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2019年大学入試問題の新フレーム(05)キャリア形成問題の出現。

☆条件や制約の中で、自由な発想で、合理的に書く問題。典型的には小論文。しかしながら、この自由な発想も、与えられた条件に書かれていないだけで、条件が与えられるやステレオタイプな発想が自動的に浮かび上がってくるという問題もある。
 
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☆上記の慶應義塾大学看護医療学部の小論文がそれだ。課題文章を読んで、「生態系」について200字でまとめる問題がまずでている。条件を設定するというマインドセットを行うわけだ。
 
☆200字だから、「生態系」についてまとめられているところを転写するという抽象化スキルを発動し、要素と関係の比較スキル、そして関係でとらえたほうが良い根拠スキルを発動する。ここまではB2思考力だが、これだと100字で終わってしまう。そこで、説明を書くのだから、具体的な説明を追加するという具体化スキルを発動する。それゆえ、スキルが3つを超えてしまうので、首都圏模試センターの思考コードで、B3思考力ということになる。結構めんどうな問題だ。
 
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☆また、続く問題は、「場の多様性」のメリットを引き出すためには、人間がどのような考え方でアプローチするのがよいのかを考える論述問題。
 
☆「多様性」とは何かという問題が条件で、その条件という制約内で、自由な発想でということだろう。しかし、人間中心主義の近代化の影の部分を光の部分に転換するにはどうしらよいのかという発想がすでにマインドセットされていて、書くべき内容はほぼ決まってしまう。
 
☆しかし、これを、自由な発想で、合理的に書く問題ではないと批判しているわけではない。看護医療学部という性格上、人間中心主義に代表されるような近代化の闇の部分解消にチャンレンジできる生徒でなければ、受け入れられないよという研究生活や探求活動のコンセプトを共有できるかどうかを問うている問題なのだ。それゆ、これをいわゆる小論文の問題だとみなさないほうがよいだろう。
 
☆どちらかというと、志望理由書に相当するとみなした方がよい。つまり、大学入試問題に、ダイレクトに自分のキャリア形成を示す問題が登場してきたということだろう。
 
☆このことは、実に重要なインパクトを与える。今まで、学校でどんな生活をし、価値観をもってきたかは、一発ペーパー試験では評価されないとされてきたが、それが崩れてきたということを意味するからだ。
 
☆そんな非認知的能力を採点できるのか?もちろん、得点をつけるのが目的ではない。賢さは、大前提で、さていっしょにやっていけるかどうかまでを評価しようというのが目的なのである。
 
☆良し悪しは別にして、どうやらリバタリアン的な考え方では、大学入試もままならなくなっていくということだろうか?信頼できるコミュニタリアニズムの出現ということか?これも間違えるとイデオロギーチェックに走り、息苦しくなるのだが、新自由主義と呼ばれる幻想払しょくに時代が動き始めたことだけは確かだということではあるまいか。

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