2018年首都圏中学入試(56) 海城 理科で記憶力も思考力であることを示唆。
☆前者が知識主義で、後者が思考力主義ということなのだろうか?いすれにしても、知識と思考を分断しているという意味で、要素分解主義あるいは要素還元主義で、同じ穴のなんとかである。
☆知識は記憶として格納しまた再現するのであるが、格納するとき、あるいは再現するとき「思考スキル」を活用している。
☆意味されるものを意味するものに置き換えるスキルを活用したり、意味されるものの反対の関係にあるものを同時に格納するとかしていたりする。因果関係というスキルも活用するときもあるだろう。メタファーという連想するスキルも使うときも頻繁にあるだろう。
☆連想というのは、語呂合わせ、色、音、場所など内的空間イメージだが、アリストテレスやキケロの時代、今のように紙が何不自由なくあったわけでも、ましてタブレットやウェブがあったわけでないから、法廷弁論術として、記憶を格納し瞬時に引き出す記憶術を創意工夫していた。
☆自分の脳と身体ばかりでなく、身の回りのものすべてを意味するものとして格納し引き出すために「意味されるものの関係総体」をつくりあげていた。それを「トポス」とよぶ。
☆まさしく、このトポスが、今ではコンピュータによる記憶装置ということなのだ。いずれにしても、このトポスは修辞学の一部で、立派なリベラルアーツである。
☆知識じゃないリベラルアーツだとか、リベラルアーツは実用的でないとかいろいろ言われるが、それらは、みな神学論争でしかない。
☆枕が長くなったが、海城の理科の問題は、物質の名前とその特徴を記憶として格納したり記憶として再現するためにベン図というトポスを活用して見せた。
☆ベン図というトポスは、比較対照スキル、因果関係(理科の場合だと相関関係と言った方がよいかもしれない)で、整理されていなければ成り立たないから、記憶を格納・再現すには思考スキルを活用しているというわけなのである。
☆それゆえ、首都圏模試「思考コード」は、思考を<知識・理解><応用・論理><批判・創造>という3つの領域に分けて、知識を記憶することも思考であると位置づけている。
☆海城のこの問題は、知識の再現であるが、思考スキルの数は問いによって違う。A1からA3の問題がほとんど。その中で、問4の図式問題は、発生した気体の体積を正確に測定するための装置を考案せよという図によって表現する問題。
☆発生する気体と、はじめから容器にはいっている空気とを比べる比較対照スキルと気体が移動する理由を考える因果関係スキルを活用するし、それらをまとめて図にする統合スキルの3つが必要になる。よって、思考コードはB2の領域に相当するだろう。
☆いずれにしても、ベン図という思考ツールを媒介に記憶に格納した物質の名前や特徴を再現する問題である。思考ツールは思考スキルを可視化したものである。
☆どうやら、思考スキルを使わずに、闇雲に暗記させていたことと記憶の格納・再現というものが、同じ扱いをうけてきたようだ。それでは、海馬や前頭葉があまりにかわいそうではないか。
☆それに、最近は胸や内臓にも脳と同じ作用があることが分かってきたと聞き及ぶ。21世紀型教育は、記憶と思考の関係も再定義するということかもしれない。海城の先生方は、そういうものの見方の革新こそが21世紀型教育の根本であると示唆しているのだろう。
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