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教育の再定義の時代「グローバル教育3.0」(02)

☆第1部は、「国の教育政策」、「中高の21世紀型教育改革に適応できる未来の大学」、「そのキャリアを選択する最初の関門である中学入試市場のウネリ」の3つのアプローチから教育の再定義について、3人の基調講演があった。
 
☆その一人首都圏模試センター北一成氏(取締役 教育情報部長)は、エビデンスに基づいた鋭く深い洞察力によって、中学入試に生まれているウネリについて見通した。
 
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☆北氏によると、中学入試市場は、「一握りの優秀生を生み出す塾歴社会」と「1人ひとりの才能を大切にする脱塾歴社会」が混在しているという。
 
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☆この流れは、中学入試をめぐる外部環境である、大学入試改革、第4次産業革命、グローバル経済格差問題の行方、軍事力と経済力と教育力の均衡をどう形成するかという国際的な葛藤などもウォッチしている北氏にとっては、グローバルなパラダイム転換につながっている日本社会の構造転換の影響を否定できないという見方をしている。
 
☆それゆえ、今回のウネリは明治維新に匹敵する動きなのだと語る。
 
☆とくに近年、国力とイノベーションは密接な関係であることが広く認識され、そのイノベーションを生み出す人材は、中高から大学へというスムーズな循環システムを創らなければ、生まれないという考え方が、産官学で定着しつつある。
 
☆それゆえ、その入り口である中学入試市場における新しいウネリ=中学入試市場の構造転換を追究している北氏の論は傾聴に値するのである。
 
☆北氏は、偏差値と2科4科、新タイプ入試と受験者数の3つの項目のクロス分析を丁寧にしている。このようなエビデンスをきっちり分析できているのは、首都圏模試センター情報部のみである。
 
☆だから、4科目入試は、難関校というレンジでは増加しているが、それ以外では2科とか新タイプ入試が増えているとデータに基づいて語ることができる。そして、他の教育ジャーナリストやシンクタンクの中には、これを逆手にとって、要するに4科で受験する生徒は高偏差で、そうでない生徒は偏差値が低いなどと決めつけてしまう方もまだいる。
 
☆しかし、北氏は、その同じ現象を中学入試市場の構造が変わってきて、もっと多様な価値観が参入してきているからだと分析する。だいいち、4科で受験する生徒は高偏差値で、そうでない生徒は低偏差値だという言い方は、子どもの才能をつぶす可能性がある問題発言である。
 
☆実際には、4科と思考力入試を受けて4科は合格できなかったが、思考力入試はできたという生徒もいるし、その逆もいるし、思考力入試だけ初めから受ける生徒もいる。
 
☆「S(見える得点力)/F(潜在的な能力)」という能力構造になっているが、従来の中学入試市場は、Sを重視する市場だったが、現状はS/F、S/f、s/F、s/fの多様な能力構造に適用する入試=アダプティブ入試が中学入試市場の構造になってきている。
 
☆従来の中学入試市場は、S/F、S/fの生徒とのマッチングを求めていた。そして、難関校にS/fの生徒が入学した場合、fをFに開花するプログラムを持っていないがゆえに、こんなはずでなかったという生徒も出てきていたのである。
 
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☆それゆえ、開成を始めとする難関校も、S/Fの生徒がたくさん入学してくるように、教科の中に思考力型問題を埋め込み始めたのだと北氏は語る。おそらく開成はここ数年米国のアイビーリーグに進学者をたくさん輩出しているから、Sだけではどうにもならないということを身に染みて感じたのだろう。
 
☆そして、S/Fに絞ったところで、生徒募集に困らないから、S/fが敬遠しても構わないのだという意志決定ができる。そうなると、S/fの生徒はどこへいくのか?北氏は、受験生の保護者自体が、従来型の中学入試の構造=塾歴社会の壁を越えられない場合、fをFに成長させるプrグラムを持っていないような進学校を結果的に選んでしまう可能性があることに警鐘を鳴らすのである。
 
☆この北氏の勇気ある言動は、あらゆるセミナーでアウェイの波紋を呼んだものだが、最近ではそうでなくなってきている。つまり、北氏の啓蒙は保護者だけではなく、学校の先生方にも影響を与えている。
 
☆たとえば、本郷のような超進学校が、S/fの生徒をS/Fに転換できるプログラムをアピールしたとしよう(実際には持っているのに、現在全くアピールしていない)。一気呵成に男子校の中学入試地図が変容するだろう。
 
☆同時に、s/fの生徒をS/Fに成長できるプログラムを開発した学校は、そこも一挙に人気が出るだろう。ただし、このような学校は、偏差値が上がるから、いずれは、S/fの生徒が受けるようになってしまう。そして、三田国際や開智日本橋のように、S/Fの生徒しか合格できないようになってしまう。
 
☆各学校が同じ速度で進化するわけでないから、まだまだs/f、s/Fの生徒にとって門戸が開かれている学校は存在している。
 
☆つまり、これが北氏の語る中学入試の構造転換である。今まで、Sでなければ受け入れられなかった市場だったが、fであれ、Fであれ、創造的才能を開花させたいと思う受験生や保護者に、道が開かれたということなのである。
 
☆もちろん、北氏は、入り口だけs/fに門戸を開いて、入学後Sにする大学受験のためだけの教育活動しか行わないのならば、それは要注意だということを説くことも忘れない。
 
☆その見分けがつかないのは、偏差値軸だけでみているからだと。そこで、首都圏模試センターは、思考コードという多次元知能に気づく指標を開発したわけである。
 
☆思考コードという多次元知能を見極めるメガネをかければ、その学校の3つのポリシー(アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー)にs/fからS/Fへ成長できる教育内容が一貫しているかどうかが、見えるというわけである。
 
☆eポートフォリオが、今話題になっているが、これも一点刻みの得点力で合格を競う時代から1人ひとりの資質能力と大学とのマッチングを見極める信頼性と妥当性を重視する時代に移行するからだという考え方が根底にはある。
 
☆中学入試のウネリは、このような政策論的な考え方が世に出る前に生まれているから、北氏がいつも、中学入試は先行するというテーゼを語っていることは、そのまま的中したようだ。
 
☆どうやら、今回の2020年大学入試改革は、文科省による上からの政策というより、時代の要請に産官学がようやく対応するようになってきた結果でてきたものであるととらえたほうがよいのであろろう。
 
☆私立学校が、政策側よりもはやく動けるのは、時代の精神を直接見通す特徴をもともと有しているからだろう。首都圏模試センターが、時代のウネリをいち早く洞察できたのは、リサーチ対象が、政策の意向を介在させる高校入試や大学入試の市場ではなく、その影響が比較的少ない中学入試市場だったからということも大きいだろう。
 

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