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2018年中学入試のベクトル【04】 海城と麻布 「世界」を読み解く

☆海城の校長特別補佐中田大成先生から、今年の海城の帰国生入試A方式で出題された海城の社会科の問題と今年の麻布の社会科のものの見方・考え方がシンクロしているというという旨の手紙を頂いた。

◆海城の帰国生入試A方式社会科から

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◆麻布の中学入試社会科から

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☆なんと、多摩ニュータウンのビフォーアフターの2枚の地図もいっしょだし、人口ピラミッドもまとめかたは違うが、問いのねらいは同じである。

☆たしかに、海城と麻布の社会科の先生方はシンクロしている。しかし、それは同じ問題を出題したからということなのではない。

☆両校の問題文章は、違うとはいえ、取り扱っている大テーマは19世紀末から考案されていたイギリスの田園都市レッチワース(田園調布のモデルになったコミュニティ)を起点に世界に広がった持続可能なエコ都市としてのコミュニティから、コミュティの意識が薄れて土建国家的発想で開発された都市の歴史をふりかえり、都市の問題点を見いだし、新しい未来の都市とそこにおけるコミュニティシップとしてのシチズンシップを見通した「世界解読」のものの見方・考え方・認識が同じだということである。

☆しかもこのコミュティシップは、強欲資本主義の成長神話によって破壊してきた本来的な都市の復権というまさに現代的テーマであり、国連が2015年秋に採択した持続可能な開発のグローバルゴールズ17に深くかかわっている世界ビジョンなのである。

☆次期学習指導要領改訂に際し、社会科における近現代史をもっと分厚く扱いたいという議論がなされているが、海城も麻布もさっさと教科書の枠組みを超えて、現代の世界問題への気づきをテーマにしているのである。

☆両校の先生にとっては、なぜ今思考力なのか?については、2020年の大学入試改革で高次思考力が求められるからだとは回答しないだろう。子どもたちにとって、日常の生活の背景に迫っている世界問題の当事者である自分を見つめ、そこから抜け出すことが、同時に世界の問題を解決し、グローバルゴールズを解決することになるというリベラルアーツの現代化の教育実践の帰結に過ぎないのだと。

☆しかしながら、かくして現象と本来性がつながったわけである。この時を、「思考力革命」と言わずして何と言おう。何も哲学に限らず、「社会科」という教科の枠組みの中で、その枠をぶち破る思考力を養うことは可能である。

☆知識がないと授業にならないと「考える授業をしない言い訳」を語りがちな社会科という科目にあって、海城と麻布の社会科の先生は、新たな道を切り拓く善きロールモデルである。

何より、思考力入試だけではなく、2科4科入試の中か、このような思考力型問題が出題されるというのは、2018年中学入試は、本当に大きく変わる予感がする。

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