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2019年中学入試の新フレーム(31) PISAの歴史的役割 次のステージはどこに。

☆ベルリンの壁崩壊やEU統合、ユーロ誕生のプロセスの中で生まれてきたPISA。日本も、その当時はグローバル教育1.0の段階で、まだまだドメスティックな教科縦割りのカリキュラムや評価方法だったから、PISAによる知識ベースではなく考え方や思考スキルベース、それをひとくくりにコンピテンスとかコンピテンシーとか表現してきたわけでが、ともかく、世界標準のモノサシを求めるようになった一契機であったことは、歴史的な大きな役割があったと思う。
 
Pisa
 
☆しかし、朝日新聞(2018年3月26日05時00分)「PISAが問う、いま必要な学力 シュライヒャーOECD教育・スキル局長に聞く」によると、2018年に行われるグローバル・コンピテンスの調査については、日本は参加を見送るということらしい。
 
☆このコンピテンスは、「異なる視点から世界を見る能力で、協働できるかだけでなく、世界が示すような多様性と向き合うことができるのか」を問う能力だということ。
 
☆しかしながら、さすがにこのコンピテンスは、PISAのようなアセスメントで測定しランキングを出してしまうのは、なかなか難しいところがある。
 
☆というのも、個々のコミュニティの組織の在り方が違い、その違いに応じて協働の仕方やコミュニケーションの取り方があり、それはあまりに違いすぎる。
 
☆すべての国やコミュニティがティール組織やボトムアップ型組織になることは、理想でもなんでもない。すると、そのコンピテンスは、時代や組織との関係性で決まってくるから、グローバルコンピテンスといっても、果たしてそれが妥当かどうかは判断がつきにくい。
 
☆信頼性や正当性がかりにあったとしても、妥当性があるかどうかは不明だ。それこそ多様で異文化なのは、それぞれの文化を形成している国や組織の在り方が違うからであり、PISAが仮説であるのかもしれないけれど、一つの基準で調査してランキングを出すのは、世界大学ランキングや数学リテラシーなど、ある程度学問や論理性として世界共通なものがあるものとはかなりギャップがある。
 
☆PISAは、歴史的な役割を果たしてきたが、グローバル教育2.0、グローバル教育3.0と歴史が変化してきている中で、次なる役割は何であるのか、自らも問い返す必要がある。
 
☆あまり誰も問わないが、PISAが逆利用されて脱ゆとりカリキュラムとして現行カリキュラムは成立したわけだし、異なる視点から世界を見る能力で、協働できるかだけでなく、世界が示すような多様性と向き合うことができるのかを問う能力を大切にしていながら、塾歴社会を生み出している教育産業とシュライヒャー氏は連携しているわけである。
 
☆日本国内に横たわる様々な問題や格差は、学歴社会を強烈に支持する塾歴社会によって生み出されている部分もある。もちろん、もっと他の条件も絡んでくるが、大きな要因であることは間違いない。
 
☆シュライヒャー氏自身、自分の言動がパラドキシカルにも、日本の教育改革を改悪に導きかねないことに気づいていないし、このように語っても聞く耳を持たないだろう。
 
☆そして、だからなんだというわけでも、もちろんない。時代は別のところで激しく動いているのだから。

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