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海城学園が創出 中学入試市場 リベラルアーツの現代化と思考力入試

☆「中学受験市場」は凍てついているかもしれないが、「中学入試市場」は活況を帯びているし、ますます拡大する。「中学受験市場」は少子高齢化によって、S塾の難関校合格独占化によって、衰退するだろう。これが私のいう「御三家のおわり」である。

☆だからといって、開成学園や麻布学園や武蔵学園が終わるわけではない。海城がなかば意図しつつなかば意図しないで(健全な「市場」というものうはそういうものだ)新しく創出した「中学入試市場」で、自由を獲得して大いに活躍できるだろう。ただし、そのときはもはや「御三家」という称号は捨てなければならない。

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☆≪私学の系譜≫として内村鑑三のように「高邁な勇気ある精神」を持ってその称号を捨て本来の教育の自由と経営の自由を回復してしてほしいものである。

☆さて、海城の「平成29年度 帰国生入試 問題 総合」で、帰国生入試の問題」という名のオーセンティックな思考力入試であるが、自然科学系の2つ目の問題が、これまた傑出している。リベラルアーツの7科のうちの修辞学を現代に呼び覚ましている。

☆ロボットアームと人間の腕を比較して、その共通点を見いだし、なぜロッボトアームは人間の腕のアナロジー(修辞学でお得意のスキル)になっているかを、3D空間の条件を考えながる思索する問題がでている。クリティカル&クリエイティブシンキングがまずあって、それを論理的に整理し表現していくことになる。

☆クリティカル&クリエイティブシンキング→ロジカルシンキングの順番で考える。全体を俯瞰し、トピックに収束する。ここにすでにオーセンティックな学びがある。従来の日本の教育は知識・理解を十全にやってから応用・論理へと進む。いつまでたっても、全体が見えない。全体が見えないから、目先のことにこだわる習性ができてしまっている。つまり、教育そのものがFixed Mindsetをつくりあげている。

☆日本の15歳は、世界的に自己肯定感が低い、もっと心を開いてとOECD/PISAの結果をたてにとって説いたところで、教育システムがそうなっているのだ。そこを変えなくてどうする。というわけで、文科省はアクティブラーニング!深い学び!と頑張っているわけである。

☆それはともかく、国際宇宙ステーションのロボットアームが、タカアシガニに似ているのはなぜかという問題も実におもしろい。宇宙空間と水中の重力や浮力の諸関係を考えていく。「コンペア・コントラスト」という初期アナロジースキルを活用しながら考えていく。

☆そして圧巻なのは最終問題。「人間が作った物」と「動物」で類似しているもの、。「人間が作った物」と「植物」で類似しているものをそれぞれ挙げて、理由も説明する。

☆ここにはAIや人工光合成の話が想定されている未来型の問題である。もちろん、他のもので構わないわけだが、実にワクワクするような問題ではないだろうか。そして、この問題には、幾何や重力場、人間とは何かという数学や物理空間、哲学の思考のベースがある。これをリベラルアーツの現代化と言わずして何と言えばよいのだろうか。

☆さて、こういうオーセンティックな思考力入試が、広がっていくことが「中学入試市場」を活性化することであることは間違いない。もちろん、一方で「知識・理解・応用」という低次思考≪Lower order thinkingも重要だ。しかし、これからは海城の問題のように高次思考≪Higher order thinking≫もどんどんでてくる。

☆今まではLOTの一次元偏差値だけで入試は行われてきた。しかし、今後はHOTも加わり多次元偏差値で入試が行われる。海城、三田国際、工学院、かえつ有明、聖学院のようにHOTレベルのオーセンティックな思考力入試を行っているところもあるが、桜蔭、開成、筑駒のようにHOTといえどもクリティカルシンキング、クリエイティブシンキングの占める割合が少ないところもある。

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☆もちろん、A校のように、一次元偏差値では高いが、多次元偏差値になると低いというギャップがある学校もある。中学受験市場(一次元偏差値市場)から中学入試市場(多次元偏差値市場)へシフトしつつあるのが2017年度中学入試の大きな特色であるが、麻布、武蔵、海城はポジショニングがどちらにしても変わらない。こういう学校を普遍主義教育を行っている学校ということだろう。その中でも海城はリベラルアーツの現代化という21世紀型教育を鮮明に行ったわけだ。

☆また、先鋭的な21世紀型教育を行っている三田国際、工学院、聖学院、独自の新しい教育を実践しているかえつ有明は、一次元偏差値では低いけれど、多次元偏差値でははねあがる。何せ、いまのところ思考コード(メタルーブリック・知のコード)が貫徹しているという意味でのオーセンティックな思考力入試を実施しているところはまだまだ少ないということもある。

田国際・工学院・聖学院の同様、21世紀型教育機構のメンバー校も着々と思考力入試と思考コードを有機的につなぎ、ふだんの授業にも浸透させつつあるから、中学入試市場では同じポジショニングになる。 

☆中でも、三田国際は、一次元偏差値でも多次元偏差値でも海城と同じように高いポジショニングを獲得するようになる日も近い。他の21世紀型教育機構のメンバー校も牽引されるだろう。

☆おそらく21世紀型教育機構の存在は、この2つの市場の差異を見える化したし、海城が御三家意識から自ら開放したことを映しだす鏡になったことは否めないだろう。

☆このような図式によって、思考力入試が才能発掘テストであるという意味は、偏差値なんて関係ないという精神主義的な表現ではなく、一次元偏差値はそんなに高くなくても、多次元偏差値で高い生徒の機会が広がったということを意味する。

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☆そして、このパラダイムシフトに気づいた私学は中学入試市場の●印のポジションに収束するだろう。ここで、日本の子どもたちの未来が開ける準備ができる。表記を私学とせずに≪私学の系譜≫としたのは、私立学校だけではなく、もともと≪私学の系譜≫は、松下村塾のような私塾がモデルだから、実は≪官学の系譜≫も≪私学の系譜≫も根っこは同じなのである。ある意味、私立学校も公立学校も今一度明治時代の出発当初にあったもう一つの近代化路線=19世紀末のユートピア発想に立ち戻ることになればという思いがある。

☆この19世紀末のユートピアこそ、当時は時代制約的で、社会主義的発想だったが、実は今求められている強欲資本主義ではない新しいカタチの資本主義として脱構築されるだろう。

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☆この19世紀末ユートピアが新しいカタチの資本主義に脱構築されるには、上記のような書籍に象徴される最前線の科学や思想、教育が必要である。新たな世界コードと思考コードの組み立てが大事であり、それがリベラルアーツの現代化なのである。

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☆そして、この新しいカタチの民主主義的資本主義の社会を勝ち得る闘争の物語が、ミヒャエル・エンデの「物語」に象徴されているのだと私は思う。

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