2018年首都圏中学入試(67) 海城 社会 25年以上も前から思考力を牽引 21世紀型教育校の思考力入試に影響を与えてきた。
☆今でも、それは続いているが、21世紀前夜あたりから、桜蔭の国語、開成の国語が思考力問題を出題するようになり、今年は慶応中等部の社会でも骨太思考力問題が出題されるようになった。
☆今や難関校において思考力問題の出題は当たり前のようになってきた。
☆そして、思考力は、難関校だけがシェアするのではなく、人類の宝物であるのだから、すべての生徒にその機会をと、2014年から21世紀型教育を標榜する、かえつ有明、聖学院、工学院、聖徳学園が、思考力入試を一斉に開始した。何せ人間は考える葦であり、我思うゆえに我ありなのである。
☆もともとは、かえつ有明、聖学院が2010年から実施していたものであるが、そのとき、各校は、麻布、武蔵、栄光、海城の入試問題を研究した。それに東大後期試験、慶応のAO入試、イギリスのAレベル入試、マイクロソフトの入社試験やエジソンの奨学金問題などもリサーチした。
☆それに、レゴやICT、ニュートンのプリンキピア、トポロジー的発想、リベラルアーツのレトリック発想などを統合させて、現在の思考力入試問題が創造されたのである。
☆もっとも重要だったのは、ブルーム型タキソノミーを設定して、思考力とは何かを再構築する作業だった。その成果が、今話題の「思考コード」や「メタル^ブリック」に結実した。海城の特別校長補佐の中田先生(当時教頭)も、その当時、認知科学やタキソノミー的発想に共感し、独自の考えを多くのメディアで語っていたが、その時に、ホンマノオトで展開していたブルーム型タキソノミーについても言及してくださった。
☆この辺の思考力問題のシステムについては、石川一郎先生の「2020年の大学入試問題」(講談社現代新書)に詳しい。
☆そんな経緯もあり、いつも25年以上も前から中学入試問題の華の1つで、はじめから、今でいうディプロマポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシーがすべて融合され詰まっている海城の社会の中学入試問題を解くのが楽しみなのである。
☆今年の第1回目の社会科の最終問題は、上記にあるように、瀬戸内海の島々をつなぐ医療総合センターとも言える済生丸の高齢者の医療問題と関係する現代的意義を200字以内で論述する骨太の思考力問題が出題された。
☆中田先生ご自身は、私立学校の中で、唯一無二の現代思想・哲学の旗手であるから、テストの背景にある、哲学的評価基準に対する見識も広く深い。この社会科の問題も、OECD/PISAでいう、連続テキストである文章、非連続テキストである、資料4から資料7を活用させることによって、論理的思考力を評価できるように基準を明快にしている。
☆瀬戸内海の島々は橋がかけられることによって、交通インフラのイノベーションが起こり、船の交通は減っているという経緯をまずは、連続テキストである文章から情報を引き出す。
☆一方で、済生丸の需要には期待がかかっている。このイノベーションのパラドクスをまずは情報抽出によって確認する。
☆そのうえで、非連続テキストである図やグラフを1つ1つの理解し、つなげることによって、済生丸のニーズの理由・根拠を推論していく。
☆論述では、トッピクセンテンスを連続テキストから抽出し、根拠を非連続テキストから4つ抽出する。この作業は、単独には、首都圏模試「思考コード」でいえば、A2と4つのB1ということになる。
☆A2というのは、文章理解の際に理由のスキルと比較対照スキルで再現するからである。B1というのは、時間推移などの差異を比較対象スキルで論理的に推論するからである。
☆全体としては、ここで活用する6つのスキルを統合するスキルが加わるので、7つの思考スキルを活用する。したがって、B3の領域の高次思考を求めていることが了解できる。
☆かくして、海城の社会の思考力問題は、ち密に評価基準が計算されて作成されている。思考力というと、記憶を再現する問題でも思考力を使う。物語の続きを書く正解が1つではない問題でも思考力が稼働する。
☆その思考力のレベルの差異をきっちり判断できるようにしたうえで、海城のように採点基準ができるのだが、意外と場当たり的な採点基準が多い。
☆そういう場当たり的な採点基準を行っている人に限って、思考力は採点できないと声を大にして言う。しかし、それが人類の知恵の発達を阻害する発言であると、メディアが理解する時代がようやく訪れた。海城の先生方の信念がますます評価される時代となっているわけだ。
☆そして、そこを踏まえて、21世紀型教育校は、思考コードでいうC領域という批判的・創造的思考の領域に踏み込んだのである。
☆今年聖学院は、難関思考力入試を新設したが、トピックは、この海城の問題と同じ、高齢化と医療の関係についてである。このトピックが、A領域→B領域→C領域とジャンプしていく思考力入試もこれまた、スリリングでワクワクする入試問題であるが、これについては、次回ご紹介しよう。
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