« 学校選択の目【50】海城の時代(1) | トップページ | 2017年10月ホンマノオト「アクセスランキング」ベスト50 »

学校選択の目【51】海城の時代(了)

☆第1改革の「新しい学力」の次は、第2改革期に移行するが、その主たるものは「新しい人間力」づくりだった。改革は、きちんと計画をたてながらも、その過程は試行錯誤で、だからこそ、改革当事者の中に、新しい課題の気づきが生まれる。
 
Dsc08380
 
☆したがって、あたかも偶然改革は進化しているように、当事者にはみえるものだ。だから、驚愕あり、そのつど希望に満ち、モチベーションが内燃する。計算可能性や予見可能性、合理主義的な計画は、やらされ感満載になるものだ。
 
☆しかしながら、そんなことで、30年間も、そしてこれから先も改革を持続可能にはできない。改革とは、計画的偶然性を仕掛ける必然性でなければ成功しない。偶然と当事者のそのつどのやる気だけでは、モチベーションは継続しないし、プラクティカルな実効性がない。
 
☆「新しい学力」を徹底すれば、おのずと感情なき学力が、人間関係に無関心な合理主義的機械論的モンスターを生み出してしまうのは、歴史が物語っているし、文学の永遠のテーマでもある。愛と嫉妬の葛藤やアンビバレンツはシェークスピアをはじめ文学や哲学の通奏低音かのごときテーマ。つまり人間存在の私たち自身のテーマ。
 
☆それゆえ、愛と嫉妬を乗り越え共生できる感情教育が必要となったのだろう。プロジェクトアドベンチャー、ドラマエデュケーションというプログラムを根付かせていったのである。しかし、これは、思いつきではなく、欧米の真のエリート教育で導入されているプログラムである。ある意味、リベラルアーツの現代化である。
 
☆学力と人間力の弁証法という計画的偶然性をデザインする大きな知を有した教師がいるわけである。弁証法であるから、次のステージも見えているわけだ。しかし、そのステージで何が起こるのかは偶然性が左右する。
 
☆改革がうまくいくかどうかは、その偶然性を昇華させるたゆまぬ当事者たちの対話にかかっている。
 
☆そして、このステージというのは、時代という世界の歴史と連動しないと知をベースにした営みはうまくいかない。
 
☆知というのはどうしても普遍性の意味を有しているからだ。そこで、第3期の改革は、グローバル教育にシフトしていく。それが7年前だ。C1英語の環境、PBLの充実、ICTの活用、リベラルアーツの現代化がハイレベル、ハイクオリティに結晶した。
 
☆7年前に高校募集を廃止し、その定員30名を中学の帰国生募集に転換した。その募集戦略を練るのに、中田先生は、世界を奔走した。IB(国際バカロレア)を徹底的に研究した。世界で活躍する海城OBとも対話した。グローバル企業の要人や著名コンサルタントとも激論を交わした。
 
☆しかし、何より、東浩紀や宮台真司といった哲学者や社会学者とも直接対話しながら、中田先生自身のプラグマティックな現代思想を深めていった。
 
☆学問的背景に裏付けられたそれでいてプラグマティックな教育と経済を統合する大きな視野で計画的偶然性をデザインしていったのだ。
 
☆そして、第4期の改革ステージが到来した。これまでの3つの改革の集大成として、「医学部小論文・面接講座」そして「KSプロジェクト」という知性と感性と社会性を統合した真正グローバルエリートを育成する段階に飛ぼうとしている。
 
Dsc08393
 
☆それらは、STEAM教育という側面も持っており、アートという世界を創出する学びにつながっている。
 
☆なぜアートなのだろう。そこまでは、まだ中田先生と対話はしていないが、計画的偶然性という必然性から推理すると、予測不能な時代、つまり、計算可能性、予見可能性が裏切られる変化の時代。それはグローバルエリートにとって、フラクタルで複雑系の変化に対して柔軟にマルチな使命を同時に果たしながら乗り越えていくために必要なのだ。
 
☆フラクタルで複雑系だからこそ、一気に全体をイメージして鷲掴みにするアート感覚がないと先に進めないからだろう。
 
☆しかも、このアートは、デジタル世代に対応できるものを準備している。実用的には、2020年以降の大学入試改革で、学習履歴を大事にするパラダイム転換がようやく日本でも起こるから、その準備としてのeポートフォリオの準備をしている。
 
☆そのポートフォリオを見れば、生徒1人ひとりの「新しい学力」「新しい人間力」「新しグローバルエリートパワー」そして「アートの魅力」を証明できるだろう。
 
☆さて、そうなってくると、その第4期の改革の次のステージはどうなっているのか?中田先生はそこも見通しているはず。つまり、20年先を具体的にイメージしているだろう。当然そこでは、AIは活用されている。すでにハーバード大教授で多次元知能の研究者ハワード・ガードナーが語っていることであるが、AIがないとできないことがある。eポートフォリオの次がそこには広がっているのである。
 
☆これから20年は、海城にとって、普遍的な教育力を誇り、それぞれの教師の学問性や創意工夫に任せてしまい、今なお学校全体として教育のプログラムとしてシステム化していないことを学問の自由だと嘯いているいわゆる御三家を追い抜く過程の時代となるだろう。
 
☆計画的偶然性を別の言葉に置き換えると、歴史及び理性の狡知となろう。このしたたかな歴史や時代の精神に背を向けずに、真摯に立ち臨む学校が、今後海城に続くことになるだろう。

|

« 学校選択の目【50】海城の時代(1) | トップページ | 2017年10月ホンマノオト「アクセスランキング」ベスト50 »

学校選択」カテゴリの記事