2017年度東京・神奈川中学入試【04】麻布の入試問題 もちろん思考力全開問題
★同作品は昨年3月に光文社から出版されたばかり。ほとんど毎年、新刊本を活用する麻布の国語教師の時代センスはさすが。10,000字強の文章だが、構造は単純明快。物語全体が、なんらかの葛藤のメタファーになっていることは、受験生はすぐに了解できるはず。
★いずれにしてもナラコウエンのシカのようにユデガエルになるのか、森のシカとしてサバイバルは死にもの狂いだけれど、自由を手にするのか、塾歴・学歴社会の中で生き抜いてきた受験生に突き付ける同校の覚悟が興味深い。
★某塾の合格寡占の危機を回避するメッセージでもあり、それゆえ、某塾以外からの受験生も多かったために、出願数が爆発したのかもしれない。
★それはともあれ、算数もおもしろい。
★連立方程式で一発なのだが、受験生のほとんどはそれを使わず、置き換え操作を繰り返し詰めていく。思考コードで言えば、置き換え操作を複数回するのでB2思考力といったところか。
★次の算数の問題は、塾に通わなくても自分で操作を繰り返していけばある程度できる。最終的には複雑になるから、B3思考力というところか。
★いずれにしても、算数というか数学的思考は「置き換え」操作なのだという基本発想が学べる思考力問題。
★上記の慣性の法則に関わる問題は、どうやって解くのだろう。説明せよと言われると超難問だけれど、そこは問われていない。日頃から台車など押して、荷物を崩してしまう失敗経験があるとできるが。。。理科の問題は40点満点で40問だから、1問1点。入学段階では、経験と直感でもよいということか。
★社会の問題は、いつもながら感動もの。田園調布、同潤会アパート、多摩ニュータウンの都市計画の比較スタディ。日本の身近な都市であるが、その背景には、レッチワースのユートピア都市の問題、あるいは江戸の大名庭園をモデルにした、日本の国土計画のガーデンアイランド構想などの文脈がある。最近トレンドのコミュニティ構想も。そして、成長神話の土建国家観の見直しというテーマまで。
★産業、地理学、人口学、環境学、そして制度設計という学際的な問いが立てられ、クリティカルシンキグが要求されている。
★最後は、未来都市を考える一歩前の問題だが、未来を考える場合にも通じるメタ視点をきっちり論述させる。
★多くの中高で都市計画を自治体といっしょにやっていくプログラムがあるが、今回の麻布の問題を考える視点があれば、もっと深まるだろうと、改めて麻布のカリキュラムのすさまじさとそれにチャレンジする受験生に敬意を表したい。
★麻布の学びは、クリエイティブクラスを養成する環境にある。しかし、今までは、その市場や機会がなかった。21世紀社会になって、ようやく麻布の教育の本領発揮の時代を迎えたということではないか。
★それには、塾歴・学歴社会を麻布自らが転換しなければならない。そういう使命が創設者江原素六から脈々と継承されているのだと思う。
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