん国や自治体もあるだろうが、これは塾業界による寄付行為で行われるようになるだろう。なんのメリットがあるのか。

★ここから先は、少し恐ろしいから予想するのを控えるが、慧眼の持ち主は、もうわかるだろう。この教育のメガトレンドは、この段階で塾の話がでてきたところで、経済の大変容が同時進行であることが大前提ということが了解できるだろう。

★経済の大変容が加わるということは、教育は世界の大変容ダイナミズムに巻き込まれていることを示唆する。

★2030年教育動向。変わらないかもしれないと思っても、すでに大きなウネリは生まれてしまっている。

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