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学校選択の目【38】 聖学院と女子聖学院 コラボ研究会(補説)

☆研究会終了後、少し数学科の主任の本橋先生と対話をした。3ポイントシュートの話と数学の関数の話。なぜ統合されないのか。数学の学びと物理は本来結びついてよさそうなのに。

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☆本橋先生によると、柔らかい数学と古典数学の世界をきちんと学ぶ時間が必要だということだ。本橋先生は、算数ができても、中学に入って数学が苦手になる生徒もいると。それは、算数は数学を数学を使わないで解きやすさで解く習慣がついている可能性があるからだ。
 
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☆だから、入学前に思考力セミナーで柔らかい数学であるトポロジーという現代数学体験を設けているという。
 
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(図はWikipediaから)
 
☆トポロジーとは、たとえば、マグカップとドーナツが同じだと考ええるにはいかにしたら可能かという話なのだが、この考え方が多くのノーベル化学賞を生んでいる。柔らかい数学によって、面積図だとか線分図とか、等積変形だとか使っていたものを、関数概念に置き換えるジャンプのトリガーとするというのである。
 
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☆よくあるこんな算数の問題も、トポロジー変換を体験していたら、なんてことはない。つまり、本橋先生は、等積変形の背景にある数学のものの見方を隠しておいて、問題をつくってできたかできないかを評価するのは、本来フェアでないし、意味があるのかとずっと自問自答してきた。
 
Kanazawa
 
(金沢工業大学ライブラリーセンター所蔵)
 
☆しかし、この統合的なというか原理的なことは、中高の数学においては、もっと大変なことになっていて、分断が起きていると。本来、数学は世界を語る哲学的原理で、物理的法則と同じ領域で語られてきた。ニュートンのプリンキピアはその集大成だし、その象徴的存在。
 
☆数学的関数概念にforceを加えて論じているのがニュートンである。微積分も、一次関数、二次関数など関数関係を包括するものなのに、一次関数、二次関数、微積は全部バラバラに教えられる。数学ができる生徒は、包括的なものだと、地頭で自然と結びつけられるが、そうでない生徒の方が多い。
 
☆それでいながら、グローバルゴールズに向かって、世界問題を解決しようと頑張っている。いや関数や微積は世界を読み解く置き換え操作なののに、そのことを知るだけでも、彼らの発想はもっと豊かになるだろうと。
 
☆数学は、世界を読み解く道具ではない。世界を置き換える操作という世界そのもの。
 
☆だから、聖学院では、中学3年のときに、高校数学にジャンプする数か月前は、授業をプリンキピア的な発想のトリガーで組み立ててみようかと。数学が世界を制作する置き換え操作であることを知ったとき生徒は、文系理系という分け方をするだろうか。
 
☆本橋先生は高校大学と米国に留学していた。数学の教職を取らなければ教壇に立てなかったので、ICUで教職をとった。
 
☆IBのハイレベルマスの研究もしながら、日本の数学教育がルビンの壺の図の部分しかみていないということに疑問をもち、やはり図と地の反転が子供たちが自ら考えられるようにしたいと。
 
☆9月に静岡聖光学院で21世紀型教育シンポジウムで思考力セミナーを披露した。そのときは、美を黄金比や白銀日に置き換え操作するワークショップを行った。静岡放送が密着取材をするほど驚きのセミナーだった。
 
☆工学院で英語で哲学を教えているアレクス先生(ケンブリッジ大学で哲学を研究していた)と、ニュートンやラッセルの話をときどきするが、やはりこれは哲学の領域でもあるようだ。
 
☆啓蒙思想が≪私学の系譜≫だというのなら、プラトン、アリストテレス、デカルトを乗り越えようとしたニュートン、そのニュートンに影響を受けたのはカントである。自称J.J.ルソーの弟子カントも影響を大いに受けたニュートン。コペルニクス的転回とかパラダイムシフトという言説は、やはりニュートンを通過しなくては生まれてこなった。
 
☆まさか、この歳になって、ニュートンのプリンキピアを研究しようとは思わなかったが、本橋先生は、IBのハイレベルマスやTOKを知るには、プリンキピアの発想ぐらいは知っておいた方がよいと。
 
☆というわけで、60の手習いを、本橋先生にご教示いただくことになった。学びは、やはり生涯続くということだ。
 
☆それにしても、ボールが手元から床に落ちていくのと月が地球の周りをまわっているという現象には同じ原理が働いているというのは、物理も数学もなんてロマンがあるのだろう。これだから、学びはやめられないなあ。
 
 

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