恵泉 本気度が違う 希望の私学
☆その日は、新学期が始まる直前に、午前午後と終日教員研修を行う日だった。加藤校長は、「聖書」コリント人への第二の手紙 第12章から次のことばを引いた。
<弱さと、侮辱と、危機と、迫害と、行き詰まりとに甘んじよう。なぜなら、わたしが弱い時にこそ、わたしは強いからである。>
☆そして、「行き詰まり」の今日、それを感じている弱い私達こそ強くなれるのだという気持ちを共有した。そして、「行き詰まり」は、乗り越えたと思ったらまたふたびやってくるだろう。そのたびに、私たちは弱さを知り、再び乗り越えようと。
(ワークショップでは、先生方の柔らかい丁寧なコミュニケーションが響いていた。)
☆校長の話を聞きながら、変わらないものと変わるものの意味が少しわかったような気がした。同第12章に、こういう一節がある。
<高慢にならないように、わたしの肉体に一つのとげが与えられた。>
☆私たちが「行き詰る」とき、それはたいてい、自分たちが高慢なために争い、ねたみ、怒り、党派心、そしり、ざんげん、高慢、騒乱などを引き起こしているときだ。これも同第12章に刻まれているのだが、もし弱さというトゲを意識できなくなったら、いつのまにか高慢になっている自分に気づかないだろう。
(議論が自然な感覚で進んだ。互いの自己肯定感を尊重していた。)
☆そのとき、ルサンチマンは席巻する。だから、恵泉にとって変わらないものとは物質的なものではなく、高慢にならないように弱さを意識するという精神なのだと。この精神を大事にするから、その弱さを意識する、つまりリフレクションする環境としてより精度の高いものを創り出すのは大切なことなのだ。
☆時の流れと共にその環境は変わるものだ。しかし、その変化は、高慢な自分に陥ったときに、そこから立ちなおることができるように弱さを認知するという意味での変わらぬ力を生み出すものなのであると。
(想いを形にする。つくることに対する旺盛な好奇心。純粋な学びへの心性が広がった。)
☆まさに、恵泉は、今組織論でも一目置かれている自己変容組織だ。ロバート・キーガンによると、組織は、環境順応型知性によっても形成されるし、自己主導型知性によっても形成される。
☆恵泉は、自己変容型知性によって形成されている。真実を見つめる目が高慢に代表されるルサンチマンに目隠しされることを払拭できる知性。
(表現力と傾聴力。学びの型が形成されていることを示すシーン)
☆環境順応型知性は、中高段階では「知識・理解」に対応し、自己主導型知性は「応用・論理」に対応する。そして自己変容型知性は「クリティカルでクリエイティブな思考」に対応するだろう。
☆そのことは、礼拝のあとに続いた2つの研修プログラムを見学していて実感した。この2つのプログラムは、2つの別々の組織から講師を招いて行われた。おそらく、自分たちの目が真実を見つめられているかどうかを再確認するためだっただろうし、世の中がどのくらい行き詰まり、それをどのように乗り越えようとしているのか認識し、恵泉独自の行きづまりを乗り越える方法をさらにブラッシュアップさせようということだったのだと思う。
(恵泉のキャンパスは、気づきのための空間デザインがされている。)
☆このような外部のものの見方や考え方に対する寛容な精神があること自体、恵泉は自己変容型知性による組織が形成されているということだろう。
☆礼拝と講演のあとは、グレイスホールから隣接の大会議室に移動して、「新しい学力について」議論するワークショップを行った。学力の3要素の学校教育法における根拠、第4次産業革命という時代にマッチした法解釈など基礎的な背景を確認するところから始まった。
(各チームのプレゼンシートを付箋紙よろしく、即興的に分類していく教師。ルーブリックや思考コードの知の枠組みを共有していく過程。)
☆戦後教育基本法形成時の教育刷新委員の1人に河井道がいた。恵泉の創設者である。教育基本法は2006年に改正されたが、その中に今も<ある=BE>河井道の精神を共有するというのは、ルサンチマンの嵐が荒れ狂う現代にあって真実の目を失わない行為である。
☆河井道のマイランターンは、その目に光を示し続けていると実感した。
☆そして、レゴで、自分たちの想いを形にしたり、新しい教育や学力について大いに議論したり、オープンマインドで好奇心旺盛な姿に、教育へのパッションを感じないわかにはいかなかった。
☆次期改訂学習指導要領で新しい学力の基盤となる「主体的・対話的で深い学び」について、問い返し、ルーブリックに対する基本的なものの見方や考え方が自分たちの内側に暗黙知としてすでにあることを可視化したりしていった。
☆そのようなワークショップで示された恵泉の自己変容型知性の塊である先生方の様子には、ふだんの授業活動を始めとする教育活動が反映していることを推測することはもはや難くなかった。
☆そして、お昼をとる間もあまりないまま、午後のプログラムに突入していった。そこでは、自分たちだけで、振り返り、夏以降のみならず、今後の恵泉ビジョンや真実を見つめる目を一層輝かせる教育イノベーションについて議論され共感され共有されていったにちがいない。
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