2019年中学入試の新フレーム(09) 未来即本来の入試の出現
☆東大推薦入試や京大特色入試、ミネルバ大学の入試、イギリスのAレベル入試、IB(国際バカロレア)のDP取得のテストなど、文科省のみならず、予備校、学校も熱心にリサーチしたという影響もあっただろおう。
☆英語4技能というのも、大きなきっかけになった。英語のスキルに限らず、読む、聴く、書く、話すというのは、思考力がどの程度であるのか、自己存在や他者存在にどのくらい問題意識があるのか、トータルに測りやすい。
☆だから、ある英語塾の宣伝のように、英語力と思考力を育てるという端的なアピールにもつながった。おそらくハイレベルな英語力は、結局母国語の能力に近づくから、当然英語で思考力を鍛えるレベルになる。
☆グローバル世界において、英語を使うというのは、そのレベルまで要請されているのだということも、うすうす世間も気になり始めてきた。
☆中学受験は、1986年ぐらいまでは、科目の試験と面接があった。願書には、志望理由書があった。それが、中学受験の大衆化によって、T型フォードの大量生産方式が主流になった。今も、中学受験生の人数が微増微減と攻防戦を続けているが、この大量生産、そして大量消費の生徒獲得戦略は変わらない。
☆そうでなければ、午後入試とか即日合格発表とかいう流れに置いていかれてしまう。このような大量生産方式は、センター試験に象徴されるように、大学入試も同様である。
☆だから、100人から200人という限定で、志望理由書→論文という思考実験→口頭試問という生徒の総合的な能力を自己開示できる試験を設定し始めた。
☆大学のコミュニティで、一緒に研究していけるかどうかのみならず、コミュニティの発展に貢献できる潜在的可能性をどのくらいもっているかその適合性を見ることが目的だろう。
☆ベルリンフィルの入団試験だって、基本はまったく同じだ。グーグル入社試験も基本は全く同じだ。オックスブリッジやハーバード、スタンフォードに入学を認められる場合もそうだ。イギリスのエスタブリッシュな私立学校であるパブリックスクールも基本は同じである。
☆新タイプ入試のような多様な入試が増えているというのは、1986年以降の中学受験の大衆化マーケットの中では、新市場であり、未来型入試なのであるが、それはしかし、本来的な入試だったのである。
☆これは、教育内容にも言えることだ。進学力だけではなく、革新力も表現できない学校は、このニーズを満たすことができなくなってきている可能性が生まれてきた。というのも、もし進学力だけを強調し、大学合格実績だけをアピールしている学校は、わが子は、結局T型フォード同様のあの大量生産方式の教育によって育てられるのかという不安がよぎることになるからである。
☆ICTの普及で、もはやあらゆる領域の市場で、個人に適合するようなシステムが浸透しつつあるし、保護者自身、そのようなシステムの制度や生産、デザイン、企画などなどにかかわる仕事をしている方も多いから、もはやT型フォード型の教育に疑問を持つのは当然である。医療関係の仕事は特にそうだ。
☆もちろん、産業の根底には、予見可能性と合理的計算性となんといっても効率性を無視することはないから、年間学費300万円で行列が並ぶ私立学校(海外ではたくさんある)ででもない限り、保護者だって、状況はわかっている。だからバランスが大切だということも百も承知である。そして、学校選択で迷うし、併願戦略も考えて考え抜くわけだ。
☆そのような制約の中で、未来即本来型の入試を創意工夫することができる学校は、学内で、同じようにいろいろな制約内で創意工夫をしようと議論や研修が行われているはずだと仮説を立てることは、保護者はお手のものだ。もちろん、その仮説を検証することも忘れない。
☆新タイプ入試の中でも、上記のフローチャートで、口頭試問のないところもあるし、思考実験も紙の試験だけのところもある。
☆そんな中で、上記のフローチャートを満たす学校が続々出現したのが2018年中学入試の特色だろう。志望理由書を前もって書かせるとか、試験の時間に書かせるとか、思考実験のテーマを事前に公開するとか、諸々学校によって違いはあるが、3つのポイントを全部実施する学校が現れたのである。思いつくまま列挙してみると、
日大豊山女子 思考力型入試
北鎌倉女子 日本語4技能入試
中村 ポテンシャル入試
聖セシリア グループワーク型入試
かえつ有明 アクティブラーニング入試
共立 インタラクティブ入試
☆女子学院のように、グループ面接があって、ほんの数分であるかもしれないが、議論させたりするなど活動的なことを実施しているところは、2科4科の入試を行っていても、実際には未来即本来型の入試を伝統的に行ってきたということもあり得る。
☆面接は合否に関係ないというよく言われる。その通りであるが、コミュニティでいっしょに学びを深めていく覚悟があるかどうかの適合性をみるかどうかは、冷静に考えれば判断がつくだろう。JGの場合は、結果的に入学前に礼拝から始まる説明会に参加するので、その段階で、覚悟を決めさせているから、結果的に面接で合否が決まるわけではないということになるのだろう。
☆いずれにしても、ICTの普及は、アダプティブラーニングが要求されざるを得ない。2020年大学入試改革によって導入されるeポートフォリオの本意は、結局、生徒1人ひとりに適合する学びをどうデザインできるかということに収斂されていく。
☆もちろん、今はまだ知る人ぞ知るという領域である。そして、これに基づいて行われるキャリアデザイン(今まででいう進路指導)も、偏差値で大量生産的に効率よく処理していくものではなく、生徒1人ひとりに適合したアダプティブキャリデザインになる。
☆となると、入試もアダプティブ入試になるのは論理必然なのである。ただし、欧米のように、少人数教育を行えない日本の教育財務状況からいって、どうしてもT型フォード的な教育が残滓とならざるを得ない。
☆そこでAIベースのICTを活用し、一学年200名前後でも、今までと同様の学費で、アダプティブラーニングができるように創意工夫する学校が出現するはずである。
☆かけがえのない存在価値を生み出す希少価値の学校。
☆そのような学校にどこが名乗りをあげるのか?少なくとも未来即本来型入試を開始しなければならない。JGや麻布は、すでに塾歴社会に囲まれてしまっているが、その入試システムは、上記3点セットを実はコンパクトに内包していると考えることもできる。
☆つまり、市場におけるポジショニングは、従来型市場、新規市場、市場超越のいずれかに相当すると思う。静岡聖光学院は、私立学校としての市場が地域に成熟していないために、結局は、市場超越のポジションイグを確立しなければならないというところに来ているのである。
☆麻布の創設者江原素六は、青年即未来という信念をもっていた。多様な価値と存在の重要性が液状化現象を起こしている現代にあって、それはこう表現しなおす必要がある。
☆青年即未来即本来と。
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