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2019年大学入試問題の新フレーム(04)思考力要する入試問題増加傾向か?

☆昨日、工学院大学附属中高(以降「工学院」)の進路指導部長の新井先生と話す機会を得た。今年は、京大をはじめ、多くの大学で出題ミスが多発していて、ラッキーな生徒もいただろうけれど、そうでない生徒もいる。運という要素が避けがたいのが世の常だろうが、人為的に作り出すのはやめてほしいというのは、教員みんなの願いだろう。
 
☆しかし一方で、これは入試問題の作成過程が変わった影響かもしれない。固定的な従来のルーチンが、新しい入試問題を作成することによって、崩れているのかもしれない。そういう意味では、やはり大学入試問題の質の何らかの変容が起きている可能性があるということだった。
 
 
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☆それがどの程度なのかは、今年1年入試問題の分析をながら見えてくるのだが、薬学部や医療系の入試問題には、顕著に変化が現れているような気がするとヒントを頂いた。その冷静な大学入試問題の動向を読み解くトークを聞いて、近い将来、工学院の大学合格実績は爆発するなと予感した。
 
☆それはともかく、慶応義塾大学薬学部の化学の入試問題をみてみたら、なるほど記述の問題が出題されている。思考力を要する問題ということだろう。
 
☆もちろん、知識が前提であるが、おもしろいのは、問5は、知識の前に銅と銀の比較をして、おそらく銀の方が酸化しにくいからだろうという論理的仮説が先に来るという点では、知識がまずあって、そのあとに思考が働くというわけではないことが了解できる。比較スキルと知識の再現スキルが必要だから、首都圏模試センターの思考コードでいえば、B2思考力ということになるか。
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☆そして、論理的なフワッとした仮説を、知識で論理的に記述していかなければ、得点にならない。結局は、知識なのだが、いきなり知識が想起されて解答が再現されるというわけではない。
 
☆新井先生と、今年の東大の生物の最終問題で、「自由な発想で考え、合理的に説明せよ」という条件が、入試問題の変化の象徴かもしれないと、なぜか互いに笑ってしまったが、たしかに慶應のこの問題は、最初自由な発想があって、あとは知識によって合理的に説明していく問題だ。
 
☆続く問6も、やはりそうだ。高温になると液化に向かうから、当然分子や原子の間の振動が激しくなる。すると、自由電子の通る道が安定しない。そんなビジョンが特に特別な知識がなくても物語れる。あとは、電気伝導性の特性をきっちり理解している知識で構築していく。因果関係のスキルと知識の再現スキルで解決できるからこれもB2思考ということになる。
 
☆なるほど、自由な発想と合理的説明セットで考えるということか。ところが、文系の記述は、その合理的説明をする知識というものが、与えられた課題文にあるものを活用するから、あらかじめインプットしておいた知識とは違うものがあるので、そこから理解しなければならないから、極めて自由度が高いようにみえる。
 
☆しかしながら、課題文にしろ知識にしろ、合理的説明、つまり条件がなんであるか、外さないことも思考力だということは、文理関係なく共通しているということだろう。
 
☆そのうえで、自由な発想というわけだ。知識がまず大事で、そのうえで思考せよというのは、どうも知識より思考力という偏見があるから、それに対する学問あるいは本来的な学びの防衛機制でもある。
 
☆条件の中で、つまり制約の中での自由な発想とその制約を創造的に破壊する自由な発想の使い分けが必要で、大学入試の自由な発想は、あくまで制約の中での自由な発想の場合が多い。そこの見極め=メタ認知能力はポイントでもある。
 
☆ともかく、その枠内での自由な発想という思考力問題であれば、採点も可能なので、変化する時代には、たしかに増えてくる可能性は高い。
 
☆しかしながら、制約それ自体を捉え返し、創造的に破壊する自由な発想を問うてくる問題が、ときどきある。そのような本格的な創造的思考に挑戦する問題は今後増えるものだろうか?
 

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