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学校選択の目【37】 聖学院と女子聖学院 コラボ研究会(2)

☆授業デザイン研究会の第2ステージは、女子聖学院の加納先生の英語の授業のスクライビング。加納先生が、5時間の授業のストーリーを語り、聖学院の井上先生がスクライブしていく。
 
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☆素材は、フォトジャーナリストの吉田ルイ子さんの写真の美についての英文。英文に沿って、写真をスライドで映しながら、加納先生はプレゼン。
 
☆吉田ルイ子さんは、人権や差別、戦争に対しリベラルな論陣をはったスーザン・ソンタグと同時代人。ハーレムの写真を撮っていた吉田ルイ子さんとソンタグはどこかで交差していたかもしれない。
 
☆いずれにしても、その素材文の広がりは、尋常ではない。間違えればイデオロギッシュな授業になるスリリングな素材。でも英語の授業にもかかわらず、時代背景や価値の違いなど、生徒自身のものの見方を相対化できる、聖学院のメタルーブリックの用語でいえば、自己開示できる状況をつくっているから大丈夫。
 
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☆一般に、そのようなシーンを写真家が撮る場合、恐怖をあおるような写真が多いが、吉田ルイ子さんは、そのような中で愛情を忘れていない母や子供の様子を撮り続けた。そんな内容の文章だったと思う。
☆スーザン・ソンタグだったら、プラトンの洞窟に閉じ込めがちな写真の世界を解放する吉田ルイ子さんの姿勢を称えたかもしれない。
 
☆しかしながら、英語の授業なのである。だから、単語や文法の学びもするし、リスニングやリーディング、ライティング、プレゼンなど4技能の学びもするが、それが統合されていて、インプット―インテーク―アウトプットという思考とコミュニケーションの連なる授業になっている。
 
☆そういう加納先生の授業を、井上先生がリフレクションして、ホワイトボード1枚にフローチャート化して、やはりプレゼンする。加納先生は自分の授業のストーリーや生徒にアハ体験させる仕掛けなどが、他者に伝わっているかどうか確認ができる。
 
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☆しかし、それだけではない。3つのチームが30秒ずつ順番に井上先生の書いたホワイトボードに、メタルーブリックの能力項目を書き込んでいく。1つのチームが30秒で書き込んでいる間、ほかの2チームは、自分たちは何を書き込むのか考えねばならない。3回転くらいするから、結局みんなで4.5分考え、それをシェアリングすることになる。
 
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☆そんな感じで、しかし、だいたい分析は終わる。加納先生自身が意図していない仕掛けもあっただろうし、聖学院のメタルーブリックの普遍性も証明できただろう。足りないところは復元すればよいだけだ。
 
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☆そして、最初にFacetingしたホワイトボードに戻り、それぞれのチームの絵に、加納先生の授業を対照して、どれくらい授業と絵の相関性があるのか30秒リフレクション。精神型と実現型の絵では、100%。知識型では、当然5時間分の授業だから100%ではなく、60%対応しているとなった。
 
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☆こうして、授業を互いに複眼的にシェアすることによって、いろいろな気づきが生まれ、さらなる授業デザインへと創発されていく研究会。
 
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☆第3ステージは、聖学院の玉木先生の物理の授業。3ポイントシュートの投射角度や速度、距離などの関係を考えていく授業。第2ステージと同じようにスクライブしていく。
 
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☆物理の授業というと、計算だけしているようにみえるかもしれないが、実際のバスケット体験を授業に埋め込むなどして、いかに世界を読み解くうえで大切な計算なのかということを共有しようと玉木先生が創意工夫しているかを参加した先生方も共有できた。
 
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☆しかしなが、英語は壮大な歴史的文脈がったが、教科の性格上、物理は引き算の美学。しかし、中には、このシンプルな抽象的世界は苦手な生徒もいる。そこで、伊藤豊先生(当日は沖縄に行っていたのだが)が大切にしている≪憧れの最近接発達領域≫を各チームで議論し合った。そして、見事に多角的にアイデアがでてきた。
 
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☆具体的にでてきたら今度は抽象的に置き換える。各チームのアイデアに名前をつけることにした。シフトとアプライと比較という名づけがでてきた。そして、この3つの視点は加納先生の授業にも適用できるかどう確認。できると。
 
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☆最後に、すると、今回の英語や物理の授業に、このようなシフトとアプライと比較を掛け合わせると、その授業はさらにどうなっていくのか、各チームで議論。「視野を広げる」「クリエイティビティ」「思考の立体化」というキーフレーズが抽出。
 
☆聖学院と女子聖学院の授業に生徒が参加すると、視野が広がり、クリエイティビティが豊かになり、思考の立体化ができるようになる。授業の学びそのものが楽しい学校!!ということではないか。
 
☆そのような学校こそ、子供が学びたい場所だろう。精神と知識と実現を統合するSomethingはまだ定かではない。しかし、それは在るという確信を共有できた研究会になったのではないだろうか。
 

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