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【メモ】思考力入試の有用性 キャリアデザインと関連

☆11月3日(火)、和洋九段女子で、首都圏模試主催「私立中コラボフェア」が開催。ホールでは、基調講演×パネルディスカッションが行われ、各教室では、思考力入試、適性検査型入試、自己アピール入試、総合型入試、得意科目選択型入試、英語入試などの対策講座が行われる。
 
☆このような新中学入試が、今後の中学受験生にとっていかに重要かは、多くの方々が語っているので、今更私が説明する必要はないかもしれない。
 
☆しかし、まだまだこの新しい動きの意味は広く浸透しているとは言えないので、しつこく本音で語ってみたい。それにこうして語ったり、多くの方と対話したりすることによって、また新たな意味が発見できるかもしれない。
 
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(八雲学園の本多先生の高3生物の授業。PIL×タブレットPC×ロイロノートスクール。生命倫理に関するある一つのテーマについて、各生徒の考え方をシェアとリフレクションしていくPBL型授業。学際的で柔軟で深い思考力を育成する場になっている。)
 
 
☆さて、まず、戦後、1989年ベルリンの壁崩壊/冷戦終焉、2011年3・11では、グローバル教育の意味が変わっているということの確認。
 
☆グローバル教育は、いうまでもなく、グローバル経済とグローバシチズンシップという二つの流れの上で語られる。今のところグローバル経済は大企業の強欲資本主義の潮流を意味し、グローバルシチズンシップは、強欲資本主義の精神の怪物化を以下に抑えるかという潮流。前者がグローバルで、後者がローカルで、両方融合してグローカルなどと言われることがある。
 
☆おそらく、戦後、国家主導の国際貿易が行われてきて、それについていけたのは、大企業だろう。いや大企業が国家に働きかけきたということなのかもしれない。国際平和を経済で実現するというカントの「永遠平和論」を基調とした考え方だが、カントはこれほど国家間の富の格差が生じるとは想像できていなかったかもしれない。
 
☆しかしながら、冷戦終焉後は、国よりも企業が前面に出て国際経済を主導していく。市場はやはり、国家がでてくると動きが緩慢になるからだ。最初の段階では国家が出てきて、そのあとはグローバル企業間で交渉していくという流れ。交渉がもつれたときには、国家がまた介入してくるという繰り返し。それゆえ、富の格差が是正されるということはなかった。
 
☆そして、さらに、ITの産業化によって、金融資本主義が勃興。幾何級数的な利益が、時間を担保に膨れ上がていった。
 
☆幾度かのバブル崩壊と東日本大地震、中国経済などの隆盛が、グローバル経済の猛省を強いた。再び、成長の回復をとなるが、そのとき、特に日本は少子高齢化という大問題が起きた。イノベーションによって効率の良い合理的な産業の回復を目指したが、高度経済成長期の有り余る労働力を前提とした経済政策の焼き直しでは、歯が立たなくなった。
 
☆生産労働者がそもそもいないのだ。日本経済の表看板である大企業というグローバル経済を支える労働者は、生産労働人口の30%。日本のGDPを支えるのは、ローカル経済圏の中小企業である。
 
☆しかし、生産労働力の不足は、ローカル経済圏を苦しめたが、これはグローバル経済圏で活躍せざるを得ない大企業を下支えできなくなったということではない。
 
☆そもそもグローバル経済活動は、安い賃金の労働力を求めて海外に移動したから、はじめから空洞化していた。大企業が復活しようとも、ローカル経済圏に得する循環はすでにない。
 
☆ここにきて、はたと気づいたことは、グローバル経済はグローバルシステムで生き抜き、ローカルはローカルでグローバルシチズのネットワークを創らなければ、生き抜くことができないということに相成った。
 
☆かくしてグローバル経済圏で、サバイブするにも、ローカル経済圏でグローバルシチズンシップを生かしてサバイブするにしても、高度で柔軟な思考力が必要となったのである。
 
☆今までは、大企業に入るには、高度思考力が必要で、ローカル経済圏では中級知識や技術でやっていけた。しかし、ローカル経済圏はリアルな地理的条件としてはローカルなのだが、サイバースペースでは、もはやグローバルネットワークの条件を受け入れざるを得なくなった。
 
☆知識基盤社会では、GとLというリアルな空間の経済機能の違いは残るが、一方で、サイバースペースによって、そのリアルな空間が無化されてしまう機会も生まれた。もちろん、大企業は「モノ」づくりとその大移動が中心であり、ローカル経済圏は、そのような「モノ」の移動はなされない。したがって、一見するとグローバルな動きはない。しかし、ローカル経済圏のグローバルシチズンは、知という「コト」づくりのネットワークになる。ネットワークはローカルを越境してしまう。
 
☆たとえば、第1次産業はローカル経済圏が中心にならざるを得ないが、グローバルな範囲の各地域で、食物生産を、知の移動で行えるようになる。その知が付加価値としてネットで交換される。
 
☆そんな世界に変えるテコは、知である。高度な思考力である。樹木が環境さえあれば、豊かに成長を続けるように、ローカル地域がグローバルシチズンシステムというネットワークの循環を広げることで、自生することができるようになる。
 
☆ローカルな地域での労働生産性はそう簡単には回復しない。しかし、新しい生産イノベーションの知は、ネットワークによって協力し合える。
 
☆このシステムを創出し、発展させ、持続可能にする知のネットワークの創発。ここには生産労働者という年齢制限がなくなる。知を有するものは、年齢に関係なく、その知のネットワークが生み出す生命のエネルギーの恩恵に浴することができる。
 
☆おそらく、そんなのは夢物語だろうとか荒唐無稽な作り話だといわれれるだろう。しかしながら、資源の再分配が、富の欲望によるのではなく、善なる再配分によるのなら、それは可能なのだ。
 
☆高度な思考力や知が、それを可能にする。グローバルシチズンのネットワークでは4技能英語も必要になる。新中学入試の動きは、そのようなグローバルシチズンのネットワークの形成の知を生み出す最初の一歩である。
 
☆そして、グローバル企業が創ってきた経済圏以外に、ローカルからグローバルシチズンのネットワーク経済圏が膨らむ。しばらくは、両方とも併存する。そのうち拮抗する。そして新しいグローバル時代が到来する。
 
☆この動きは、加速する。すでに変幻自在で越境的な仕事に対応するキャリアデザインが始まっている。中高の進路指導はまだこの動きに追いついていないが、2020年大学入試改革が、学びのポートフォリオや学びの履歴というものを重視する流れにしようというのは、この新しいグローバル時代の新しい仕事によるキャリアデザインを描ける社会環境に呼応しているからだろう。
 
☆このことに気づいた私立中高は、この予測不能な変化の時代が生み出す新しいグローバル時代に対応すべく、そしてその時代を生き抜く新しいキャリアデザインに対応すべく、柔軟で深い思考力を養成するカリキュラムや授業やプログラム作りにシフトしている。思考力入試は、この新しいグローバル時代、新しいキャリアデザインに対応する新しい人間力づくりにつながるゲートである。
 

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