学校選択の目【43】工学院の教師力 学校選択の決め手は結局教師力(5)
☆しかし、創造力批判としてよくある思い付きだとか、知識を軽視しているという俗流科学論がある。まったく科学をなんだと思っているのか。見えないものを理論化しているのだから、科学そのものがクリエイティブなのだ。その知識も最初は創造的な産物だったのだ。
☆だいたい、知識がなきゃ客観的でなきゃエビデンスがなきゃなんていっている俗流科学論者に限って、トマス・クーンも知らないし、プリンキピアも手に取ったことがない。カントの本も読んだことがない。主観とか客観とか、まだ言っている。インター主観という考え方をどうとらえなおすかということもしたことがない。これらのことは、それこそ知らなきゃならい基礎学力。つまり、俗流科学論者こそ知識を軽視しているのだ。
☆というわけで、そんなところで立ち止まっても意味がないので、工学院はさっさと先に進む。たとえば、教務主任の太田先生(理科教諭)は、本物の知識に基づいた創造的な学びを目指して日々の授業を創意工夫している。
☆人間という生命体を、神経情報伝達系とホルモン情報伝達系の両側面からマインドセットする。両方の比較をマインドマップやカテゴリーマップを活用して、整理し、情報をたっぷり収集する。このフラクタルな知識・理解の作業はとても重要だ。
☆普通の授業は、ここで効率よく知識を体系的に記憶せよとなる。ところが、太田先生のこの知識の情報取集・整理という理解のフラクタルな膨大な網を作っていく作業こそ、次元を0.2次元アップさせるコツなのだ。
☆過冷却という状態にたとえることができるだろう。フラクタルな状態は時熟というタイミングを迎えると、ある瞬間的な刺激があるや、一気呵成に次の現象が起こる。
☆というわけで、太田先生は、そのタイミングが来たと思うや否や、クリエイティブマップでクリエイティブブレインを活性化する。
☆そして、ディスカッション。創造的な才能というものは、クリエイティブブレインを活性化すること、そのために個人ワークやディスカッションというクリエイティブアクションが必要だが、さらに新しいアンドロイドをつくるとして、どんな働きをするホルモンを搭載するのかというクリエイティブプロダクトまでやってのける。
☆これは総合学習ではない。理科の高2の授業だ。だからということもあるのか、実は太田先生は、生徒のクリエイティブ・ブレイン、クリエイティブ・アクション、クリエイティブ・プロダクトのリフレクションループをファシリテートしているのだ。
☆ただし、ときどき生徒のフラクタル作業が滞ったとき、すばやく微妙な差異を考える問いを投げる。コーチングスタイルに一瞬なり、再びファシリテーターに戻る。実はこの絶妙な役割転換が教師の腕の見せ所だ。
☆問いを投げつつづけるのでも、まったく教えないのでもない。もしそうだとしたら、結局しゃべりまくっているのも同じなのである。生徒の脳が活性化されないという点で。
☆ファシリテーションとコーチングの緩急の絶妙なタイミングを見出す教師力。古典的な言い方だと生徒一人一人の「憧れの最近接発達領域」をシェアできる力といえるかもしれない。
☆さて、今までの工学院の思考力入試は、この太田先生に代表される工学院のPBL型授業そのものだったのだが、新設の「Creativity 入試」は、さらにどんな仕掛けになるのだろう。
☆来春の高校から、ハイブリッドメディカルサイエンス系のコースができるという。どうやら、そこから逆算して作成されるのではないだろうか。
☆生命科学や医療分野は、実は理系文系の区別なく学際的な研究が拡大している。この「Creativity 入試」は、実は工学院の新しいキャリアデザインを予告するものとなるだろう。
☆まだ、受験業界は気づいていないだろうが、工学院の大学進学実績はある時、急激に飛躍する。
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