思考コードで見る「教育・産業・社会」(12) 東大は民間英語試験を合否判定に積極的使った方がよい。
☆各民間英語試験団体が、自己申告しているだけの話なのだ。それゆえ、怪しいとかまやかしだとかいうわけだろうが、CEFRについて教育関係者(英語教師だけではない)が話し合ってみたらどうだろう。そこに帰国生も含めて生徒や学生も交えてはどうだろう。
☆戦後、そしてベルリンの壁崩壊後、欧州は、複言語や多様性の状況をいかなる方向づけにもっていくか欧州評議会で議論してきた。CEFRは英語教育という狭い意味ではなく、言語活動そのものの問題としてとらえてきたから、言語学、認知科学、心理学など他の科学の連携によって検討されてきた。
☆上記写真にあるようなCEFRのコンセプトブック自体は、そのような学問的な論文ではないから、その背景が見えないが、教育、文化、社会など多面的考察かつ深い知性が盛り込まれている。
☆だから、4技能と言っても、上のような4つの言語活動となっている。それぞれの基本的な活動の例は、こんな感じになっている。
☆どんな邦訳があるかわからないが、インプット、アウトプット、相互活動、媒介という4つの活動が想定されていて、日本の英語教育とは違う。たしかに、インプットするときには、読む行為があるだろう。アウトプとするときには、書く行為、話す行為があるだろう。相互活動と言えば、会話や議論などがあり、実は読む、書く、話す、聞くという活動は統合されている。
☆そして、おもしろいのは、媒介と訳すかどうかわからないが、MEDIATIONというのがある。何だろう?日本にいるとわかりにくい。実際には、この機能はもちろん存在しているが、複言語の状況ではないから気づかないのだ。
☆ヨーロッパやアジアにいくと、そこに3つ以上の言語を話す人たちがいるのは、日常的なシーンだ。このとき、共通言語がなかったらどうするのか?たとえば、フランス人と日本人がいたとして、もう一人フランス語と日本語ができる人がいるわけだ。
☆すると、その人が媒介して、互いの理解や新たな発見をファシリテートする役割。通訳をすという感覚より、文化の違いを尊重しながら、実はフランス人はフランス人でアイデンティティのさらなる発見があり、日本人は日本人としてのアイデンティティの発見がある。
☆もちろん、もっと個人的なアイデンティティを発見することの方が多いかもしれない。それでいて、多様性を見出し、お互い、つまり他者の理解をしていく対話。さすがにヨーロッパはダイアローグとしての哲学が日常化している。
☆日本では、このダイアローグを「弁証法」と訳して哲学の殿堂の中に閉じ込めたが、実際は媒介という言語活動が、日本人どうしてもあるのだ。それが思考を編み出していくわけだ。
☆アクティブラーニングだとか、PBLだとか、グループワークだとかいうとき、ファシリテーターという役割がとってつけたように浮上するが、これは言語活動の役割の一つで、新しい概念ではない。
☆ただ、もちろん、それが意識されて対話されたり、授業がおこなわれてきたわけではないから、新しく見えるのだろう。
☆そして、この媒介の役割がないと、A1→A2→B1→B2→C1→C2という言語心理学的な発達がおこらないわけだ。ファシリテーターとしての教師の内面的な言語活動がとても重要なのは、そういうわけだ。
☆その意味で、東大がCEFR基準で民間英語試験を活用すれば、言語、認知、社会、哲学、脳科学など統合した言語活動(私はそれをC領域思考と呼んでいるわけだが)を中高で、そして大学で広められると期待していた。
☆東大のコロニアリズムな影響力を逆手にとりたかったのだ。それによって、学歴社会=塾歴社会が内部から崩れていけば、東大にとっても中高にとっても、つまり学生や生徒にとっても未来は開かれるとひそかに思っていた。
☆今回は軽やかに通り抜けられてしまった。まあ、CEFRだけが武器というわけではないから、また別の武器を考えよう。もっとも、そちらの方は、どうやらうまくいっているようだが(微笑)。
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