2018年首都圏中学入試(13) 浦和明けの星女子の算数をきっかけとして
☆受験生は、一行問題の3番目の問題だからあっさり解いてしまっただろう。このタイプの問題は、たしかに頻出される。
☆しかし、解答の過程を書くわけではないから、中には、4×4×0.57÷2といきなり暗算で解いてしまう生徒もいるし、半径8cmの円の8分の1の面積を出して、半径4cmの円の2分の1の面積を出して、実は両方とも同じ面積だと気づき、斜線の部分と、同じ面積の場所を見出してから計算するという生徒もいるだろう。
☆4×4×0.57÷2とまではいかなくても、半径8cmの円の8分の1の面積と半径4cmの円の2分の1の面積が計算しなくても等しいということに気づいている生徒は、計算を少しはショートカットできる。
☆しかしながら、これは気づきの問題ではなく、量を解いてきている生徒で、自分なりに一般化してきた生徒にとって簡単な問題というだけである。
☆つまり、このような問題を出題するということは、カリキュラムポリシーに数学的思考力を養成するメタ認知は学校にはないことが了解できる。
☆20世紀型教育では、このようなカリキュラムポリシーでよかった。まさに知識・技能をきちんとトレーニングする問題だからだ。
☆なぜこのような問題を今まで多くの学校で出題してきたのだろう。実はそこを考えるところから、新学習指導要領は考えなければ、教育改革はなかなかうまくいかない。でなければ、高偏差値の学校で、そこのリフレクションを通過できないから、2020年大学入試改革後も、このような問題を出題し続けることになってしまう。
☆つまり、現場では何も変わらないということになる。もちろん、この問題は問いかけを変えるだけで、現代数学的な、たとえば、トポロジー的な柔らかい数学を考えるトリガーになりうる。
☆だから、この素材がよいかわるいかでは、もちろんないのだ。この素材をどのように生かすかは、教師の問いかけ次第なのである。そこを新学習指導要領が「主体的・対話的で深い学び」とい言うならば、この問いの立て方に対するガイドラインを示す必要があるだろう。
☆それを可能にするのが、「思考コード」と「思考スキル」なのだが、そこにまだ文科省は到達していない。ルーブリックとかスキルとかいう言葉は使われはしている。
☆であれば、、なんとかそこまで練り上げてほしい。この「思考コード」と「思考スキル」を使って、リフレクションできるようになると、生徒間の学力格差みたいなものは、ある程度解消される。
☆思考過程がわかれば、あとはPCで計算するとかのサポートが活用できれば、なおさら縮まる。しかし、そこまでくると、このタイプの入試問題の存在意義そのものが問われることになる。ではどういう問いが最終的に必要になるのか?
☆その問いは、人間存在とは何かをAI時代において再定義することに役立つだろう。また大げさなといわれるかもしれない。しかし、新学習指導要領によって、小学校4年生が、正方形の面積を出している時、それが微積に結びつく話であることや汝自身を知れということに結びつくことを意識して授業展開できる教師がたくさん増えたとしたら、そこから、人間存在の再定義が始まるのだ。
☆自然と社会と精神がようやく有機的に循環することをシステマチックに思考して実践できる人間存在が出現する。世界観の転換。それは人間存在の価値観の転換でもあろう。
☆「変わる中学受験」とは、人間とは何かの再定義につながる重要なトピックであるのかもしれない。
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