2019年中学入試の新フレーム(19) 首都模試とコラボする新たな塾市場
☆3月4日(日)、首都圏模試センターは、塾対象「2018年中学入試報告会」を開催した。会場は、新たな教育のバージョンアップを仕掛けようとしている東京家政学院で行われた。同センターの主催している「統一合判」に塾生を参加させている塾と絆を深めようとするイベントだったのだと思うが、それにしても会場は大入りだった。
☆生徒募集を、日本の国力を弱体化させる塾歴社会(東大や御三家合格を独占している一つの塾が支配する社会を、教育ジャーナリストおおたとしまさ氏が名付けてから、受験業界で人口に膾炙されるようになった)に入会せざるを得ない子供たちに依存せざるを得ない御三家とミミック御三家の現状。このような本来の私学の系譜とは矛盾した事態が、高偏差値層において続いている。
☆第1部で、首都圏模試センター取締役・教育情報部長の北一成氏は、受験生が「塾歴社会」のみならず「塾歴解放区」を選択できる多様な中学入試市場を創出することが必要だと提唱。そのためには、創造的破壊が必要だが、その先鞭を私立中高一貫校がつけている。
☆私立学校が塾歴解放区を創ろうとしているのだから、塾もその塾歴解放区拡大を支援する創造的破壊を行う必要があるのではないかと。市場の縮小を逆転させるには、精神的にも物質的にもイノベーションが必要なのである。
☆この中学入試市場における「創造的破壊」が3部構成の長大な報告会の通奏低音として響き渡った。
☆第2部は、株式会社ペンデュークの羽後博司氏と今回のイベントプロデューサーでもあり個太郎塾の教室長でもある首都圏模試センター個別指導CPPリーダー立石哲也氏によって行われた。首都圏模試センターの活用法講座だった。
☆羽後氏は、統一合判の試験の活用法について語った。学力をどのようにアップさせるか、対面式の指導方法や面談の際に役に立つ情報について語られた。そして、この対面式のファシリテートこそ、塾歴解放区ならではの生徒1人ひとりの学力の背景にある才能を引きだす大きなきっかけいになるのである。
☆その部分は、最近では非認知的能力といわれ、社会における自分のポジショニングをはっきりさせ、そこを足場に多様な人材とコラボして、未来を創っていく精神を養うことにつながるのである。
☆塾歴社会は、基本優勝劣敗競争社会の価値観が支配しているので、非認知的能力は育ちにくく、高学力低人間力を生み出し、私立学校進学後も、その状況を払拭することができないまま高学歴大学に進んでいく。これでは、日本の国力の中核となる高度人材育成の危機がやってくる。
☆それゆえ、塾歴解放区を私学と塾は連携して創り出し、人材育成のリスクマネジメントをしなければならないわけだ。この私立学校の動きに対し、あるシンクタンク代表は、よく分からない入試というレッテル貼りをして、ヨーゼフ・ゲッベルスのような広報活動を行っていると聞き及ぶ。
☆首都圏模試センターは、塾歴解放区の塾と共闘して、このような動きから子どもたちを守ろうとしているのだと思う。
☆そして立石氏は、その統一合判の背景に紐づいている膨大なデータを活用して、併願戦略や合格戦略をいかにたてるか講義を行った。塾歴社会から解放されるには、データや情報を巧みに活用できなければならないとということだろう。
☆第3部では、中学入試市場のパラダイム転換の仕掛け人である、首都圏模試センターの取締役で統括マネージャーの山下一氏と教育界の時の人石川一郎先生(香里ヌヴェール学院)のトークショー。2日前に、模擬試験会社―私立学校―塾という三位一体を見えやすくするためにと、急遽塾屋の立場でと誘われ、私も登壇することになった。
☆今回創造的破壊によって生み出されたものとしては、私立中高一貫校が創発した英語入試と新タイプ入試の話が中心だった。
☆そして、このような新タイプ入試を、よく分からない入試としてレッテル貼りするシンクタンクの存在のおかげで、首都圏模試センターの教務陣が、データによっていかにそうでないかを証明していく創造的破壊を起こすことにつながった。それが思考コードと思考スキルの開発である。
☆今年4月からの統一合判では、テストの解答解説にその説明が、一問ごとに加わることになる。だから、このシステムを共に学び、中学入試市場を活性化し拡大していきましょうと首都圏模試側からて呼びかけられた。
☆石川先生は、教育的見地から、塾歴解放区では、思考コードのC3へのチャレンジが重要であり、授業、テスト、評価が、A領域から解放される必要があると未来の教育を語られた。
☆私としては、本当に塾歴解放区が創造的破壊を行うのなら、洗足とフェリスの偏差値が今や同等になったように、石川先生と仲間の学校は、そのような下克上を起こそうという野望を抱いているのではないかと斜めから問いを投げてみた。
☆しかし、NHKやメディアで引っ張りだこな石川先生は、そのような下品な考えや言動はせず、軽くいなされた。
☆しかしながら、語らないことに真実は宿るから、目標にはしていないが、結果的にそうなるだろうということは思っているだろう。
☆それにしても、今年の東大の問題と私立学校の入試問題を比較しながら、その考える質の共通性も語られたのだが、参加された塾の先生方は、真剣に考えていた。報告会は長時間に渡ったのだが、その集中力がきれることはなかった。日ごろの塾での授業の魂を共有できたと感じ入った。
☆東大の生物の問題ではないが、この自由な発想と合理的思考という一見するとパラドクシカルな関係が、化学反応を爆発させ、塾歴解放区を生み出すのかもしれない。
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