2018年首都圏中学入試(37) 学校のビジョンタイプ 二兎追うタイプか統合タイプか
☆豊島岡女子は、2月1日の入試が始まれば、JGや桜蔭などの併願校となるから、入試の最中に増える。よって、前年対比はもっと跳ね上がるだろう。
☆浅野や攻玉社、巣鴨も、やはり上記リストの学校の併願校。その恩恵に浴している。それに、攻玉社お巣鴨は、豊島岡女子と同じ事情なので、入試の最中にもっと跳ね上がる。いずれにしても、現段階で恩恵に浴していない本郷との違いは、ビジョンタイプ。
☆実は複数回入試の学校は、その総数で計算しているから、城北は今のところ前年対比が100%に届いていないように見えるが、一回目はすでに100%を超えている。したがって、最終的には人気校ということになるだろう。
☆さて、このような前年対比で人気校を予想することが、ホンマノオトの本意ではない。人気の向こうに見える新しいウネリを見出そうとしている。もちろん、独断と偏見だから、無視してもらって構わない。
☆ただ、建学の精神を、時代の要請に従って、どのようなビジョンで学校を組織化し、運営し、教育の質を向上させていくのか、ああだこうだ考えることは、子どもの未来をいまここで考える学校選択にとっては重要であろう。
☆今多くの学校がサマープログラムなどで提携し始めたあのイートンカレッジも、伝統的な学校だと思われがちだが、伝統と革新の両方を統合させようとしている。
☆そこで、このキーワードを使ってビジョンタイプを分けてみることにした。日本の私立学校の伝統は、文化的なことももちろんある。しかし、実は開成や麻布などは、立ち上がった当初から東大を目指すことだったということは、ある意味今でいえば伝統となっている事項である。
☆もちろん、当時の東大を目指す理由は、進路先というより、欧米の先進的な技術や学問を修得して、近代国家日本を創ることに貢献したいという燃える気持ちが第一で、当時は革新的だったのである。
☆ただそれが、時代と共に伝統と化したのだと思う。よって、伝統を進学と置き換えてみることにした。そして、革新は、グローバル教育やPBL授業、ICT教育、STEAM教育、キャリア教育、リベラルアーツの現代化など多様な項目を内包するので、これについては革新という言葉で表現することにした。
☆お分かりの通り、進学の方は、大学進学実績を示し、わりと一義的でわかりやすいが、革新は多義的のまま使うから、わかったようでわからないかもしれない。しかし、実は「わりと一義的」とか「多義性」とか、曖昧な意味を留保したまま使うことで、あとからそれぞれの差異を考えるときに、そこをさらに分析すればよいということになるわけである。
☆今は、その手前の大まかな分類で傾向をみてみようというわけである。よく定義がどうのこうのと批判されるのであるが、それは、たしかに、その通りだが、今はまだ分析の準備段階だし、そこまでコストをかけるだけの資金がないので、あとはどこかがちゃんとリサーチしてくれれば私としてはありがたい。私はあくまで、子どもたちの未来の扉を探しているだけなのである。
☆先日、ある学校の先生に、そんな儲からないことやって本間さんは何が幸せなのですかと言われて、たしかにと互いに大笑いしたことがあったが、見れども見えないその扉を探すことは、なかなか楽しいものではある。
☆それはともかく、進学と革新の度合いにもよるだろうから、「進学力」と「革新力」という言葉で、考えてみることにした。
☆すると、従来の中学入試市場のように、「進学力」か「革新力」かという二者択一で学校は選べなくなっている時代であることはすぐにわかった。もともとは、麻布の前校長氷上先生が、大学進学実績と新教養主義の二兎を追うというビジョンを出して、土曜日の教養主義的講座ができた経緯がある。
☆「二兎を追う」という言葉は、それ以来多くの学校で使うようにもなっている。かつて、灘の日置先生が、「入試問題は学校の顔」であるという言葉を発して以来、それが中学入試市場内で、人口に膾炙され、今ではアドミッションポリシーという言葉に変容しているぐらい私立学校の先生方の言葉はインパクトがあるものだ。
☆また脱線してしまったが、ともあれ、そこで「二兎を追う」という言葉を活用してみることにした。すると、意外なことに、従来の中学入試市場の中に表れてきた変化が見えてきた。
☆上記のリストから、ビジョンタイプを抽出してソートして、円グラフにしてみたが、「進学力と革新力の統合」が44.4%、「進学力と革新力の二兎を追う」が33.3%、「進学力」が22.2%となった。もちろん、上記リスト18校の中だけでのシェアであるが、この割合は、中学入試市場にインパクトがあるはずである。
