2018年首都圏中学入試(6)啓明舎 子どものユニークな発想を受けとめる。
☆2017/12/4付日本経済新聞朝刊に「中学入試の記述問題 遊び心で受験楽しく」という記事が掲載。 啓明舎塾長後藤卓也氏の記事である。
☆実は、このご時世に、啓明舎の塾生はうなぎ上りに増えている。その秘密は、記述の問題を子供たちといっしょにかかわっていくその刹那にある。とこの記事を読んで感じ入った。
☆詳しくは、直接お読みいただくことが一番だが、少し感じたことを記しておきたい。まず、こういう箇所がある。
提出された答案を添削しコメントを添えて返却する指導法もあるが、私は同じ学校を志望する生徒同士でチームをつくらせて、グループ別に指導している。全員の答案を添削する時間がないためでもあるが、難関校ほど記述問題が多いため、他人と自分の答案を見比べることから学ぶ要素が多いからだ。
☆つまり、講義とディスカッションをうまく組み合わせて授業をやっているということだが、これはある意味、アクティブラーニングでもある。しかし、啓明舎の実績には、麻布や女子学院の合格者もいて多様。麻布コースとか女子学院コースとかは設定していないだろう。
☆だから、このような授業は、相互にエールをおくれる雰囲気をつくれば、全体が盛り上がる。それには、ディスカッションも大事であるが、実は後藤氏のは、ハーバード大学の物理学のマズール教授のPI(ピアインストラクション)と親和性がある。
☆ディスカッションして盛り上がって終わる当世のアクティブラーニング(これをアクティブラーニングと呼ぶかどうかはいささか疑問だが)とはわけが違う。個人で考えて、仲間と話し合って、そのうえで後藤氏の講義を受けるのだろう。
☆だから、マズール教授が脳科学の実証データを引用して、ただ聞いているだけでは脳は反応しない。夢を見ている時の方が脳波は激しく反応するぐらいだ。やはり対話の時、反応すると。そして、アクティブな脳になっている状態で講義を受けると、実に論理的に意欲的に考えられるものなのだと。
☆おそらく、後藤氏は、経験と理論の統合ベクトルで授業を方向付けているのだと思う。実績も出るし、頼りがいがある。同塾の先生方も、みな同じように創意工夫した授業を展開しているはずだ。だから通塾生は増えるし、合格実績も出る。
☆じゃあ、同じような授業を模倣すれば、それでよいのか。実は、これは、塾だけの話ではなく、学校にも相通じる話なのであるが、言うまでもなく、模倣してもなかなかうまくいかない。
☆では、何が違うのか?それは、後藤氏のこの言葉に真実がある。
複数の答案を並べてみると、一人ひとりの長所短所や性格・成育歴まで見えてきて面白い。
☆学びにおける子供1人ひとりの反応をどう受けとめるのか。IQに代表されるような認知的能力だけで見るのではなく、EQに代表されるような非認知的能力まで受けとめているわけである。このトータルな視点が極めて大切だ。
☆もちろん、入試における記述問題では、認知的能力が評価の対象だから、きっちりそこをトレーニングしていくわけだが、かりに間違っても、意欲をそがないためには、非認知能力の長所をうけとめながら対話するという共感性・信用性が授業の中に浸透しているのではあるまいか。
☆このすてきな対話のやり取りは、同記事を実際に読んでいただくにかぎる。最後に後藤氏はこう語って締めくくる。
絶対に習得すべき基礎知識や技能はおろそかにしてはならないが、子供の生活実感やユニークな発想を評価する“遊び心”をもった問題や採点方法が増えると、中学受験ももっと楽しいものに変わると思う。
☆さりげないが、新しい中学受験市場は、“遊び心”が生み出すんですよ。認知能力だけただ頑なに真面目に押し通しているのは野暮ですよ。もっと粋にやりましょうと。そう語っている後藤氏のおだやかな表情が思い浮かぶのは私だけではあるまい。
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