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2018年首都圏中学入試(73) 芝浦工大とかえつ有明の差異が映し出すコト。2019年中学入試の方向性。

☆首都圏模試センターのサイトを見ていると、芝浦工大中学校かえつ有明中学校の入試風景が掲載されている。どちらもオリンピックエリア豊洲にあり、隣接しており、今注目されている私立学校ということだろう。
 
☆それでいて、鎬を削るという雰囲気ではなく、それぞれ独自に生徒を獲得している。出願総数の前年対比は、芝浦工大中学校は、108.1%。かえつ有明は、131.9%。
 
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(AL思考力入試などに象徴されるように、ワークショップ型授業を全面展開しているかえつ有明の教師陣。対話が隅々までに流れており、リフレクションがコマめに実行されているのが大きな特徴。写真は首都圏模試センターから。)
 
☆渋谷教育学園幕張と昭和秀英などは、隣接といっても、本当に隣の敷地で、互いにグランド越しに生徒の活動が見えてしまうほどだ。そして、大学進学実績と偏差値の違いを、受験生/保護者は意識せざるを得ない。結果的に、鎬を削る事態になってしまっている。
 
☆ところが、芝浦工大とかえつ有明は、明快に教育の特色の差異があるから、どちらを選ぼうかと悩むことはあまりないだろう。しかも、どちらも大学合格実績は好調であるにもかかわらず、それを第一の特色としてアピールはしていない。
 
☆渋谷教育学園幕張も、アピールしていないはずだが、塾歴社会がそういう見方をしていない。昭和秀英は、自らそこに力を入れていることをアピールしている。
 
☆そういう意味で、進学力をアピールする学校、進学力と革新力の二兎を追う学校、進学力と革新力を統合している学校と区別できる。
 
☆芝浦工大もかえつ有明も進学力+革新力ではなく、進学力×革新力の学校である。ただ、その統合する媒介活動に差異がある。
 
☆芝浦工大は、ロボット工学がそれだ。科学的思考とモノづくり技術を中心とするSTEM教育が充実している。実際にWROという,世界55ヵ国約22,000チームが参加する世界最大のロボットコンテストに出場し、プレゼン部門で、中高両方で優勝するぐらいの実力がある。
 
☆世界中の子どもたちが各々ロボットを製作し,プログラミングし自動制御する技術を競う国際的なコンテストで、今から活躍できるのだから、その教育活動は他校ではマネができない。
 
☆そして、このような世界で活躍するためには、グローバル教育も大事である、それゆえ言語活動や海外研修もかなり以前から行っている歴史もある。
 
☆一方、かえつ有明は、現代心理学による共感性を養ったり認知科学や哲学によって、思考スキルを養うという教育活動が、進学力と革新力を統合している。要するにリベラルアーツ型なのである。
 
☆芝浦工大は、大学のロボット工学とも連携を密にしているなど高大連携も特色だ。大学は、世界大学ランキング入りしているし、文科省が認定しているスーパーグローバル大学でもあるから、ますます工学教育が浮き出てくる。
 
☆一方、かえつ有明は、大学との連携教育はほとんどない。もちろん、経営的には連結だろうが。だから、そういう点では、進学力がおのずと飛躍せざるを得ないという点も違う。
 
☆そのためには、徹底的にグローバル教育も行っている。帰国生が認める私立学校であることはあまりにも有名である。そして、その英語の授業は、哲学授業である。哲学的思考とエッセイライティング、ディベートなどすべて英語で行う授業なのだ。
 
☆そして、サイエンス科という総合学習では、一般の生徒もそのエッセンスを日本語で行っていく。
 
☆海外に行かずとも、学内がインターナショナルな雰囲気で、かつリベラルアーツ学校の雰囲気を醸し出している。つまり、西洋の伝統的な哲学的な意味の対話(弁証法)が満ちている。
 
☆このように比較スタディをしていくと、グローバル教育は、芝浦工大では、工学教育につながり、かえつ有明では、リベラルアーツ教育につながっているといえるかもしれない。
 
☆つまり、進学力 進学力+革新力、進学力×革新力という分け方は、もう少し複雑であることがわかる。
 
Ⅰ進学力×受験英語
 
Ⅱ(進学力+革新力)×受験英語
 
Ⅲ(進学力+革新力)×グローバル教育
 
Ⅳ(進学力×革新力)×受験英語
 
Ⅴ(進学力×革新力)×グローバル教育
 
☆ということになろう。芝浦工大は、Vタイプで、革新力の中核がロボット工学、グローバル教育は海外研修。
 
☆かえつ有明も、Ⅴタイプだが、革新力の中核がリベラルアーツ教育、グローバル教育では哲学が中核ということになろう。
 
☆こうしてみていくと、三田国際の大人気がよくわかる。Ⅴタイプであるが、進学力が海外の大学もかなりの数を輩出するだろうし、革新力は、かえつ有明以上にSTEAM型リベラルアーツ教育だし、グローバル教育は、インタークラスがかかえる帰国生の数が半端ではない。中学入試で入ってくる国際生の英語のレベルはその多くは、すでにCEFR基準でC1、英検でいえば1級レベルである。
 
☆中学入試市場において、従来型市場でさえもⅠタイプからⅢタイプにシフトし始めている。開成がその象徴的存在である。
 
☆そして、新市場ではⅤタイプが優勢であろう。
 
☆従来型中学入試市場では、Ⅰタイプは縮小し、ⅡタイプとⅢタイプになるだろう。
 
☆新中学市場では、Ⅳタイプはスローガンは革新力と進学力を統合させようとしていても、受験英語がエンジンである限り、本質はⅡタイプである。しかし、表現と本質の齟齬が目立ち、人気は伸びない。だから、2019年は、新中学入試市場では、ⅣタイプとⅤタイプの本物感の差異を、学校選択者が鋭く見極めようとすることになるだろう。
 
☆芝浦工大とかえつ有明の比較スタディは、今後の中学入試動向の方向性を見極める重要なヒントになった。
 
☆すなわち、2019年の中学入試で、人気校は、従来型の市場におけるⅡタイプとⅢタイプ、そして新中学入試市場であるⅤタイプの3つとなるだろう。
 
 

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