思考コードで見る「教育・産業・社会」(19) 落合陽一氏の教育アップデート
☆落合陽一氏の「日本再興戦略」(2018年幻冬舎)がおもしろい。落合氏はラング(文字)だけではなく、パロール(音声)でもアウトプットしているから、Youtubeで耳を傾けることもオススメする。要するにネットやコンピュータなどのテクノロジー親和性が高い人だから、最先端の技術を活用して発信しているのだろう。
☆氏は、改革とか革命ではなく、アップデートであるというカジュアルな言葉を選んでいるが、氏の描く未来は、幾何級数的な変化が起こるから、未来から見れば、改革や革命に相当する。微分的位置で見れば、アップデートということ。
☆氏は、アーティストであり、大学研究者であり、企業経営者でもあるから、そのような未来を描きつつも、現状のメディアや投資家の目先の利益を考える習性に合わせて、アップデートという表現を選択したのだろう。バージョンアップでもよいのだけれど、高速性を意識しているから、更新度の高いイメージを発散するアップデートという言葉を選んだのだろう。
☆それが、氏の構築しつつあるデジタルネイチャーの計算結果だったのであろう。この計算機自然を意味する超時空的自然は、ある意味氏の頭脳の外化とか形式知化したものなので、計算システムはともかく、氏の著書や動画をリサーチすることによって、この世界がどんな時空を意味しているかその発想に触れることはできる。
☆文系人の私には、そこまでが精いっぱいで、あとは分かる人にお任せするが、この落合氏の本や動画は、ぜひ高1生が触れるのがよいと思う。
☆もちろん、鵜呑みにせずに、クリティカルシンキングを発動しないと東大を狙っていたり、一般試験のためにがんばっている生徒には、劇薬になるかもしれない。
☆しかし、未来の自分の価値を得るために、信用力を身につけようとする生徒―つまり、AO入試などは、この自分の信用力のアピール―には、これ以上刺激的な本や動画は、現存しないのではないか。
☆氏は、中学受験の大衆化が起こった翌年の1987年に生まれているから、1999年という、私立中高一貫校がバブル崩壊後の経済の空白期に私学危機に陥ったときに中学受験をしている。いや高校からかもしれないが、中学からだと時代状況はそういうときだった。
☆ともあれ、開成に進学し、物事を、分解―改造―鑑賞―いたずらという循環システム思考の持ち主だったから、一般入試は興味と関心がわかなかった。それでも東大というポジションはとっておこうと思ったのだろう、二浪していったん筑波大に進み、東大で博士をとっている。
☆同書の中で、氏は、自分が開成出身者であることを語っていないが、その時代の学校の授業はつまらなかったといっている。それでも数学は当時から神童とよばれていたらしい。
☆要するに、落合氏は、今でいうC領域思考人間だから、A領域(知識・理解)思考やB領域(応用・論理=分解)思考には、興味がなかったということ。大江健三郎も一浪したが、最初はC領域思考に集中してしまい、A領域の問題を解かないまま終わってしまったから、2回目は、C領域思考を封印して臨んだと語っているのと同じ。おそらく、落合氏は封印しなかったのだろう。
☆中学入試も、2科4科入試はA領域思考でほとんど十分。一方、新タイプ入試は、C領域思考が活用できる。
☆落合氏は、中高時代の教育のアップデートは次の2つがポイントであると語っている。
1)ポートフォリオマネジメント
2)金融的投資能力
☆もちろん、これは株などのポートフォリオや商売やる能力などベタな話ではない。先ほどクリティカルシンキングが必要というのは、こういう落合氏の言説の文脈的な背景を読む力や他の言葉に置き換える力がないと誤解をしてしまう可能性があるということをいいたかったのだ。
☆たとえば、これからは「士農工商」を復活せよなんて言う件があるが、別に封建時代に戻ろうと言っているわけではなく、別の個所ではクリエイティブクラスの登場が必要だといっているから、そのことを落合氏独特のメタファーで語っているのだと置き換えなくてはならない。
☆さて、このポートフォリオマネジメントは、まさに「思考コード」によるセルフアンネジメントの能力に近いものがある。自分の関心あるターゲットが、どの思考の領域で解決できるかを計算できるようになっていればよいわけである。
☆これには、自分のポートフォリオをデータ化して計算できるようにしなければならないから、ICTは必要。今グーグルドライブやグーグルクラスなどを活用すれば、それはできてしまう。首都圏模試センターは、すでに、そこまで成績表で表現している。
☆それから、金融的投資能力。自分が中高時代に活動していることは、未来の自分の価値をどのくらい高められるのか、信用力はどどれくらいなのか考えて実践できる能力もその一つだろう。C領域思考人間というのは、未来の価値を手に入れる信用力をゲットできる。
☆C1英語力、PBL(プロジェクト型学習)スキル、ICTスキル、STEAM学習が、C領域思考人間を育成する。落合氏が語る日本官僚近代社会がつくってきた標準化指標は、A領域思考人間が活用してきた。
☆ポートフォリオマネジメントによって多様な価値基準を活用していけるC領域思考人間は、多重偏差値になるから、改革というより確かにアップデートということかもしれない。
☆偏差値というのは、ある母集団におけるポジショニングをリフレクションする計算式。母集団の多様性があれば、一つの基準では役に立たない。どの母集団の中で、自分は突出できるのか?そこから自分の未来をはじめるとモチベーションがあがる。
☆自分の興味と関心がない母集団の中で、モチベーションがないと、モチベーション格差によって、ストレスが高くなる。モチベーションのない状況から人生をはじめるのは、未来がどうなっているから火を見るより明らかである。
☆そんなモチベーション格差を解決しないまま、今までのキャリア教育というか進路指導は行われてきた。それは近代の暗黒面なのだが、そこをさっさと去り、突出できるところから始めたいものだ。もちろん、後から、関心がなかったものに関心の灯がともることは大いにある。というか、必ずそうなるものである。
☆素粒子の数式と一般相対性理論の数式が統合できる神の数式があるように。
| 固定リンク
「クリエイティブクラス」カテゴリの記事
- 【チームG2C】新しい次元が現れる(2018.04.19)
- 【SGT】聖学院児浦先生との対話 グローバル教育3.0へ(2018.04.04)
- 【お知らせ】大阪市立水都国際中に太田晃介先生移籍!(2018.04.03)
- 思考コードで見る「教育・産業・社会」(23) 思考コード=開放系思考力育成の機会を1人ひとりに。(2018.04.02)
- 思考コードで見る「教育・産業・社会」(22) 思考コード=開放系思考力(2018.03.31)
最近のコメント