國學院大學久我山 次のステージへ(3) アダプティブリーダーシップ
☆前回「國學院大學久我山 次のステージへ(2)」の記事で、こう述べた。
「今井寛人校長は、30年以上も前から、数学の教師ということもあって、多様なデータを駆使しながら経験を重ね合わせて、そのズレを見出し、それは一体何か追究してきた。そのプロセスの中で、判断力をトレーニングしてきただろうし、その長い経験が、学校や社会が動く納得のいく決断を行ってくることができた。」
☆この長い経験が現在に生かされ広がっている例として、女子部の2期生として高2から編入してきた帰国生のエピソードを、今井校長は語ってくれた。
☆その米国からやってきた生徒は編入学してくるまでに、数学と物理は、猛勉強して同校のカリキュラムの進度に完全に追いついて入ってきたという。
☆折しも、今井先生は数学教師として、ベクトルのゼミを行っていた。少人数で、ベクトルの概念からきちんと学ぶのだが、今でいうアクティブラーニングスタイルだったし、何より日本の数学教科書のベクトルの導入部がすぐに計算操作できるように組み立てられていたのが、物足りなかったので、米国の数学の教科書を使っていたというのだ。
☆ベクトルを考える際にあらかじめ、3角形が提示されてそこから進むのでは、ベクトルとはいかなるものか概念を思いめぐらすには何かが足りないと当時今井先生は感じていたようだ。そんなとき米国の教科書に出遭い、概念を体得するページが十分に割かれていたのに気づき、これだと思い立ち、使うことに決めたようだ。
☆そのときちょうど編入してきた帰国生も参加してくれたから、英語を日本語にするのを任せたりして、数学的思考を真剣にそして楽しく学んでいったという。今でいうアクティブラーニング風だっただろうし、英語も交えて行ったわけだ。
☆そして、ベクトルは物理を学ぶその生徒にとっては一石二鳥だったことは間違いないだろう。ここにも学際的な学び=メタ認知のヒントがあるのだが、それについては次回語ろう。
☆とにも、実はこの時の、この経験がずっと続き、今では“Math in English”という講座に発展いるという。数名のゼミという感覚ではなく、参加者も多くなり、大きな数学のイベントに進化している。超有名なブライアン先生と協力して、オールイングリッシュで数学の概念を学ぶ講座が根付いている。
☆また、彼女が東大に入学したことで、どのような思考の成長や人間的な成長が、各生徒の自己実現に有利な条件としての難関大学に入れるのか、実感が持てたともいう。今井先生の生徒の成長ぶりを察知する方法は、いろいろな機会で、生徒とインタラクティブなコミュニケーションをすることだ。
☆そのコミュニケーションの過程で、ここまで成長していれば大丈夫だとか、もう少し成長しなければならないから、そのためには担任や担当の先生と話し合ってみようというリーダーシップを発揮する。
☆そして、CCクラスだが、特に日本文化や伝統を世界に発信できる英語力や思考力を身につける授業やイベントが満載。実はこれも、その帰国生が、東大入学後、米国の友人の妹たちを國學院久我山の研修旅行にジョイントさせるコーディネートを行ったことにヒントがある。もう30年近く前のことになる。
☆2020年の大学入試改革の進捗が遅いかどうかはともかく、英語の4技能や深い思考力を要する時代は、それとは別にやってきている。試行錯誤して行ってきた実験的なプログラムが、こういうタイミングでシステム化するわけである。
☆今、ハーバード大学が日本の文化や組織づくり、リーダーシップに学んでいるという本が話題になっているが、同大学のハイフェッツ教授のアダプティブリーダーシップというのも話題になっている。
☆多様性と日々刻々変わる時代にあっては、自分の意志やそれを実現する方法を現場にストレートに強引に導入するのではなく、現場の状況に合わせてアレンジして、それいて決して妥協することなく、うまく適応できるように仕掛けていくリーダーシップが求められている。
☆今井校長も、まさにその一人なのである。
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