11月3日トークセッション型保護者会 in 和洋九段女子
☆この時期というのは、教育業界は、今春から実践してきた様々な成果が出たり、あるいは改善点が明らかになってきて、次の年の新たな動きが侃々諤々議論されビジョンが決定される時期である。
☆それゆえ、学校側の立場から太田先生、大学受験業界側の立場から神崎先生に協力していただき、何が問題で、それを解決するためにどんなビジョンが動き始めているのか、現場の声を保護者の方々と共有しようと計画。首都圏模試センターの取締役・統括マネージャーの山下一氏にお願いし、快諾していただいた。
☆太田先生は、ご自身も思考コードベースのPBL型授業を実践し、学内の先生方と学習する組織を形成しながら、そのニュータイプの教育を広めている。そして、そのエッセンスを反映させた「思考力入試」を開発。来春は新思考入試として「Creativity 入試」も実施する。
☆つまり、アドミッションポリシーとカリキュラムポリシーのリーダーである。中学の教務主任故、ディプロマポリシーは、進路指導部長の新井先生と連携している。
☆株式会社カンザキメソッドの代表取締役神崎先生は、公立高校、私立高校、予備校、そしてご自身の教室で、小論文とAO入試などの学習ポートフォリオを中心としたアプリケーション作成スキルを教えている。思考コードに相通じるルーブリックに基づいたカンザキ式包括的なキャリア・デザイン・プログラムを開発。それは、ニュータイプのクリエイティブキャリアデザインとも呼べる画期的な学びになっている。
☆今、≪中学入試―カリキュラム―大学入試≫と連なる学びのプロセスが、≪新中学入試―新しい学び―新しいキャリアデザイン≫といずれも新しくなっている。もはや中高一貫校を選択する際に、中学受験勉強の枠内の情報で意志決定するのでは、あまりに偏りすぎていて、迷わなくてもよいところで悩み、悩まなければならないところをスルーするということが起きてしまっている。
☆今後の子供の人生を考えるキャリアデザインは、計画的偶然性を形成する広い視野が求められている。どういうことかというと、時代が予測不能な激変をしていることは確かで、同時に生産労働者の数が少子高齢化で激減しているわけだから、テクノロジーをマネジメントしながら、一人でマルチな仕事をこなしていく柔軟で変幻自在な対応が求められる。
☆つまり、中級レベルの知識・技能で一つの仕事に専念して一生を終えていた時代は、もはや過ぎ去ってしまった。そうなってくると、高次知識・思考力・判断力・表現力が求めらるのは必至である。
☆だから、計画的に新しい学力・人間力を育て、あらゆる変化に変幻自在に対応でき、想定外の仕事や新しい仕事を自ら創っていける創造的才能を養っていくことが求められる。しかしながら、たとえば、医者になったとしても、地方や発展途上国の衛生を改善するコミュニティのリーダーになったり、そのことによって経済を興したり、新たな医療ビジネスを展開する役割を引き受けざるをえないことが、レアケースではなく、当たり前のようになっていくが、それはそのときのネットワークとの出会いによって想定外のキャリアをデザインしていくことになる。つまり、そこは偶然性が大きく左右するわけだ。
☆この計画的偶然性というキャリアデザインのニュータイプの考え方は、21世紀に入ってからJ.D.クランボルツらが提唱し、ニュータイプのキャリアデザインに大きな影響を与えた。神崎先生は、このあたりの新しい理論を、学校現場で実践している。
☆そして、このクランボルツらの系譜は社会構成主義的理論であり、実は太田先生の新しいタイプの教育・授業であるPBLという手法と共通する理論なのである。構成主義的理論というのは、簡単に言えば、コミュニケーションシステムがベースで、それゆえ1+1が2ではなく、それ以上のシナジー効果を生み出す理論。関係主義的で、「コト」としての世界観といわれる。
☆一方これまでは、1+1は2以上でも以下でもなく、要素還元主義。関係ではなく、要素を足し算していく組み立て主義。「モノ」としての世界観といわれる。「モノ」は目に見えるものであり、「コト」は目に見えているものどうしの関係のことだから、目には見えない。それゆえ、「モノ」主義の人からは、オカルト的だと非難されてきた。
☆森も木も見ることも大切であるというのが、構成主義。木の積み重ねが森になるのだから木をみていればよいというのが、要素還元主義。全体と部分の関係を大切にするか、部分を重視するかの違い。
☆数学的には、関係主義は、目の前の現象の背景にある関数を見出そうとすること。現象が点で、方程式の格子点。方程式という関数全体を見出そうという考え方。
☆一方、要素還元主義は、限られた範囲での格子点を見ているということ。とするならば、結局は同じことではないかということなのだが、両方の考え方の溝は深い。というのも、数学の教科書にある2次関数や3次関数程度で、自然や社会、精神の関数関係は説明できない。
☆ということは、実際には、現象の背景にある関係を方程式で表現することなどできるのかと。このユートピア発想は19世紀末に出現し、一世を風靡した。≪私学の系譜≫はここを起源とするのだが、明治政府は、あっさり切り捨て、実証主義的要素還元主義路線をとった。富国強兵・殖産興業は、この「モノ」的世界観がわかりやすかったのである。
☆近代社会、近代科学は、この「モノ」的世界観と「コト」的世界観との相克の歴史である。「モノ」ベースで走れば富裕層にとっては利益が生まれ、格差はどんどん広がる。「コト」ベースで進めば、計画的偶然性のビジョンを生かすことができる。
☆2020年大学入試改革の背景にある、政治経済戦略は、明治期のときのように、生産労働者の激増を予想できた時代とは違って、その逆であるから、どうしても1+1が3にも4にも5にもなるであろう「コト」的世界観がベースにならざるを得ない。
☆保護者会では、こんなごちゃごちゃした話はもちろんしなかったが、太田先生と神崎先生は、このことを知っていて、あえて、オールドタイプの教育からニュータイプの教育へシフトする時代のリーダーを引き受けているのだ。
☆それゆえ、このパラダイムシフトのはざまで困惑している生徒とどうやって共に次の時代を切り開いていくのか苦悩の日々に立ち臨んでいるのであり、しかし、そこにおける自己変容型知性の広がりに希望を見出してもいる。
☆保護者会では、その苦闘とそれをいかに乗り越えているか現場のエピソードをたくさん語っていただいた。
☆保護者会終了後、オールドタイプを選ぶのか、ニュータイプを選ぶのか、長男長女はすでにニュータイプの学校に通っているが、まだ学校の中で、オールドとニューの葛藤があるが、今後どうなっていくのかなど、3人がそれぞれ質問をうけた。
☆保護者自身も、どちらの軸を進むのか、生徒自身もどちらの軸を歩むのか、明快に意思決定する時代になった。対話の中で、保護者自身が、その重要性を感じ、改めて気づきを得たようだった。そして、明日への希望を今後も共有しようと約束して別れたのである。
| 固定リンク
「中学入試」カテゴリの記事
- 2019年中学入試の新フレーム(184) キャリアガイダンスは必読!聖光学院の取り組みをきっかけに考える。(2018.07.14)
- 2019年中学入試の新フレーム(179) 大きく動き出したグローバル2.0へのリフォーム(2018.07.12)
- 【首都圏模試保護者会レジュメ】2018年7月1日(了)学校個別情報(2018.06.30)
- 【首都圏模試保護者会レジュメ】2018年7月1日③併願情報(2018.06.30)
- 【首都圏模試保護者会レジュメ】2018年7月1日②「成績表」×「解答解説」=戦略×戦術(2018.06.30)
最近のコメント