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学校選択の目【41】工学院の教師力 学校選択の決め手は結局教師力(4)

☆工学院の挑戦はC1言語(>C1英語)である。英語に限らず、日本語(国語)やクラスによっては中国語も、市民社会レベルで活用でき、学問の世界のレベルで活用でき、国際社会のレベルで活用できるようにする。CEFR基準でB2までだと、英語をはじめ言語は意思疎通の道具ということになるが、私たちが日本語で議論したり思索したりする場合、言語道具説的な考え方はしない。

☆C1というのは、それと同じ感覚のレベル。思考と言語と存在は混然一体となっている。この状況でなければ、議論はできないし、互いに受け入れられるようにはならないだろう。

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☆毎週1日は、同校高1のハイブリッドインタークラスの生徒は新宿キャンパスで学ぶ。英語、数学、中国語、高大連携などのプログラムの環境が設定されている。
 
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☆このクラスの担任の石坂先生は、終日生徒と共にする。高大連携以外は、オールイングリッシュなので、英語の教師でもある石坂先生がサポートしつつ、ファシリテートしつつ。
 
☆英語の授業は、ケンブリッジ大学で哲学を研究していたアレックス先生が担当なだけに、石坂先生のサポートは絶大。
 
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☆平均するとCEFR基準でB1はクリアしているクラスだが、まだ全員がB2、C1のレベルではない。そうすると、アレックス先生の哲学を素材とした授業を、独り立ちしてオールイングリッシュで通り抜けるのはまだまだ。そこで、石坂先生の手を放しながらも、絶妙の距離感でサポートすることが必要になる。
 
☆私が見学に訪れたときは、ちょうどディベートの準備をしているところだった。素材は、ギリシアの長編叙事詩「オデュッセイア」から。オデュッセウスが、自分の息子を彼に殺された父親ポセイドンの恨みをかって闘っている場面(かどうかは定かではないが、たぶん)。
 
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☆嵐の中を船がもみくちゃにされ、そこをどう乗り切るか。キャプテンの指示に従うか、クルーがアイデアを出し合うか、キャプテン側とクルー側に分かれてディベートをするという。そのための準備として、チームごと戦略をたてていた。
 
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☆高校カリキュラム改革のマネージャー岡部先生(英語科教諭)も、この授業はいっしょにサポートしているということだった。そこで、教養と英語の両方を学ぶチャンスをなぜ作ったのかと尋ねてみた。
現状の国内の大学受験のための英語であれば、おそらくこのクラスの生徒は、クリアしている生徒が多いし、早晩みなクリアしてしまう。しかし、彼らの目指す世界は、もう少し広い。それが海外の大学であるかどうかは、あまり問題ではない。2030年には、教育インバウンドも進み、海外がグローバルで、日本がローカルのような幻想は消えている。
 
しかし、今の日本の英語教育だと、その状況に対応できる言語能力を身に着けることはできない可能性が高い。そのとき、彼らは海外からも国内からもそのような状況を解決するリーダーになっているだろう。そうなってほしいと思う。
 
自分自身米国の大学に留学していた時、講義やディスカッションは苦労した。英語のスキルだけでは、足りなかった。教養やGrowth Mindsetを自ら行って、巻き込んでいく力も必要。だから、アレックス先生のような教養、英語、チームワークが一体となった授業は必ずどこかで役に立つと確信している。
☆と教えてくれた。特に岡部先生は、社会学がメジャーで、エスノメソドロジーを学んでいたから、コミュニケーション学と目の前のコミュニケーションが行われているシステムフレームを見破る複眼思考が凄すぎる。学問というのはメタ認知が必要だが、エスノメソドロジーは、そのメタ認知が構成される組織やシステムのフレームを見破るメタ・メタ認知の次元。
 
☆対話の途中で、岡部先生がベタな日常レベルで話しているのか、メタレベルで俯瞰しているのか、メタ・メタ認知レベルで脱構築の話をしているのか、気を抜いていると、追いつけなくなる。ちょっと待ってくださいと何度も聞き返さなければならない。
 
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☆しかし、改革とはそういう次元の往復だし、そのスピードは加速していくものだ。そんなに数は多くないが、海外の教育や建築などの領域の革新者と話したりしたことがあるが、次元を往復しながら話していく感覚は、岡部先生とシンクロするものがある。
 
☆逆に改革が進まない学校経営者と話をすると、ベタ領域から一歩も出ないで話しているケースがほとんど。目の前の事象にFixed Mindsetされている。
 
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☆一方、工学院の先生方は、それぞれ個性があって違うけれど、私が出会った先生方は、この次元をワープしながら、現実をどうとらえるか、変えるかを話すことができる人材である。
 
☆今必要な教師力とは、キャリアやスキルはもちろん役に立つのだろうけれど、最重要なのは認知のレベルを往復できる力だ。多角的といっても、同一次元の枠の中でものの見方を変える程度のレベルの話では、どうやらなさそうである。
 
 

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