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2018年中学入試のベクトル【33】 中学入試市場 思考論的転回へ

☆各学校、各メディア、各教育関係産業、安田教育研究所など一斉に「21世紀型教育」という言葉に注目し始めた。昨年までは、21世紀型教育という言葉より、21世紀型能力とか21世紀型スキルという言葉の方が使われていたと思うが、2018年中学入試に向けて、「21世紀型教育」がキーワードになるのかもしれない。

☆そして、森上教育研究所が、「思考力入試」という言葉を「適性検査型入試」の前に押し出してきた。家庭で「対話型学習」を進める格好の問題ということだろうか。いずれにしても「思考力入試」は「21世紀型教育」のアドミッションポリシーの象徴的存在であるから、この「21世紀型教育」という言葉がキーワードになるのはどうやら間違いなさそうだ。

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(実体論的考え方と経験主義的考えを乗り越える新思考力入試について語り合う平方校長と先生方。太田先生のチームコーチング研修を終えての振り返りで。)

☆とにも、さらに「思考力」を前面に打ち出したのはさすがである。しかし、保護者向けのメッセージであるから、対話と言っても、「日常言語」が活用される「カンバセーション」の次元で「対話型学習」を設定している。森上氏は、教育社会学的な教養の持ち主でもあるから、ここは意識して寸止めで論を展開したのだろう。

☆本ブログは保護者対象専用ページではないので、せっかくなので、その先の能書きをメモしてみよう。「思考力入試」そのものも「対話型思考」なのであるが、そこでの「対話」は「カンバセーション」から始まり、ある時点で急激に「ダイアローグ」の上昇気流に乗るドラゴン型思考である。今、香里ヌベール学院の石川学院長と(株)スタディエクステンション代表鈴木氏と私とで、「ドラゴン計画」を立てているのは、この「ドラゴン型思考」を基盤としようと言うことなのである。

☆それはさておき、森上氏は、ダイアローグ型学習は塾や学校の説明会の体験学習でということだろう。しかし、ここには実に深い問題が横たわっている。「カンバセーション」と「ダイアローグ」の次元を分けて、前者を低次思考、後者を高次思考と分ける考え方は、ドイツ―フランス系の実体論主義的考え方で、あまり区別をしないのが、英米系の経験主義的考え方。

☆この違いは、プラトンvsアリストテレス、トマス・アクイナスvsバークリー、啓蒙主義vs進化論、歴史主義的政治経済vs数理主義的政治経済という普遍論争を生んでいおり、それはそのまま教育にもあてはまる。もちろん、実際には、こんなざっくり割り切れないのだが、元をたどればそういう関係が見え隠れしている。

☆2020年大学入試改革で、「カンバセーション」から「ダイアローグ」へという発想が、普遍的に見えるのは、この改革と同時に、文科省がIB(国際バカロレア)を積極的に現場に導入する働きかけをしたからだ。

☆IBの根っこは、ドイツ系教育哲学がもともとベースであるからなのだ。また≪私学の系譜≫のルーツは、ホッブスからルソー、カント、ヘーゲルにいたる啓蒙思想にあるからだ。

☆臨教審あたりから、特に1989年以降から21世紀前夜まで、実体論は、文科省の中では、幅を利かすことがなかった。それは、当時の東大法学部の力学が、経験主義に足場を置いた分析哲学による法学的考え方が主流だったからだ。

☆現在は、そもそも法学部の中で、そのようなイデオロギー闘争は表立っていないから、偏りがないし、ドイツ―フランスの若き哲学者が新実体論を展開しているから、多様化してしまっている分析哲学的な発想は、以前のような勢いは今のところない。

☆もちろん、これらの流れが関係総体として組み合わさって、「思考論転回」となっているのだろう。2018年中学入試市場をめぐって論じられていることは、このニッチ市場で繰り展げられていることにすぎないが、その背景には、結構歴史的水脈がコンコンと流れているのである。

☆6月、入試要項の変更が公表される季節。サプライズ入試改革が続々発表されるだろうが、その通奏低音は「思考論的転回」の知の響きである。

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