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2019年中学入試の新フレーム(24) 新タイプ入試の背景にSDGs

☆東洋経済ONLINEに、こんな記事が掲載されている。≪「SDGs」に取り組む公立小、学力急上昇の秘訣 3/18(日) 6:00配信 ≫がそれだ。
 
☆昨年12月26日、首相官邸で開催された「第1回ジャパンSDGsアワード表彰式」で、児童数352人の東京都江東区立八名川(やながわ)小学校が、地方自治体や大学、大手企業、ボランティア団体などとともに、栄えある「SDGsパートナーシップ賞」(特別賞)を受賞した。
 
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☆教育の場にESDの風を吹き込みSDGsを根付かせた手島校長は、3月末をもって退職するということもあり、手島校長の理念について、インタビューした内容が中心の記事。
 
八名川小は「ユネスコスクール」としてESDの実践を続けてきた。ESDとは、Education for Sustainable Developmentの略。ユネスコ(国連教育科学文化機関)が提唱した概念であり、この活動が、SDGsに継承された。
 
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☆記事の中に手島校長の言葉がこう記されている。
ESDの学びの本質とは何か。その対極にあるのが、「知識を教え込む20世紀型の教育だ」と手島校長は指摘する。「そのような教育は点数主義や序列主義になりがちで、ついていけなくなった子どもたちは学びに楽しさを感じることができず、学校は苦しみの場になってしまう。これは教育に名を借りた虐待にほかならない。登校拒否の多発にもそうしたことが反映している」(手島校長)。
☆「教育に名を借りた虐待」とは鋭くそして厳しい言葉であるが、昨今の文科省、財務省、内閣府の一連の事件を見れば、日本官僚近代社会の暗黒面を射抜いた言葉である。
 
☆手島校長は教師と生徒と保護者と共に、その暗黒面から教育を救い出し、SDGsのグローバルゴールズの4番目の世界のすべての生徒が享受できる教育の質を高めようという目標に向かって頑張っているのである。
 
☆手島校長の善きアドバイザーである多田教授についても、記事にはこうある。
 
手島校長の最大の理解者であり、支援者でもあるのが、金沢学院大学の多田孝志教授だ。13年の長きにわたり、多田教授は手島氏が校長を務める小学校を訪れ、アドバイスをしてきた。
 
☆今回の受賞はどうやら一朝一夕の試みではなかったということだろう。多田教授の言葉も記されている。
多田教授が、八名川まつりに訪れた全国の教職員を前に語った。「20世紀型教育では、21世紀の人間教育はできない。持続可能な教育とは、個々を自立させる力と協働を作ること。(有名なコンピュータ科学者が言うように)未来を予測する最善の方法は未来を自ら作ることだ」。
☆ともすれば「教育に名を借りた虐待」になりかねない「20世紀型教育」から「個々を自立させる力と協働を作ることによって、未来を自ら作る21世紀型教育」へ公立学校がシフトする大切なモデルがここにはある。
 
☆この流れは、しかし、公立学校のみならず、私立学校でも起こっている。2科4科という20世紀型教育の流れを汲む入試もまだ行われているが、個々を自立させる力と協働を作ることによって、未来を自ら作る21世紀型教育」を象徴する新タイプ入試が市場の25%シェア(首都圏)になってきているのだ。
 
☆この状況を、別の言葉で置き換えると、塾歴社会から塾歴解放区へという流れである。
 
☆6000人は、塾歴社会にぶらさっがっている。10000人は塾歴解放区に賛同している。残りの24000人は、その両方の間で、熟慮し迷っている。
 
☆2020年東京オリンピック・パラリンピックの理念において、SDGsが重要な位置を占めるとされている。であるならば、教育も21世紀型教育に大きく舵を切る必要があるのではないか。
 
☆また、国力が衰退している日本社会は、アジアに市場を強く求めていく方向性をとっているらしい。そうであるならば、今度こそサイードが言うオリエンタリズムから解放されるように、アジアの人々と連帯していくべきである。
 
☆オリエンタリズムとはある意味、近代に名を借りた虐待であり、塾歴社会と同根である。教育において、ここから解放される21世紀型教育にシフトすることが、1人ひとりの生徒にとって幸せであり、そのことが世界を変えることにつながる。
 
☆手島校長は自らのこのような教育実践を振り返り、こう語っている。

「学びと実践が1つにならなければ、世界を変える力にはならないからだ」

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