2018年首都圏中学入試(71) 内製的研修が教育力アップの秘訣。三田国際、聖学院、かえつ有明 vs 工学院
☆三田国際、聖学院、かえつ有明、工学院であるが、この中で、工学院だけが他と微妙に違う。
☆この4校の学校は、いずれも、外から大学の先生など見識者を呼んできて、講演を聞くという研修はあまりやらない。外部情報の獲得として行うが、それはオプションに過ぎない。そこが他の学校の研修と違うところだ。
☆革新的な教育を行うとするのだが、なかなかうまくいかない学校は、外部の識者を呼んで話を聞いて終わりという研修しかやっていなことが多いからである。
☆上記の図のように、それでは、情報というボールをノック、ノック、ノックされ続け、受け取める教師がどれくらいいるのかはわからない。企画したチームの自己満足で終わるというのがしばしばである。
☆もちろん、この講演者が卒業生で、臨場感あふれるストーリーテラーだとしたら、話は別だが、そういう講演者が毎回来るわけでゃないから、笛吹けど、革新的な教育活動がなかなか動き出さないということはよくある。
☆しかし、三田国際、聖学院、かえつ有明、工学院は、プロジェクトベース型でワークショップ型の研修で、互いに何が真の問題なのか、深層をみんなで掘りながら真相を見出す。そのとき、問題解決の方法も共有される。
☆このShared Valueが極めて巧いのが、三田国際の田中教頭だ。どちちらかというと学習する組織というV理論がベースだから、Shareの仕方が自己陶冶前提の共感性前提なのである。つまり、学問ベースというか理論ベースの共感をつくっていって、そこに共通意識やスキルを立てていく。つまり、足場づくりが学問的だということだ。
☆聖学院は、理念型共感。オンリ・ワン・フォー・アザーズという理念を共有して、この理念を実現するためにどのように協力していくのかという共感性が強い。プロテスタンティズムベースということ。だから、難局にぶち当たっても、強い絆で乗り越えていける。今の子どもたちにとって、最も弱いところだ。そこがまた入試説明会で共感を呼ぶ。説明会も理念のもとに共感する変則ワークショップ型の感動の涙の説明会となる。
☆かえつ有明は、U理論タイプの共感性づくりがベースで、最初は互いの感情を大切にして、無意識に存在する互いの壁を共有して、それをどう突破していくか、その突破の過程で、気づきや励まし合いが共通の「何ものか」をシェアする。
☆このU理論ベースのプログラムデザインとファシリテータは、佐野先生と金井先生ペアが実に巧みだ。だから、その「何ものか」がわからないのが人間であるという人間存在そのものを丸ごと学内外で共有するエネルギーがほとばしっている。「何ものか」を強引にわかることはしないのである。アクティブラーニング思考力入試を創り出す学内の研修や本番のワークショップはまさに共感と情熱と感動の渦が巻いている。
☆この3校は、足場づくりが、学問、理念、感情という違いはあるが、それぞれの足場の上に共感が生まれるシェアのプログラムが巧みに機能している。
☆そして、それが授業や教育活動にも浸透している。生徒が集まる理由は、その明快な一貫性と共感共鳴共振が広がる感動の教育にあるだろう。
☆一方、工学院もまた内製的研修を実行できる学校である。しかし、イエール大学のポール・ブルーム教授のように「反共感論」を唱える教師もいるし、情緒的共感論者もいるし、心理学的共感論者もいるし、社会学の役割論的共感論者もいるし、道具論的ティンカリング共感論者もいる。
☆つまりとても自由なのである。だから、混沌としているようにも見えるときがある。しかし、本当に創造的思考を生み出そうとするならば、混沌からこそ生まれるほかないのである。
☆反共感論=合理的論理ですべては解決できるという考え方も含め、多様な共感論の葛藤から希望を生み出そうという、まったくコンテンポラリーアート的なデザイン思考は、確かに教育のアバンギャルドとしか言いようがない。あるいは、ウイーン世紀末芸術のような感覚なのかもしれない。
☆だから、普通の生活をして安心安全を望む人には、なかなか近寄りがたいかもしれない。本当は、そんな他人がつくった安心安全の場は、早晩崩壊するから、自ら安心安全の場を創るところから始めないと、つまり、前提それ自体を自ら創るという意味で、本物の創造的思考を身につけないと、サバイブできないよという人類救出改造計画を提案しているわけである。
☆いずれにしても、革新力を実現化するには、生半な研修ではやりきれない。ノックスタイルの研修では、改革の動きはまず生まれない。
☆今年の秋から始まるかなと予想していた、グローバル社会の暗黒面の崩壊が始まった。その亀裂から、ちょうど200年前に誕生したフランケンシュタインパラドクスの不安が噴出する。そこに誤って共感すると、そちらに吸い込まれてしまう。こちら側の世界にはやめに移動しておいた方がよい。
☆全員を救うことは難しい。私たちができることは、そのことに気づいて、自ら行動することを説くことしかできない。
☆革新力とは、その危うさを予知し、自分の持ち場をつくり、そこで共に理想郷ノアを創ろうとする理性と意志であると。
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