☆氷上先生は、二兎を追うと言ったのだから、麻布を統合に分類するのはおかしいではないかと言われるかもしれない。たしかに迷ったが、氷上先生は、わかりやすさを優先して表現しただけで、先生の哲学は、関係主義的な発想がベースだから、本意は二項対立のままでよいとは思っていないはずだ。ただし、統合を教育によって強制する道は拒否しただろうから、分類は実際には難しい。経験主義的にとらえるのか弁証法的にとらえるのかで、違いがでてくるわけだ。そこらへんは、興味がある方が、今後議論していっていただければと。
☆というわけで、従来の中学入試市場の中で、ビジョンタイプが、「進学力」か「革新力」かという二者択一から、「進学力と革新力の二兎を追う学校」か「進学力と革新力を統合する学校」かの二者択一にシフトしはじめたという現象が生まれているのではないか。
☆さて、冒頭で、「2018年の中学入試市場の変化は、2通りある。1つは、従来の市場感性の中での変化。もう1つは、新しい市場の誕生。」と述べたが、ここまでは、前者の変化について述べてきた。
☆では、新市場誕生というのはどういういことか?それは、すでに3年前から、新しいタイプの入試が生まれてきた現象に象徴されている。入試問題は学校の顔であるから、それは革新的な教育が生まれていることを示している。
☆上記リスト18校は、革新力がある学校が約78%あるわけだが、入試問題は従来の枠内で行われているから、あくまで、従来の市場の中での革新力である。
☆しかし、その枠組みの中で、革新力を追従したところで、偏差値を超えることはできない。そのために生徒募集が難局にぶつかってしまう学校も一方でたくさんでてきている。そんな局面を脱却して、善い教育を行っているから生徒が集まるという好循環を生み出そうとする学校が出現した。
☆このような従来の枠組みを越境するというウネリは中学入試市場も経済圏の中にあるわけだから、ほかの産業とも同期している。第4次産業革命が起こっているわけであるから、その影響は無視できないし、一方で、人材育成という意味ではほかの産業に影響を与えるシナジー効果を生み出す学校も現れたということなのである。
☆そのような学校を21世紀型教育と呼んでいるわけであり、革新力だけがあっても、旧市場から新市場に越境する革新力でなければ、真の21世紀型教育とは呼べないわけであるが、今のところ、「進学力と革新力の二兎を追う学校」と「進学力と革新力を統合する学校」と「真の21世紀型教育校」とは市場の次元が違うのであるのだが、そこを了解できるまで市場が熟していいないため、多くの受験生や保護者には、見分けがつかないというのが本当のところだ。
☆しかし、「進学力」か「革新力」かの二者択一の選択価値意識の時代からみれば、各段に教育市場は進化していることも確かである。
☆そして、実におもしろいのは、そんな21世紀型教育なんて、関西では受け入れられないと2017年のときに、関西大手進学塾は、断言していたのだが、市場のプレイヤーである、受験生と保護者が、塾の指導より、自分たちの意志を優先してしまった。そこで、香里ヌヴェール学院とアサンプション国際中高の21世紀型教育改革は、一年目にしてあっさり受け入れられ、2年目である2018年度の生徒募集も大いに盛り上がった。
☆首都圏は、塾と受験生と私学は、割と緩やかにつながっていて、革新力は守破離のテンポで広まるのだが、関西は、いきなり広がる。21世紀型教育は、何か強烈なものがあると感じるセンサーが、関西では俊敏に働くのだろうか。
☆最も、その21世紀型教育改革の先頭に立っているのが、カトリック学校連盟の会長であり、21世紀型教育機構の副理事長でもある高橋博先生、同機構理事の石川先生、同機構顧問の江川先生であるからということもある。
☆高橋先生は両校の21世紀型教育改革リーダー。そして、現在聖パウロ学園の理事長でもあり、同校の21世紀型教育改革を推進し、見事に帰国生をはじめとする21世紀型教育に興味を抱く生徒を獲得している。
☆現在香里ヌヴェールの学院長である石川先生は、前任校であるあのかえつ有明を導いた校長だったし、現在アサンプション国際中高の校長である江川先生は、前任校を英語の佼成に仕立てあげた教頭だった。
☆その21世紀型教育の理念と情熱とノウハウは、見事に関西の受験生・保護者には受け入れられたのである。
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