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2030年教育動向(16)中学受験から中学入試へ

☆2017年度中学入試は、塾業界による学校と生徒/保護者の媒介というシステムが大きく崩れたという印象を強く持った。この塾による「媒介」が、S塾の御三家合格寡占状態になり、中学受験市場が、触媒ではなく、コントロールになってしまったときから、徐々にこのシステムは崩れ始めたのであるが、昨年おおたとしまさ氏が「ルポ塾歴社会」を出版することにより、この中学学受験市場自らの場において明らかになってしまった。

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☆そして、今年1月、香里ヌヴェール学院学院長石川一郎先生が「2020年からの教師問題」で、中学受験市場が本来の自由な意思決定機能を喪失したにもかかわらず、その影響に右顧左眄している20世紀型教師の鎮魂歌を赤裸々に謳った。

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☆ある意味、両者は塾側のタブー、教師側のタブーを暴露してしまったわけだ。しかも2011年発足当時、相当愚かだと硬直化した中学受験市場から揶揄された21世紀型教育機構(当時「21世紀型教育を創る会」)の存在は、そのメンバー校である三田国際学園の大躍進という動かしがたい事実によって無視できなくなってしまった。

☆この機構は、自ら中学入試市場を創ることを毎年カンファランスやセミナーで宣言した。具体的には、受験市場では従来型の塾ではお金にならないから受け入れない「思考力入試」や「英語入試」をメンバー校全体でやりはじめた。

☆当然、中学受験市場からの反発はあった。しかし、2020年大学入試改革が「深い思考力」と「4技能英語」をぶち上げたものだから、ここを否定することはできなかった。思考力入試は個別塾が指導するようになるし、英語塾は市場拡大した。

☆特に昨年、21世紀型教育機構の理事でもある石川一郎先生が、「2020年の大学入試問題」を世に出し、賛否両論という嵐を巻き起こし重版を重ねてから、メディアでも中学入試における21世紀型教育を気にしないわけにはいかなくなった。

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☆そして、決定的なのは、首都圏模試センターが、学校と生徒/保護者との中立的なエージェントになるために、一次元的偏差値から多次元偏差値である「思考コード」に基づく立体偏差値なるものを世に出したことだ。

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☆2020年大学入試改革は、学習指導要領改訂も併行して行っているわけであるが、そこには、IBやOECD/PISA、Aレベル、APなどの欧米の新しい学習システムの見識が注がれている。その象徴がアクティブ・ラーニング。これも私立中高一貫校に広まったが、その根底にはルーブリックを生み出す思考コード(メタルーブリック)の存在が必要だった。

☆首都圏模試センターと21世紀型教育機構はそこで共通項を見いだしたが、首都圏模試センターは、特定のグループを応援することはなく、同じようなビジョンやコンセプトと親和性のある学校の情報を収集し、発信した。

☆思考コードは首都圏模試センターの山下一氏が中心となり、新しい教育のカタチの情報収集・分析・編集・発信は北一成氏が中心となって進めた。それがNHKや朝日新聞など各種メディアが「思考力」「英語力」に集中して取材・報道することを決定づけた。

☆これによって、ICTやプログラミング教育を行う塾が学習センターとして中学受験市場に参入するようになるが、この新しい塾は、学校と生徒/保護者を首都圏模試センター同様、中立にサポートする触媒としての機能を果たし始めている。

☆従来の中学受験市場は、学校の入試問題にまで介入した。だから記述試験や面接をやらなくなる傾向が続いた。しかし、21世紀型教育機構の思考力入試は、ディスカッションはあるはプレゼンはあるは・・・面接以上だ。英語入試も英語によるインタビューやエッセイまである。同機構以外に、新しい教育のカタチを模索する学校に定着したのも2017年度中学入試の大きな特色だ。しかも首都圏に限らず、関西や九州にまで波及している。

☆かつてなら、そんな入試は受けさせないということになっただろうが、小学校におけるアクティブラーニングの進行の速さと英語の教科化が進み、知識・理解レベルの思考をはみ出てしまった。世にいう高次思考≪higher order thinking≫を体験し始めたのである。

☆この高次思考は、2020年大学入試改革や当然その改革が参考にしたIBなどの世界標準の思考力である。このことを強烈に意識しなくても、iPadやプログラミングを活用して塾を経営する若き起業家や中高時代に国際数学オリンピックで活躍して「思考力元年」を謳う塾の代表は、すでに≪higher order thinking≫がインプットされているから、当然の流れだと抵抗なく新しい学習プラットフォームを生み出していく。

☆そして、21世紀型教育を全国の私立学校に広めるために、全国私学のセミナーで、21世紀型教育を唱え、ワークショップまで企画実施している工学院の平方邦行校長は、塾や模擬試験会社のビジョンにのっかるのではなく、自らの学校で実践することを積極的に行った。

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☆いわば21世紀型教育研修の内製実施であり、多くのSGT(スーパーグローバル教師)を育成。そして、その流れが学習する組織と化すると、国内外問わず、外部からSGTが集まってきて、学内は21世紀型教育の先進校にならざるを得ないというGrowth mindsetが膨らんだ。

☆そして、同校の高橋一也教頭は、世界のグローバル教師トップ10入りまでして、授業の傍ら、全国で講演や模擬授業を依頼されるようになっている。シンガポールやイギリスのケンブリッジにも招かれ講演をしているほどだ。

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☆画期的なのは、高橋一也先生が、昨年学校側あるいは教師自身の立場から21世紀型教育を論じ、方法を開陳したことだ。これによって、中学受験市場からのコントロールから学校が自由になる決定的な時代が到来した。

☆私立学校は教育の自由だけではなく経営の自由も持続可能にしなければならない。この自由をサポートできる模擬試験会社と塾こそが、ステイクホルダーとして学校とコラボレーション出来る時代がやってきたのである。

☆毎年、中学入試当日、いくつかの学校に取材に行っているが、昨年から、塾関係者に声をかけられたり、保護者に声をかけられることが多くなった。特に保護者は、私は塾を経営していないから、そのとき初めてお会いする。本ブログ「ホンマノオト」のユーザーだったり首都圏模試の保護者会でスピーチを聞いてくださった保護者である。

☆教育の自由、経営の自由が活況を帯びる市場のことを「中学入試市場」とあえて呼びたい。学校の教育の顔である入試問題をコントロールしようとしたり、生徒募集方法に圧力をかけたりする中学受験市場ときっちり線を引きたいからである。

☆現状塾歴社会の土台である中学受験市場が圧倒的である。しかし、パラドキシカルであるが、中学入試市場はその中学受験市場から生まれるのである。生徒/保護者が目先の大学合格実績や一次元偏差値だけではなく、子どもの未来を見つめ、子どもの才能を発掘しようとして、新しい情報を収集していけば、「中学入試市場」に立つことができる。

☆2018年度から、この中学入試市場の勢力が増してくると期待している。

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