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東京家政学院 女子高等師範学校の同窓の精神のバージョンアップへ

☆昨日東京家政学院で、長尾校長をはじめ、幾人かの先生方からお話を聞く機会があった。東京家政学院といえば、女子高等師範学校(今のお茶の水女子大学)出身の大江スミが創設した学校である。
 
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☆興味深いのは、女子高等師範学校出身者の同時代人に後閑キクノと安井てつがいる。後閑は桜蔭の初代校長だし、安井は、東京女子大学の創設に新渡戸稲造と共にかかわり、2代目学長になっている。
 
☆特に安井てつと大江スミは年齢的にも5歳くらいしか違いがなく、イギリス留学も前後して行っているから、何かと比較される。
 
☆今年の東大の世界史の問題ではないが、日本の女性の近代社会進出の幾人かのプロトタイプの代表的な2人である。
 
☆日本の急激な近代化の光と影に女性は翻弄されてきたし、いまもまだまだそうなのであるが、安井と大江は、独自の路線を歩みながら、格闘していった。
 
☆そして、ある意味2人の女性ための教育観は、統合すべきところに来ている現代を思えば、いかに東京家政学院は、日本の本当の近代社会を形成する際に重要な拠点か理解できるだろう。
 
☆安井てつは、教養と家政学の両方をイギリスに学びに行くが、イギリスの上流階級の子女の教育の状況をみて、家政学をあっさり捨て、教養を身に着ける学問を修めていく、それがリベラルアーツカレッジ東京女子大学の土台になっていたわけだ。
 
☆一方、大江スミは、近代国家社会支える家政学を目指して、留学で学び続ける。そこでは、家政学と健康科学の両方を学んだ。
 
☆これらを良妻賢母として確立してしまったために、歴史的には、その言葉の背景を理解する作業が無化されて、良妻賢母なんて古いということになった。
 
☆一瞬、安井てつの選択が正しかったように思えるのだが、そのリベラルアーツ大学もコンピュータサイエンスの前にパラダイム転換を迫られ、STEAM型リベラルアーツに変容せざるを得なくなっている。
 
☆ある意味、東京女子大のリベラルアーツは、優勝劣敗型成長戦略を支える女子教育になってしまってきたかもしれず、その内省的作業が、今自己変容を起こそうとしているのかもしれない。
 
☆一方、その成長神話的なストレスにいち早く良妻賢母教育は抑圧されてきたのだが、ここにきて、この成長神話が崩れはじめ、良妻賢母の背景においやられた女性の社会にとっての重要な能力に光が当たる時代がやってきた可能性がある。
 
☆従来の中学入試において高偏差値競争=塾歴社会に加担せざるを得ないい状況に巻き込まれてた安井てつの学校と新しい中学入試市場に表れてきた塾歴解放区で、ミヒャエル・エンデの警鐘的予言通り、モモのような才能者を輩出する大江スミの学校が、再び比較研究される時代がやって来たような気がする。
 
☆そして、このことは、中学入試において限れば、東京家政学院が、大江スミの先輩が初代校長を務めた桜蔭とどのような関係を創っていくのかというトリガークエスチョンが成立する時代になってきたことを示唆する。
 
☆塾歴社会に位置する桜蔭か塾歴解放区における東京家政学院か。大江スミは安井てつと違って、上流階級ではなく、そうでない階級の生活を留学時代に見てきた。格差社会の中で、女性がいかにサバイバルする技術と科学を学ぶのかというのがテーマだったと思う。
 
☆現代の世界の痛みは、イギリスが産業革命を起こし近代社会を形成した時点で、すでにしっかり格差矛盾として存在していたもので、その矛盾解決はまだまだ未完なのだ。
 
☆安井てつは、その痛みを一握りの人間によってトップダウンで解決しようとしたのだろうが、大江スミは、ボトムアップのパワーに可能性を見出していた。東京家政学院は、古くて新しい教育システムによって、格差なき社会を形成する人材を輩出することになるかもしれない。
 
☆2020年大学入試改革に伴って、世間は英語力と思考力が注目されているが、東京家政学院は、その両方のリソースをすでにもっているし、STEAM教育のうち特にアートは豊かで多様な活動が実践されている。
 
☆教育のバージョンアップは、今すぐにでも行えるし、良妻賢母の背景に隠されてきた21世紀が必要とする女性の多様な才能を開花するだけで、人気は取り戻せるだろう。
 
☆塾歴社会が支配する前、後閑キクノの精神を大切にしていた時代は、実は桜蔭も東京家政学院とシンクロする部分があった。
 
☆その代表的な人物は、あのアリの町のマリア北原玲子の存在である。今もその偉業は、月島のカトリック教会が記憶として残しているぐらいだ。
 
☆塾歴社会が忘却してしまった精神こそが、グローバルゴールズを達成するために世界的に必要だとされている時代だ。
 
☆塾歴社会の人間存在を忘却の彼方においやる言動を世界が知ったら私学はどう評価されるのだろうか。ミヒャエル・エンデやケインズが大切にした時間泥棒から守るべき存在の重さを、「よくわからないもの」とレッテル貼りするシンクタンクの言動を、世界標準に照らしてみたときに、世界市民はどう判断するだろうか。
 
☆今問題になっている相撲やレスリングなどの団体内で行われている抑圧構造と同じだと思うのではないか。
 
☆塾歴社会で苦しめられている人間存在のかけがえのない価値を回復する教育は、東京家政学院から再び発信されるだろう。
 
☆そして、女子高等師範学校という同じ泉から湧き出ていながら、大江スミと後閑キクノと安井てつは別々の路線を歩んだ。しかし、今、ようやくそれが統合点で出会う時代がやってきた。そのリーダーシップは、おそらく東京家政学院が行っていくのだと思う。
 
☆この3人の時代は、キリスト教の影響を受けている。その中で、東洋英和出身でもある大江スミは、新約聖書コリント人への手紙第二12章にある「私は、キリストのために、弱さ、侮辱、苦痛、迫害、困難に甘んじています。なぜなら、私が弱いときにこそ、私は強いからです」という精神を最も受け継いでいるといえる。
 
☆そして、この弱いときこそ、最強であると自覚しているリーダーこそ、ハーバード大学をはじめとする世界の大学が認めているこれからの最善最強のリーダーなのである。
 

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