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海城学園の思考力入試 リベラルアーツ型

☆海城学園は思考力入試を実施していただろうか?とお思いの方も多いだろう。名称は、「平成29年度 帰国生入試 問題 総合」で、帰国生入試の問題。しかし、これがまぎれもなく真正「思考力入試問題」なのである。

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☆同校のサイトでは、この問題に関して次のように控えめに説明している。

「総合」の問題はOECD(経済協力開発機構)が参加国の15歳の生徒を対象に3年ごとに実施しているPISA(生徒の学習到達度調査)の「読解力」テストに準拠したものとなっています。その設問は、原則として1 情報の取り出し、2 解釈、3 熟考評価・意見表明の能 力を測るものからなります。なお、課題文については、人文・社会科学系と自然科学系の双方から出題されます。

☆要するに、知識・理解→応用・論理的思考→批判的思考・創造的思考というブルーム型タキソノミーの思考の段階を踏まえた、思考力入試なのである。そして、この説明が「控えめ」であると述べたのは、全くレベルが違い、問題1(人文・社会科学系問題)などは、4つある問いのうち、問1はたしかに「知識・理解」の思考領域だが、問2と3は、はやくもクリティカルシンキング。問い4は、クリエイティブシンキングを大いに活用する問い。

☆OECD/PISAの問題は易しすぎるから、それと比べるとなかなかの問題。むしろ問4などは、東大の帰国生入試問題と同構造。もちろん12歳の男子が考える内容でかまわない。最先端科学もその構造は子どもにも理解できるようにプログラムできるというのが、リベラルアーツの現代化教育。まさに海城学園には、このような知の世界が広がっているのだ。

☆しかも、素材は、イサム・ノグチの芸術作品「モエレ沼公園」をめぐる芸術作品としての自由と公共施設としての規制の葛藤が描かれている。イサム・ノグチはマスター・プランを残して他界したから、その意図をめぐり、芸術家の意志を継承することの難しさが、自治体内で葛藤を生んだのである。

☆イサム・ノグチは、パリのユネスコ本部でもアートとして作庭しているし、カリフォルニア州でも同じように作庭しているが、モエレ沼は規模が違う。北海道札幌の地にふさわしい広さで、大地と空をつなぐ彫刻群がすばらしい。ただし、子どもがやってきて広がる大地を転げまわり、好奇心をふくらませながら彫刻群で遊び、プレイリーマウンテンを駆け上り、転げまわり・・・。そんなシーンそのものがイサム・ノグチにとってアート作品なのだ。

☆そして、子どもによって遊びの軌跡は目まぐるしく変わるから、これが完成品だというわけにはいかない。モエレ沼の輪郭は、空中からみるとはっきりわかるが、彼の巨大な彫刻「エナジー・ヴォイド」のカタチをしている。アートは常に空虚であり、そこに子どもがかかわることによって一瞬一瞬完成する。瞬間の永遠こそ一回限りのアート作品であるから、連続的には芸術は常に未来に投げられている。

☆そんなイサム・ノグチのアートへの思いを、おそらく多くの帰国生は現地に行ったことがないだろうから、文章と写真だけから想像し、クリティカルにクリエイティブに言語化していく。

☆入試問題は学校の顔であるとは、改めて納得。海城のインプロドラマエデュケーションも美術の油絵の制作の時に感じる彫刻のごとき油絵の具のボリュームに一瞬一瞬にクリエイティビティの稲妻がはしる。海城学園の学びの空間、それは物理的なキャンパス空間だけではなく、脳内空間も含めてだが、イサム・ノグチの意図したアート・ランドスケープそのものである。

☆もちろん、このアートは、芸術という意味だけではなく、「世界の内に顕れない世界をデザインする」創造的思考を育成するリベラルアーツの現代化教育を含んでいる。

☆この発想は、実は現代の政治経済、哲学、社会学、数学、そしてコンピュータサイエンスにおいて共通する最先端の発想。ポスト現代思想とも呼ばれている。真正思考力入試とは、問題を作る教師が、このように知の最前線で活動していなければならない。

☆目の前の世界を「知識・理解」の思考の枠で切り取っているような20世紀型教育では、起業家精神をもったグローバルリーダーは生まれない。グローバルゴールズを達成できるグローバルシチズンは育たない。しかし、海城学園はそこに挑戦している。なんてすばらしいのだろう。おそらく今の日本教育の枠にいる人がこの入試問題をみても、ピンとこないだろう。

☆それにしても、コスモポリタンだったイサム・ノグチの生き様を引き合いに出すとは、帰国生入試としても傑出していると言えよう。

☆ところで、聖学院の今年ののミャンマーの写真から創造的思考力を生徒が展開していく流れとも親和性がある。海城と聖学院。併願校として位置付けられる日も近い。

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