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2017年大学入試問題の季節【02】 慶応大学医学部の生物の問題のおもしろさ

☆慶応大学医学部の生物の問題は、なかなかおもしろい。光合成は、必ずしも植物だけが行うものではない。光合成細菌が存在する。この両方を比較して相違点と共通点を考えることで、ある仮説が成り立つわけだ。つまり、酸素を発生する光合成は、CO2を分解させるのではなく、H2Oではないのかという仮説。

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☆文章テキスト、ファン・ニールの実験と観察を分析して考えていく問題。大学入試問題の生物の問題としては、難しくない。与えられた情報と条件を整理していけばできてしまう。

☆しかし、光合成をおこなうのが植物だけではないという視点がおもしろい。中学入試の思考力入試で活用できそうだ。すでに2年前麻布の理科の問題で、光の届かない深海で、光合成を行えないにもかかわらず、生物が存在しているということはいかなることかという問題が出題された。光合成に代わる化学合成をするバクテリアの存在が、二枚貝などの栄養源になるという問題。

☆食というエネルギー源の意味を問い直すことは、たんに生物の問題であることを超えて重要な地球システムの問題である。こういうスケールの大きな視野で中高時代の学びを行えるような大学の入試問題やそれを予感させるような中学入試問題を「思考力入試問題」と呼んでいる。

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☆ハマダラカとマラリア原虫の共生関係が人間にマラリアの感染を広げていく問題も出題された。マラリア原虫の遺伝的多様性がいかに手ごわいかということなのだが、このことを通して、国際政治経済における共生と多様性とグローバリゼーションの問題を考えるアナロジーとしても使える。

☆私たちが国際問題を考える時、生物や医療の科学を学んでおくことがいかに重要か。そのことに気づく機会を提供する慶応大学医学部の生物の問題。他の大学の入試問題も、中高生の探究の道を拓く問いを投げかけるものであってほしいものだ。

☆もちろん、同じことが中学入試問題にも期待される。

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